中央銀行デジタル通貨についてボストン・コンサルが考えること

中央銀行デジタル通貨についてボストン・コンサルが考えること

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のイゴール・ミカレフ(Igor Mickhalev)氏は、ブロックチェーン技術とデジタル通貨を活用したビジネスモデルの構築を支援している。同じくカイ・ブルチャーディ(Kaj Burchardi)は、BCG/Platinionのブロックチェーン業務を主導する人物だ。

デジタル通貨は将来、国家、企業、人が価値を取引する方法を変える可能性がある。一部のデジタル通貨は、暗号資産(仮想通貨)の利点(仲介者の排除、高速化、低コストな取引)と、伝統的通貨の特性(価格の安定性、法定通貨としての機能)の双方を兼ね備えており、従来の金融システムの中核に迫っている。

デジタル通貨のリブラが当初描いたようなコンソーシアム型のいわば第1世代のデジタル通貨は、お金の移動コストの削減や、銀行口座を持たない人々にとっての利用コストの低減といった漸進的な変化をもたらす可能性があるが、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)2.0」を通じた各国での普及は、先行者が手にすることのできる巨大な価値を解き放つ可能性を秘めている。

最近発表したレポートの中で、我々はデジタル通貨に関連する注目すべき主要プロジェクトや開発作業を分析し、分類を試みた。

デジタル通貨の分類と設計上のポイント
提供:ボストン・コンサルティング・グループ

さらに、デジタル通貨の導入による社会的バリューチェーンへの影響と、国家、中央銀行、企業、個人ユーザーによる採用の潜在的効果を理解するために、我々は「トータル・ソーシャル・インパクト(Total Social Impact:TSI)」フレームワークを開発した。そしてデジタル通貨の基礎となる具体的な要素を定義し、TSIを使って分析した。

デジタル通貨のための「トータル・ソーシャル・インパクト」フレームワーク
提供:ボストン・コンサルティング・グループ

「CBDC 2.0」とは

「CBDC 2.0」は、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の進化における2段階目。ブロックチェーン技術を使い、中央銀行によってデジタルで発行された、新しく、最も影響力のある形態の通貨だ。相互運用可能で、プログラム可能なものとして設計されている。

現在、通貨システムの責任は国家と国際的合意の下にある。デジタル通貨が国家で採用されるためには、まずその国家の規制を遵守しなければならない。中央銀行はCBDCに関心を持っているものの、所有権やガバナンスの分散化をもたらし、伝統的な中央集権型のガバナンスを困難にするデジタル通貨には慎重な姿勢を示している。

しかし、ビットコインやブロックチェーンがもたらした、ほぼ間違いなく最も革新的な側面を実行し、その恩恵を享受しなければ、CBDCは失敗に終わるだろう。すなわち、分散化だ。

初期のCBDCプロジェクトは、ピアツーピア決済を可能にすることで、現行の金融システムよりも優れた代替システムを漸進的に作り出すが、ガバナンスは中央集権型のままで、流通も管理された状態を維持している。

消費者がCBDCを採用する主要な動機は、分散型ガバナンスと開かれた流通システムにあるだろう。政府と金融機関への国民の信頼は、2008年の金融危機以降、低下している。そのため、借入金利や通貨の供給量を決定する、通常の中央銀行的な意味での中心的権威を持たないデジタル通貨には検討の余地がある。

CBDCの中央集権型ガバナンスと分散型ガバナンス、およびその潜在的影響力の比較
提供:ボストン・コンサルティング・グループ

「CBDC 2.0」のメリット

中央銀行は、国の通貨に対して高いレベルの権限を行使している。一般的な消費者は、中央銀行の活動や、誰が政策決定に影響を与えているのかについて、影響力も知識も持たない。

CBDC 2.0は、国家レベル、あるいは複数の法域にわたって超国家的レベルで分散型で発行、管理される。これは、異なる法体系、通貨、財政政策を意味し、その一部は自動化され、国家を超えてコード化され、導入される必要がある。

CBDC 2.0は住宅ローン、融資、貿易金融、不動産など、特定のユースケースを目的とした他の複数のデジタル通貨の必要性に取って代わる。CBDC 2.0は、プロトコルレベルで相互運用可能でなければならない。データのやり取りや機能性は、プロトコル間で簡単に利用でき、移動可能でなければならない。

分散型で管理されるCBDC 2.0は、高速で安価なクロスボーダー決済、匿名性、個人データの保護、国際的な操作性など、一般的な消費者にさまざまなメリットをもたらす。アルゴリズムによる「発行システム」を通じて自動的に発行されるため、CBDC 2.0はハイパーインフレのリスクをほぼ間違いなく排除できる。すべての取引は、誰にでも開かれた(超)国家レベルの変更不可能な台帳に記録され、二重支払いのリスクはなく、不正取引の可能性も低くなる。

銀行は信用状況をすぐに確認できるようになる。つまり、お金をより速く供給することができるようになる。クロスボーダー決済に必要な書類は少なくなり、決済にかかる時間も短くなる。これによって、世界中でより高速な貿易が可能になり、独占企業から力を奪うことができる。そしてトレーサビリティ(追跡可能性)によって、国家はマネーロンダリング、脱税、麻薬取引などの犯罪行為を減らすことができる。

最後に重要なことだが、通貨は国家を超えたレベルで相互運用が可能となり、新興経済国は購買力の不均衡に苦しめられることが少なくなる可能性がある。

最もポジティブな社会的インパクトを持つCBDC 2.0
提供:ボストン・コンサルティング・グループ

Consensus 2020でのCBDCについての我々のワークショップで、我々はゲストに対して、分散型CBDCの利点をあげるように求めた。彼らの答えは次の3つだった。

第1に、CBDCは民主主義と権力の分配を改善し、政策決定における政治的影響力を弱めることができる。第2に、CBDCは特に新興経済国において、通貨のボラティリティを減らすことができる。そして第3に、CBDCは決済のコスト、特に国境を超える決済のコストを削減することができる。

重要なポイント

中央銀行は伝統的に中央集権型組織であり、それには十分な理由がある。中央銀行は独立性の高い組織として作られ、長期的な金融安定性を確保するために大きな権限を与えられた。

国王が通貨を発行したり変更したがった際は、通貨の信頼性を維持するために制約を課した。このアプローチは何世紀にもわたって機能し、国家指導者が通貨の価値を低下させる力を制限し、究極的には金融安定性を通じて公共の利益に貢献した。

ブロックチェーン技術が成熟するにしたがって、リーダーたちは、ガバナンスの分散化から恩恵を受けるために、どのように既存の金融機関と政策を再構築するかを決定し、CBDC 2.0の導入によってもたらされる利益を実現すべきだ。先行する者たちは、民主主義と権力の分配の改善、汚職や不正の減少、より効率的で安全な決済を通じて、(超)国家通貨の競争力が高まることによって成果を受け取ることになる。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:イングランド銀行(Wikimedia Commons)
原文:Central Bank Digital Currencies Need Decentralization

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