IBMがノルウェー産サーモンを追跡する

ノルウェーの水産物協会(Norwegian Seafood Association)は、IBMとIoT(モノのインターネット)のアテア(Atea)と共同で、同国で養殖されたサーモンの産地証明を行うための追跡システムを開発する。ブロックチェーンの活用が鍵をにぎる。

テスト運用は完了し、複数の養殖業者はIBMの「IBM Blockchain Transparent Supply」の運用を本格的に始める。この取り組みでは、食品追跡プラットフォームの「IBM Food Trust」と同じ基盤技術である「ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)」が使われている。

水産物の宝庫であるノルウェーは、2019年には約270万トンを輸出している。主な貿易国はアメリカとロシア、中国。

ノルウェー・ブランドを守る

ノルウェー・ブランドを代表するサーモンの品質保証を維持するため、同国の水産業界はブロックチェーンを活用したトレーサビリティの導入に積極的だ。ノルウェーサーモンの偽物は広く出回っていると、アテアのスタイナー・ゾンステビー(Steinar Sønsteby)CEOは話す。

今回の技術はサーモンのライフサイクルのあらゆる側面を追跡する。海中の養殖網にはカメラが設置され、水温(サーモンの成長速度を左右する)、輸送、魚の状態(冷凍か生か)までのデータを追跡していく。

アテアは養殖業者と契約を結び、IBMはブロックチェーンソリューションを提供。IBMクラウドでシステムを稼働していると、ゾンステビー氏は言う。

サーモン1トン毎に収益を上げる仕組み

アテアとIBMはそれぞれ、養殖業者から支払いを受ける。レベニューシェア(収益を分け合う方法)で、追跡するサーモンは1トン毎にコストが設定される。サービス全体に対して請求する従来のITソリューションサービスとは異なる。

ブロックチェーンにデータをアップロードするのは、養殖サーモンのクヴァロイ・アークティック(KvarøyArctic)社と水産飼料を販売するバイオマー(BioMar)社。

「ノルウェーの水産物は品質の高さで知られている。しかし、魚の由来や養殖のノウハウ、管理方法を追跡する能力はない。ブロックチェーンは1匹1匹の魚の由来を管理し、データを残す。多くの問題が解決される」とノルウェー水産物協会のロバート・エリクソン(Robert Eriksson)CEOは声明で述べた。

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:ノルウェー西部にあるサーモンの養殖場(Shutterstock)
原文:IBM Spawns Blockchain for Norwegian Salmon Fisheries