資産運用のボーナス日になるのか──5月に迫るビットコイン半減期を再考察

資産運用のボーナス日になるのか──5月に迫るビットコイン半減期を再考察

オーショー・ジャ(Osho Jha)氏は、投資家であり、データサイエンティストであり、ハイテク企業の経営者。公開市場、非公開市場の双方に投資するために、ユニークなデータの発見と分析に努めている。

ビットコインへの強気投資の主張の多くは、5月に予定されているブロック報酬の半減期が価格を上昇させるという期待に基づいている。50ビットコインから25ビットコイン、25ビットコインから現在の12.5ビットコインへという過去の半減期は、価格上昇をもたらした。

それでも、半減期は過去の経験が少ない出来事であることを考えると、参考にできるデータは限られており、期待と憶測が交錯している。

ビットコイン半減期の仕組みと、それが当初のホワイトペーパーにどのように記述され、プログラミングされたかについては優れた記事が数多く存在する。そこで、これらのコンセプトを誰もが精通していることを前提にして、半減期にまつわるストーリーを進めていこうと思う。

残念ながら多くの投資家は、3四半期連続でマイナスとなった厳しいビットコイン市場に直面し、半減期を価格上昇の触媒と指摘し、その後に起こるかもしれないある種の価格変動に非常に高い期待を寄せている。

私も確かに、半減期はビットコイン価格に良い影響を与えると信じている。だが、2017年のような放物線を描いた上昇を期待する投資家には不安を感じている。

過去の半減期とビットコイン価格
出典 : Coin Metrics

現状では、半減期にまつわる強気の主張は、ブロック報酬が半分になれば、運営を維持できるマイナーの数は減るというものだ。

マイナーはしばしば、運営資金を得るためにビットコインを売ることから、流通に回るビットコインが少なくなることで売り圧力も緩和されるはず。つまり、半減期による供給制限は価格上昇を可能にすると結論づけることができる。

私はこの主張はおおむね正しいと信じているが、ブロック報酬の減少がマイナーを運営停止に押しやり、かつビットコイン需要は減らないという仮定に依存しているとも考えている。この案はさらなる分析が必要だ。

マイナーの内情

マイニングは、得られるビットコインと固定コストとして出ていく現金のバランスを取る難しいゲーム。最大のコストは電力料金。そのコストを賄うため、マイナーはビットコインを売り、市場に一貫した売り圧力をもたらしている。

最新の次世代型マイニングマシンは、より効率的であり、電力料金にまつわる懸念の一部を緩和している。北米のマイニングマシン販売大手、ブロックウエア・ソリューションズ(BlockWare Solutions)の最近の調査によると、マイニングマシンの約62%は新世代型のマシン(ビットメインS17以降)であり、38%は旧世代型(ビットメインS9以前)となっている。

下の表(ブロックウエア・ソリューションズ提供)は、同社の社内データに基づいたマイナー状況の詳細を表している。

出典:BlockWare Solutions

私は、最近の価格下落はすでに、マイナーの運営停止などを引き起こしたと考えており、それは最近のハッシュレートの低下と、それを相殺するマイニング難易度の下方修正に反映されている。

記事執筆現在のビットコイン価格(約6200ドル)では、マイナーの19%は損失を出している。半減期によって損益分岐点は2倍になり、さらに38%のマイナーがそこに加わると考えられる。

つまり、約57%のマイナーは利益が出ないことになり、ハッシュパワーの過半数を占めることになるが、現実としては、マイナーは損益分岐点を下回っても運営可能であり、しばしばそうしている。運営を維持するために、そうしたマイナーはビットコインを売り、それがさらなる売り圧力を生む。

半減期は間違いなくマイナーを運営停止へと追い込むが、それはすぐにではなく、徐々に起こると私は考えている。価格の大幅な上昇、あるいは難易度の一貫した減少によって、マイナーが運営を続けることが可能にならない限り、損益分岐点を下回ったまま運営を続けるマイナーからのさらなる売り圧力が先行する可能性が高い。

需要の指標としての価格変動

「価格に織り込み済みなのでは?」は、短期、長期の投資家の双方から私が最もよく聞く質問だ。いかなる資産に関しても、ましてやビットコインのような新しい資産について、こうした質問に答えることはほぼ不可能であり、私はこの質問は浅薄だと感じる。

よく取り上げられているが、私は、半減期の真の影響は価格に織り込まれていないと感じている──間違いなく、本格的な長期保有者以外には。

現在の先物価格を見ると、半減期後に行使日を迎える契約が、半減期前に行使日を迎える契約と同じように取引されており、市場参加者は半減期を意識していないか、あるいは、価格に大きな影響を与えるとは考えていないことを示している。

過去2回の半減期

歴史的に、ビットコインは半減期を控えた年には大幅に上昇し、その後は放物線を描いた上昇を見せてきた。

このストーリーは、ビットコインが1万3000ドル付近の高値に達した2019年の夏には確かに説得力があったが、ビットコインは現在、前年比20%の上昇になっている。これは、S&P500と同等の利回りを目指す上場投資信託であるSPYの前年比13%の利益に比べると、依然として驚異的なものだ。

だが2020年の半減期に向かう時期の上昇は、過去2回の同時期の放物線を描いた上昇に比べると小さい。よって、今回の半減期後に、価格は上昇するものの、より限られたものになるはずだ。

こうした数字は、半減期にまつわる主張を批判するものではない。より幅広い市場の理解を獲得しつつある資産クラスの自然の進化だ。

最近の価格の動きは、米ドルへの世界的な逃避による大幅な価格下落に直面したマイナーによる売り圧力を市場が吸収できているため、心強いものになっている。

価格下落は大きく、主に短期保有者が引き起こしたが、その後の6000ドル台での安定は前向きなものであり、ビットコイン需要は依然として強いことを示した。

ステーブルコインの時価総額は過去最高となり、ビットコイン市場の外側に資本は潤沢にあるが、市場が成熟するにつれ、単一の、よく知られた出来事が、その後、価格に並外れの影響を引き起こすことはめったにない──ビットコインの半減期のようによく語られている出来事なら、なおさらだ。

成熟市場には忍耐が必要

ビットコインは当初、ベンチャー投資のように取引された。2017年でさえ、仮想通貨ブームは、ブロックチェーンはあらゆる業界に革命をもたらし、デジタル通貨の普及は近いという考え方に勢いづけられていた。

しかし、ビットコインはテクノロジーであると同時に「デジタル・コールド」という強力なお金の原理を表していることでユニークなものになっている。この強力なお金の原理は、供給が固定された資産の供給速度を遅らせつつ、マイナーにインセンティブを与える自己修正システムに集約されている。

我々は近い将来、ビットコインの3回目の半減期を振り返り、放物線のような価格上昇ではなく、世界経済が苦境にあるなか、ビットコインが真価を認められる様子を目撃すると信じている。

手早く得た利益は通常、手早く失うことになる。投資は忍耐の問題。今回の半減期は価格にプラスの影響をもたらすが、期待は慎重にすべきだ。

世界中の中央銀行が実施している現行の刺激策は、単独の出来事よりも、ビットコインにとって、より大きなポジティブな触媒となった。マクロトレンド(FRBによる金利の引き下げなど)はゆっくり起こり、伝統的な市場、ましてビットコインにおいて、こうした出来事の影響はまだ見られていない。

忍耐と控えめな期待がビットコイン市場では重要だ。結局、これら2つの原則にビットコインほど気前よく見返りを与えてきた資産はない。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Looking for a Halving Payday? Quick Wins in Investing Are Rare

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