新型コロナ、キャッシュレス……中小型・成長株に強いアナリストは株式市場をどう見るのか【いちよし経済研】

新型コロナ、キャッシュレス……中小型・成長株に強いアナリストは株式市場をどう見るのか【いちよし経済研】

2020年は、ビットコインの半減期やオリンピック、キャッシュレス還元の終了など、投資を考える上で様々なテーマがある。直近では新型コロナウイルスの感染が広まったこともあって、日本や米国などで株価が急落している。こうした状況の中、アナリストは2020年の投資環境をどう見ているのだろうか。中小型・成長株の調査に強みを持ついちよし研究所の藤田要主任研究員に聞いた。

(ふじた・かなめ)1999年に野村総合研究所に入社、システム部門で証券会社向けのシステム構築に携わった後、経営コンサルティング部門で企業再生案件などに従事。2009年にいちよし経済研究所に入社、ITサービス業界における中小型成長企業および新興市場企業の調査を担当している。

新型コロナでテレワーク関連企業にポジティブな影響も

──いちよし経済研究所の特徴を簡単に教えていただけますか? 

我々の仕事は、上場企業の業績や事業を分析して、投資判断に役立つ材料を提供することです。日系大手証券会社や外資系証券会社にもアナリストは在籍していますが、いちよし経済研究所の特徴は、日本の中小型成長企業および新興市場企業に特化した調査を行っていることです。

いちよし研究所藤田要主任研究員
藤田氏

19年12月末現在で、17名のアナリストが在籍し、定期的にフォローをしている銘柄数は約590社になります。レポートの作成企業数は年間約770社となっており、新しい銘柄の発掘に注力しています。その中で、私はBtoBのITサービス企業を中心に調査を行っています。決算短信をはじめとした決算情報を分析し、経営トップに対してインタビューを行うなどして、レポートを作成しています。

──2019年末から2020年にかけて、消費増税や新型コロナウイルスが株式市場を冷え込ませています。システム開発企業に与える影響はありますか?

企業のIT投資は活況であり、2020年もITサービス市場は堅調だとみています。足元では、ITを活用して企業のビジネスモデルを転換する「デジタルトランスフォーメーション」に関連した案件が増加しています。企業の競争力を高めるいわゆる「攻めのIT投資」であり、景況感に関係なく今後も需要は拡大すると考えています。

その中で働き方改革法の施行やオリンピック期間中の働き方への意識の高まりから、以前からテレワークを導入しようとする動きはありました。新型コロナウィルスへの対応をきっかけに、テレワークの需要は一気に拡大するのではないでしょうか。

ITを活用した場所に縛られない働き方は、投資テーマとして注目できます。子育てや介護、地方創生といった社会問題を解決する可能性も秘めているからです。

企業が働き方改革を進めていくには、社内規定の変更だけでなく、情報システムの見直しも必要です。ITサービス企業にとってはビジネスチャンスとなります。

テレワークでは社外から会社の内部情報を利用することになるため、内部統制やセキュリティの強化は欠かせません。また職場以外で仕事ができるので、労働時間の把握が困難となり、労働時間の不可視化が起こってしまうことも懸念されます。

そのような懸念を解決する企業は、恩恵を受ける可能性があります。たとえばテレワーク環境の構築や情報セキュリティ対策を支援する企業、Web会議や勤怠管理のソフトウェア企業などです。

ITサービス業界では、エンジニア不足を解消するために、人件費が安く優秀なエンジニアが多い海外でのオフショア開発が進んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で出社抑制などが続けば、足元の業績に対してネガティブな影響が出ることもありえます。

また、ITサービス企業の業績は景気に対して遅効性があります。製造業からの受注の伸び率に鈍化の兆しがみられるケースも出てきており、半年後くらいに影響が出てくる可能性があります。

キャッシュレス決済は進む。だがまだまだ改善の余地がある

──金融をITで変えていくフィンテックもあります。たとえば最近話題になるスマホ決済のメリット、デメリットについて、どう見ていますか?

