みずほのデジタル社債、スマホで金融と日常がつながるリアル──LINEはどう絡む

みずほのデジタル社債、スマホで金融と日常がつながるリアル──LINEはどう絡む

預金の残高、 投資している株や社債、エアラインのマイレージ、コンビニエンスストアや家電量販店のポイント……。すべての資産とポイントは、見たい時にはいつでも、スマートフォンの一画面にリストアップされる。

通勤に使う鉄道会社が、新規事業立ち上げの資金を社債発行で調達すると知れば、スマホを使って5万円分を購入する。利息だけでなく、社債にはショッピングポイントやスポーツイベントのチケットが付いてくる。スマホのウォレットがポイントを管理して、仕事終わりにカフェやスニーカーショップで使える。

小難しい金融商品でも、誰でもスマホを使って安全に購入できて、スマホ決済とポイントが必須アイテムの日常にうまく浸透していけば、デジタル社会の日本におけるお金の流れは変わる。そして、スマホの反対側では、多くの企業が調達した資金を使って事業活動を進める。

コンビニ、鉄道、エアライン、シェアエコ…

「消費者が楽しめる、金融と非金融をつなぐ世界を作りたいと考えています」 と語る、みずほフィナンシャルグループ・デジタルイノベーション部の田中秀樹次長。

こんな未来を描きながら、新たなテクノロジーで次世代の金融プラットフォームの開発を進めているのが、みずほフィナンシャルグループ・デジタルイノベーション部の田中秀樹・次長。

「コンビニ、鉄道、航空会社、スポーツ、シェアリングエコノミー、多種多様の多くの企業が参加できるオープンなプラットフォームを意識しています。消費者が楽しめる、金融と非金融をつなぐ世界を作りたいと考えています」と、田中氏は語る。

みずほが着目したのは社債。企業が資金を調達するための一手段として発行する債券で、発行体企業は投資家に利息を払い、償還日には元本を返す。マイナス金利で、中長期の資金を低いコストで調達できることから、日本企業が昨年に起債した公社債は13兆円を超え、記録的規模となった。

その社債に、今では2兆円を超えるとも言われるポイント経済圏をコネクトさせたハイブリッド社債が、みずほがその基盤の開発を進めている「デジタル社債」だ。投資家は、投資リターンである利息を受け取りながら、その社債を発行した企業のポイントを手にすることができる。

デジタル社債とスマートコントラクト

みずほは現在、デジタル社債の第一号案件の準備を進めている。

この債券が「デジタル」と呼ばれる理由は、発行・取り引き・決済などのプロセスを、改ざんが不可能と言われるブロックチェーンを使ったプラットフォームで行うことである。

証券会社が管理するウォレットを介して、イーサリアム・ブロックチェーン上でスマートコントラクト(契約の自動化)による自動取引を可能にするという。債券は投資家に紐づいているため、発行体企業はそのデータをマーケティングに活用することができる。

スマートコントラクトを活用することで、債券販売の小口化と、約定から決済までをリアルタイムに行うことが可能になる。

「社債は1本あたり平均200億円~300億円の規模で発行されています。今後数年で、まずは年間10本程度のデジタル社債が発行されることを期待しています」と田中氏。「デジタル社債の広がりに大切なのは、個人へのアクセスを増やして、デジタル社債がつくる金融と非金融が融合する世界の楽しさを、広く理解してもらうことではないでしょうか」

ファミリーマート、楽天証券、ヤマダ電機が参加した実験

(写真:Shutterstock)

みずほは今年2月、デジタル社債のシステム基盤のプロトタイプを使った実証実験を行った。実験には、みずほ情報総研でブロックチェーンを研究する技術者に加えて、みずほ・地方銀行・同業他社・異業種を含む広いメンバーで構成されるBlue Lab(ブルーラボ)、 コンビニのファミリーマート、家電のヤマダ電機、楽天証券などが参画した。

金融商品と日常のショッピングポイントが融合するこれからの世界では、実店舗の役割はさらに大きくなると、田中氏は話す。モノやサービスの購入がeコマースに傾斜する一方で、実店舗(リアル)のコンビニや量販店は、個人との強い接点を持つ。

個人との接点と言えば、国内8000万人超のユーザーをかかえるLINEがある。メッセージアプリの「LINE」を起点に、LINEは、ショッピングやゲーム、旅行、株式投資などのあらゆる機能を持つ「スーパーアプリ」にトランスフォームしようとしている。

LINEとの連携

「(LINEとの連携も)可能性を広げる選択肢になるものと思っています」(田中氏)

みずほは昨年5月、デジタルネイティブの世代をコアに置いた新たな銀行を作ろうと、LINEと共同でLINE Bank設立準備会社を設立した。デジタル社債を広める上で、みずほとLINEのさらなる連携は想像できる。

「(LINEとの連携も)可能性を広げる選択肢になるものと思っています。デジタル社債は、to-Bの側面もさることながら、to-Cを強くしていかなければなりません」と田中氏は話す。「日本には既に整備された金融インフラがあります。銀行口座を新たに開設するコストを省き、既に開設された口座を活用しながら、デジタル化を進めることは可能です」

ブロックチェーンを活用した新たな社債の発行・流通を巡っては、野村ホールディングスも野村総合研究所と共同で、その基盤の開発を進めている。金融のデジタル化においては、競合大手がそれぞれの取り組みを強化する一方、金融大手各社が依然、直面しているのは日本の家計資産のかたちだ。

国内の家計金融資産は2019年12月末時点で、1903兆円。日本のGDPの約4倍の規模だ。「貯蓄から投資へ」の波を起こそうとかれこれ十数年たつが、現金・預金の規模は1000兆円を超えた。

「スマホで完結させること、これが重要なんです。そして、動かないお金を少しでも動かして、企業活動・経済活動に使われる金融と、個人の日常が交わる仕組みを、テクノロジーを使って作り上げていきたい」

みずほは現在、デジタル社債の第一号案件の準備を進めている。実現すれば、大きな一歩を踏み出すことになる。

インタビュー・文:佐藤茂
写真:多田圭佑

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