日本酒輸出をブロックチェーンで追跡──偽造品・温度管理対策、輸出規模は200億円超

日本酒の海外輸出量が拡大するにつれ、偽造品や温度管理が不十分な商品が出回るなどの問題が生じていることを受け、世界4大会計事務所EYの日本法人であるEYジャパンが、ブロックチェーンを用いた日本酒のトレーサビリティ・システムを開始する。日経アジアン・レビューが3月21日に伝えた。新型コロナウイルスの混乱が解消され安定的な商環境が整えば、香港やシンガポールなどのアジア地域で展開する見込みだという。

海外で出回る偽物対策、マーケティング用途も

報道によると、共有されるデータは、原料や仕込みなどの情報、流通経路における温度管理などの情報だ。サービスは英語、中国語、韓国語に対応するという。

消費者は瓶に付けられたQRコードを読み取ることで、それらの履歴を確認できるほか、相性のいい料理も表示される。

取り組みの背景にあるのは、偽造品や温度管理が不十分な商品が出回っているという現状だ。メリットは、ブロックチェーンを用いて日本酒を追跡することで、安全かつ品質の高い商品であることが消費者に証明できる点だ。

また日本酒の生産者も、海外での追跡情報を把握できるため、マーケティングにも使える。EYジャパンは果物市場にも適用したい考えだ。

国内出荷量は減少も輸出量は増加

農水省によれば、日本酒の国内出荷量は、ピーク時の1973(昭和48)年には170万キロリットル超だったが、近年は50万キロリットル程度にまで減少している。

しかし海外輸出量は年々成長を続け、2018年には約220億円を超えたという(日本酒造組合中央会)。うち韓国・中国・台湾・香港(地域分類は同会による)の割合は、約50%の109億円になっている。

文:小西雄志
編集:濱田 優
写真:Shutterstock