暗号資産融資サービスのコンパウンド、ドル連動ステーブルコインの預かり残高が急増

アメリカのDeFi(分散型金融)市場の成長が注目される中、暗号資産融資サービスのコンパウンド(Compound)が、米ドルに連動するステーブルコインの預かり残高を拡大している。

同社のウェブサイトによると、コンバウンドが保有するDAIの預かり資産残高は、同通貨の発行額をはるかに上回っているという。発行されている全てのDAIがコンパウンドによって保有されていると仮定しても、理解しがたいことだ。

コンパウンドが保有する資金量は、ガバナンストークン「COMP」の新しい配布ルールが有効になるなか、劇的に変化している。

記事執筆時点、コンパウンドのウェブサイトでは、DAIの供給量は4億100万DAI。一方、データサイトDAI Statsによると、DAIの総供給量は1億4800万DAI。コンパウンドのDAI供給量は7月1日の4200万ドルから急上昇している。

この不可解ともいえる状況に対する合理的な説明は、コンパウンドがDAIの預け入れ額を、たとえDAIがコンパウンドから貸し出され、再度預け入れられたものでも、総供給量としてカウントしていることだろう。

例えば、コンパウンドには100DAIが預け入れらていて、あるユーザーが200USDC(USDコイン=米ドルに連動するステーブルコイン)を入金したとする。ユーザーは100DAIをすべて借り、再度、コンパウンドに預け入れることができる。

エレクトリックキャピタル(Electric Capital)のケン・ディーター(Ken Deeter)氏はCoinDeskにメールで以下のように述べた。

「銀行がドルでも同じことをしていることに注意してほしい。私が100ドルを預け、90ドルが貸し出された場合、誰かがその90ドルを再び銀行に預けることができる。銀行には最初は100ドルしかなかったのに、今では190ドルある」

2日21:00頃(協定世界時)、DeFiマネジメントツールのインスタダップ(Instadapp)は、ユーザーに利回りを最大化するためにUSDT(テザー)からDAIに資金を移動する時だというメッセージを送った。

シーズンが終わりを迎えている。COMPの収益を最大化するために作物を回転させる時だ。


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ルール変更

ルール変更は2日に有効になり、新しいCOMPを手に入れようとする人に対するインセンティブは微調整された。もはやリスクの高い暗号資産を使って、高い利回りを得るためのインセンティブはなくなった。

そのなかでDAIは現状、コンパウンドが取り扱うトークンの中では最も高い7%の利回りだ。DAIはボラティリティが低いため、イールドファーミング(yield farming)には最も有利な条件が揃っている。

イールドファーミング:保有する暗号資産をDeFiサービスに投資してリターンを得ること。一般的な市場よりも高いリターンが期待できるが、リスクもある。

これはまさに今週はじめにMakerDAOコミュニティが懸念したことだった。MakerDAOリスクチームのサイラス・ユネッシ(Cyrus Younessi)氏はこう述べている。

「かつてないほどのDAIの需要が生まれる可能性がある。DAIの供給の多くがCOMPでのイールドファーミングのために預け入れられ、供給に影響が出る恐れもある」

フォーラムユーザーの「Maker Man」はMakerDAOのチャットに以下の書き込んだ。

「今回、COMPで起こっていることは、また繰り返されることを忘れてはならない。必ずしもDAIの流動性を損なっているわけではないが、これが継続すれば、DAIを吸い上げてしまうことになるだろう」

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Compoundのウェブサイト
原文:There Are More DAI on Compound Now Than There Are DAI in the World