ESG投資や金融イノベーションで都が表彰──三菱UFJモルガン・スタンレー証券ほか【東京金融賞】

金融サービスの課題解決や、環境や社会に配慮した投資指標の活用を推進するため、東京都が創設した「東京金融賞」の2019年度の受賞企業が発表され、ESG投資部門には三菱UFJモルガン・スタンレー証券など3者が選定(順位なし)。金融イノベーション部門は3位まで選定され、1位には保険シェアリングのスタートアップFrichが選ばれた。授賞式は2月12日に都内で開かれる。

2018年開始の「東京都金融賞」──2部門で優れた金融事業者を都が表彰

東京都金融賞とは、ESG(環境、社会、企業統治)投資の推進や、都民のニーズにこたえる金融サービスを提供する企業を表彰する制度。2017年の「国際金融都市・東京」構想に基づいて2018年に始まった。

ESG投資部門と金融イノベーション部門に分かれている。いずれの部門も優れた金融事業者を募集し、特に優秀と認めた3者を表彰するものだが、金融イノベーション部門は、東京都としてこの分野で解決すべき「テーマ」を設定し、解決策を国内外の金融事業者から募集。優れた解決策(サービス・商品)を提供した事業者(5者)を選抜、その5事業者が都内で開かれた支援プログラムに参加し、そこから3者が選ばれる仕組みだった。こちらには特典として、賞金として上位から順に1,000万円、500万円、300万円が授与されるという。

新生企業投資も選出──ESG投資部門

ESG投資とは、地球温暖化や女性の社会進出、社外取締役の積極活用など環境や社会、企業統治の課題解決に向けて取り組んでいるかどうかを指標とする投資のこと。従来は財務指標を軸にしていたが、企業価値を測る新たな方法だ。

今年表彰される3社(順位なし)は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、新生企業投資、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスだ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、環境問題を解決するために発行する債権「グリーンボンド」のマーケットで国内最大のシェア(25%以上)を誇っている。

新生企業投資は、金銭的利益だけでなく社会的リターンも狙ったインパクト投資ファンドを日本で初めて組成した貢献が認められた。またS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは温室効果ガス削減を目的とした指数を開発した。その指数を公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が環境株式指数として採用し、約1.2兆円規模で運用し始めた。

保険シェアリングのFrichが1位──金融イノベーション部門

金融イノベーション部門では、都民から金融サービスに関するニーズや課題を集めて25のテーマが設定され、80企業が応募した。

1位を獲得したのは、保険シェアリングのスタートアップFrichだ。同社は「保険のシェアリングが実現できるようなサービスがほしい」というテーマで応募。提案として、市場規模が小さく、これまで保険が提供されてこなかった領域で、SNSの友人同士が集まって保険に加入できるプラットフォームを開発、対象の犬種を限定したペットの保険サービスを、SNSのコミュニティ・グループを活用する形で提供するとした。

2位に選ばれたのは、国境を超えた通貨の交換を担うFly Money Technologies(イスラエル)。応募テーマは「電子マネーの種類が多すぎて使いづらい」。3位は個人向けの資産運用アドバイスの400Fで、テーマは「資産運用について中立的で、自分に合った商品のアドバイスがほしい」というもの。それぞれにテーマにあわせた企画・サービスを提案し、内容が評価された。

最終3者には残らなかったものの、ほかにロボアドのフィンプラネット、金融・決済領域を中心とした事業開発グループであるインフキュリオン・グループが支援プログラムに参加する5者に選ばれていた。

文:小西雄志
編集:濱田 優
写真:東京都金融賞のWebサイトより