「インフレ来たる」ビットコインには最大のチャンス、仮想通貨取引所の分析【コロナショック】

大手仮想通貨取引所のBitMexがコロナウイルスの経済と金融市場への影響評価を公開した。2019年に最終シーズンを迎えたHBOの人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」に登場するフレーズ「Winter Is Coming」(冬きたる)になぞらえ、「インフレーション来たる」と訴え、これからの大きな変化を示唆。

さらに、ウイルスの影響は経済のレジーム(体制)チェンジにつながり、新たなレジームの下では「インフレ」こそが唯一の勝者であると表現。目下の経済環境は、ボラタイルでインフレが拡大するなど1970年代のようだとした上で、このレジームチェンジとインフレは、金融市場が耐えがたいものとなるとしたが、ビットコインはその短い歴史の中で「最大のチャンス」を迎えうると指摘した。

ブラックマンデー、世界恐慌、ドットコムバブル……過去のマーケットクラッシュに並ぶコロナショック

BitMexは分析記事「Inflation Is Coming」で、2020年のコロナウイルスによるマーケットクラッシュを、2008年の国際金融危機、2000年のドットコムバブル、1997年のアジア危機、1992年のブラックウェンズデー、1991年の日本の資産バブル、1987年のブラックマンデー、1973年の石油ショック、1929年の世界恐慌に並ぶほどの出来事と分析した。

その理由・背景として、2020年3月17日にVIX(恐怖指数、ボラティリティ・インデックス)が、2008年の国際金融危機の時につけた89.53に迫る84.43をつけたことを挙げた。また(分析記事の)執筆時点において、S&P500は30%下落、ダウ工業平均は1987年のブラックマンデー以来、1日での下落幅は最大を更新したこと、アセットマネジャーたちが米ドルを確保しようと奔走したが、株からコモディティ、政府以外の債権から暗号資産まで、例外なくあらゆる資産価格が下落したこと──なども指摘した。

「今こそ財政出動の時」

さらに、中央銀行や政府が金利の引き下げなど素早い対応をしたことを紹介する一方、金融政策だけでは不十分であると主張。中央銀行のバンカーたちが「今こそ財政出動の時だ」と考えていると強調した。

また、既にこれまでに世界各国の政府が大きな赤字を抱えているが、これは中央銀行による政府証券の買い取りによって支えられていて、この買い支え(とその論拠・政策)にはいろいろな名前が付けられているとした。そこで、人々のための量的金融緩和政策、人々のための救済融資、MMT、ユニバーサルベーシックインカム、ヘリコプターマネー、金融乗り換え、グリーンニューディール、配布スキーム、そしてコロナウイルス給与補償──を挙げた。

そして、インフレがただくるだけではなくショックになると指摘。その理由としてインフレ率が30年以上にわたって低く安定していたため、今度のようなインフレは記憶になく、政治家も大衆も予測できないインフレがくるリスクを忘れていたとし、「突然ショックは起きる。経済ショックだけでなく文化的なショックもだ」と訴えた。

その上で、今のマーケットをたとえて、インフレ率が15%にも達した1970年代に向かっていると主張。マーケットは変化に不寛容になっており、政治だけでなく経済も文化も、そして金融市場もインフレでショックを受けると予測。金融市場は、これまでのレジームになれていて、中銀による“プット”’(買い支え)によって守られていたが、ここから新しいレジーム、ボラタイル(流動性の大きい)な時期は目前にあると指摘した。

ゴールドは輝きを失い、アンカーもなくインフレターゲットもない

こうしたなかで、金(ゴールド)が輝きを失っていると指摘。ビットコインについても考察。コロナウイルスショックで価格は53%下がり、多くの投資家は米ドルに殺到したがこれは不可避であるとし、このクラッシュの反動によるボラタイルな価格急騰の後でも、ビットコインの価格は輝くと強調した。

そして、見立てとして、「経済レジームが変わった中で、経済・金融市場はゆるみ、もはやこれといったアンカーもなく、インフレターゲットすらもない。ビットコインにとってはその短い歴史のなかで最大のチャンスを迎えている」と締めくくった。

文・編集:濱田 優
画像:BitMex, 2020 Home Box Office, Inc.