利用者の目線では、財布を持ち歩かなくても、スマホさえあれば買い物やサービスを利用することができる便利さがあります。キャッシュレス決済のポイント還元制度の恩恵を受けることができますし、友達同士の送金も容易で、飲み会で割り勘するときなどに役立ちます。店舗からすれば、サービス導入時に多額な投資が不要なことや決済手数料が低いことがメリットといえるでしょう。

一方で、懸念点はアプリの立ち上げに手間がかかることです。また、実際に決済を行うときも、金額の確認を支払い者側がするか、店舗側がするかで戸惑うことがあります。スマホ決済を利用できる加盟店も分かりにくかったりします。このあたりに改善の余地はあるでしょう。

リスクとなるのはセキュリティの問題です。2019年にはセブン・ペイが不正利用を受けサービスを中止したことや2020年には店舗システムを手掛けるキャナルペイメントサービスがシステム障害を起こしたことで、一時的にPayPayなどのスマホ決済が使えなくなったことがあります。

キャッシュレス決済が進むために重要なことは、安心感ではないでしょうか。クレジットカードの情報や銀行口座の情報を登録することを考えると、サービスの運営会社がしっかりしているところが良いというわけです。

キャッシュレス化は今後も進んでいくとみています。今日、一人当たりのクレジットカード所持数は2、3枚が平均的といわれています。スマホ決済サービス企業の淘汰は進むかもしれませんが、その便利さからスマホ決済自体は普及していくと考えています。利用者それぞれが、自分の生活動線に合ったスマホ決済を選択していくのではないでしょうか。

ブロックチェーンが企業業績に影響を与えるにはまだ時間がかかる

──ブロックチェーンはどう見ていますか?

ビットコインに導入された仕組みとして話題になり、金融分野(フィンテック)で注目を集めましたが、様々な産業でブロックチェーンが使われていくとみています。

具体的には、改ざん不能な特性を利用して、食品などのトレーサビリティ(追跡可能性)や、株主総会での投票などにも応用できます。契約内容をブロックチェーンに記述して自動的に実行することのできるスマートコントラクトも有望と思います。2020年はブロックチェーンの社会実装はさらに進んでいくでしょう。

日本円などの法定通貨に連動するステーブルコインも広がっています。19年12月には、GMOインターネットが日本円連動のステーブルコイン「GYEN」を2020年上半期に提供開始することを発表しました。土台となるブロックチェーンの開発が完了したことを受け、実証実験が始まっています。2月にはブロックチェーンの普及推進を行っている業界団体であるブロックチェーン推進協会がステーブルコイン「Zen」の社会実装に向けた実験に取り組むと発表しています。

Facebookの仮想通貨「Libra(リブラ)」が世界的に警戒されている中、彼らがどのようにして成り立たせるか、注目しています。

テクノロジーのライフサイクルは、「黎明期」「期待のピーク期」「幻滅期」「回復期」「安定期」で構成されるといわれています。株式市場では、「黎明期」にある新技術の関連銘柄の株価が、「理想買い」により一気に10倍くらい上昇することもあります。

ただ、新技術に関する課題などで社会への実装に時間がかかりそうだとなると、株価は長続きしないことが多いです。その後、業績がしっかり出てくれば、「理想買い」から「現実買い」、つまり業績相場に変わっていく流れとなります。

ブロックチェーンは、今後の実証実験や啓蒙活動を経て「回復期」、「安定期」に向かうと思われます。ただ、企業の業績に貢献するまでには、時間がかかるのではないでしょうか。

2008年秋の金融危機以降、多くの企業でコスト削減を徹底する動きがみられ、情報システムについて「所有から利用へ」の流れが鮮明になったと認識しています。その時、「クラウドコンピューティング」に注目が集まりましたが、実際、クラウドコンピューティングが社会に実装され企業の業績に貢献してきたのは、この1、2年の印象です。約10年かかったといえます。

ブロックチェーンが、単に「あると便利な技術」で終わってしまわず、社会的に「ないと困る技術」になれるかどうか、今後も動向を注視したいと思います。

取材・文:小西雄志
編集・写真:濱田 優


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