金融の激変はこれから始まる──『ブロックチェーン・レボリューション』著者の未来予想

金融の激変はこれから始まる──『ブロックチェーン・レボリューション』著者の未来予想

アレックス・タプスコット(Alex Tapscott)氏はVC投資家であり『ブロックチェーン・レボリューション』の共著者、Blockchain Research Institute(BRI)の共同設立者でもある。以下、同氏の新著『Financial Services Revolution』から一部を抜粋して紹介しよう。

なお、後編として「グーグル、アマゾン、ウォルマート…デジタル経済が変えるもの──『ブロックチェーン・レボリューション』著者の未来予想・後編」も公開済みだ。

Financial Services Revolution
Financial Services Revolution

衝撃に備えよう

フェイスブック(Facebook)の暗号資産(仮想通貨)業界への参入は、テクノロジーに興味を持つ人にとっては驚きではないはずだ。結局のところ、デジタル革命は我々の暮らしのほぼすべての側面を変えた。銀行を除いて。

金融仲介業者は多かれ少なかれ、インターネット以前のテクノロジーに依存している。リブラ(Libra)は単に、古いモデルに穴を開ける最新イノベーションであり、我々のデジタルエコノミーの未来のための戦線を切り開いている。

リスクは高い。商業、経済活動、マネーの次なる時代は不明確だ。

コンピューター科学者は経済の仕組みを再構築し、ソフトウエアエンジニアは人間関係の秩序を再プログラミングして、プライバシー、言論の自由といった基本的概念や、我々の暮らしにおける巨大企業の役割についての我々の理解不足を露呈させている。

この新しい経済の担い手として、フェイスブック、グーグルなどが大手銀行の支配に挑むなか、ビットコインのような暗号資産は我々に、お金、価値、そしてこれらの概念のまわりに確立された規制の砦についての自らの理解と対峙することを迫っている。

規制の砦は元来はシステムを利用する人を守るためのものだったが、今では現状維持に使われている。これは究極的には、支配をめぐる争いだ。多くの当事者──中国などの全体主義政府、旧来の金融機関、巨大ソーシャルメディア企業、デジタル・コングロマリット、テック新興企業など──が、さらなる巨大な影響力を求めて競い合っている。

我々は、多くの業界や日々の暮らしの多くの側面において、ソフトウエアやテクノロジーが人間の活動に取って代わることをますます快く受け入れるようになっている。

金融はあらゆる業界の中で、最大かつ最も重要であり、そのため最も変わらない業界だ。旧来の銀行システム、フェイスブックのようなデジタル・コングロマリット、ビットコインなどのフリーでオープンな暗号資産プラットフォーム、そしてもちろん政府も歴史的規模の衝突へと容赦なく突き進んでいる。衝突は壊滅的なものになるだろう。衝撃に備えよう。

暗号資産とオープンファイナンス

「ソフトウエアが世界を食べ尽くしていると言われている。まもなく、トークンが世界を食べ尽くすようになるだろう」とタイラー・ウィンクルボス(Tyler Winklevoss)氏は語った。

彼は正しい。ブロックチェーンは、価値のための初めてのデジタルネイティブだ。つまり、ほぼすべての資産をプログラムできる。

『ブロックチェーン・レボリューション(Blockchain Revolution)』の最新版で、我々は読者がその違いを理解できるよう、これらの資産を分類した。

その分類とは、暗号資産(ビットコイン、ジーキャッシュ、ライトコイン)、プラットフォームトークン(イーサリアム、ATOM、EOS)、ユーティリティトークン(オーガー)、セキュリティトークン(DAO、マンチーのMUN)、天然資産トークン(二酸化炭素、水、空気)、デジタルコレクション、ステーブルコイン、そしてデジタル法定通貨(ペトロ、中国のデジタル人民元)だ。

このセクションでは、セキュリティトークンと法定通貨に裏付けられたステーブルコインという、既存の金融資産のデジタル化に焦点を当てる。これはオープンファイナンスの世界で、分散型ファイナンス(DeFi)とは異なる。

オープンファイナンスは、従来は閉鎖的で、アナログだった専用システムをブロックチェーンやデジタル資産へとオープン化していくことを意味する。オープンファイナンスは、あらゆる既存企業、規制当局、市場参加者にとって、チャンスであり、困難であることが判明するだろう。

株式を考えてみよう。

グローバルな「株式市場」は実は、各国や地域の取引所、銀行、証券会社、カストディアン、清算企業、規制当局、アセットマネージャー、ファンドマネージャー、その他の市場参加者と仲介者のゆるやかな寄せ集めだ。

注文や取引の大部分はデジタル化されているが、これらのさまざまな参加者が実際に資産の所有権を清算、決済、保管、登録するための基本的な機能は時代遅れになっている。

投資銀行JPモルガンの元マネージング・ディレクターで、デジタル・アセット(Digital Asset)の元CEOのブライス・マスターズ(Blythe Masters)氏は我々に次のように語った。

「金融インフラは数十年にわたって進化していないことを心に留めておいてほしい。フロントエンドは進化したが、バックエンドは進化していない。取引短縮に向けたテクノロジー投資競争が繰り広げられ、現在、競争優位性はナノセカンドで計測される」

彼女が語ったのは高頻度取引についてだ。

「皮肉なことに、取引後のインフラはまったく進化していない」

ブロックチェーンは、市場参加者をピアツーピアで瞬時に接続し、清算、決済を可能にすることで、市場におけるコスト、複雑性、摩擦を大幅に減少させる可能性を秘めている。

セキュリティトークンの可能性

0x(イーサリアムブロックチェーン上で資産のピアツーピア取引を可能にするオープンプロトコル)は、この分野におけるパイオニアだ。

0xで取引される資産はすべてが金融資産ではないが、一部は金融資産だ。これまでのところ(2019年9月時点)、0xは7億5000万ドル(約800億円)相当、71万3000件以上を取引している。

イーサリアム、コスモス、ポルカドット、EOSなど基盤となるプラットフォームが規模を拡大するにつれて、そうしたプラットフォームを採用したアプリケーションやユースケースの能力もまた拡大していく。

上場企業オーバーストック(Overstock)の子会社ティーゼロ(tZERO)も、この分野で大きな前進を遂げた。オーバーストックは2019年夏、同社の株主はティーゼロに上場されたデジタルトークンを配当金として受け取ると発表した。

オーバーストックの元CEOパトリック・バーン(Patrick Byrne)氏はこの動きについて、「5年前、我々はパラレルユニバースを生み出そうとした。つまり、合法かつブロックチェーンベースの資本市場だ。我々は成功した」と語った。バーン氏は、このデジタル資産のパラレルユニバースが新規参入者と既存勢力の双方に困難とチャンスを生み出すことについて楽観的だ。

ブロックチェーン・レボリューション
ブロックチェーン・レボリューション

セキュリティトークンは摩擦、コスト、複雑性を減少させるだけではない、資本市場におけるより幅広い参加も可能にするのだ。なぜなら障壁を下げ、我々が不動産からプライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルに至るまで、様々な資産のための流動性のある市場を構築することを想像させてくれるからだ。

さらなる透明性、市場の深度、そしてリクイディティは、価格、アクセス、そして市場の全体的な健全な機能を改善してくれるはずだ。

すべての資産がトークンとして機能するわけではない。しかし、いくつかの条件を満たした時にトークン化が成立する。

1. 資産に対する確立した、あるいは未開拓の需要はあるか?

2. 個人や機関投資家はその資産を買いたいが、現在は購入できないか?

3. 資産の移動可能性や流動性に高い障壁が存在するか?

4. 取引コストが高く、広がりすぎているか、あるいは他の障壁があまりに厳しいため、市場参加者はその資産クラスを完全に避けてしまっているか?

5. 資産をデジタル化するのにブロックチェーンが必要か?──つまり、資産は単に従来のシステムでは機能しないのか?

6. 業界はかなり統合されているか、あるいはかなり分裂しているか?

これらの質問に対する回答の大半がイエスの場合、その資産はセキュリティトークンになり得る。分裂した市場は、実験やイノベーションをより簡単にしてくれるはずだ。

トークン化された株式、債権、不動産はすでに存在する。トークン化されたスポーツチーム、音楽、ワイン、アート、イベントチケットなどがいずれ登場するかもしれない。

セキュリティトークンは、参入障壁を下げ、投資の選択肢を広げることで、一般の人々の富の創造へのアクセスを改善することに役立つ可能性がある。


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翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock(ニューヨークの金融街)
原文:Financial Services: The Coming Cataclysm

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