YouTuberが語るキューバのビットコイン事情

キューバでインフルエンサーとして活動することは難しいが、YouTuberのエリック・ガルシア・クルス(Erich García Cruz)は大活躍しているようだ。

「(アメリカの)禁輸措置のため、僕らはVISAやマスターカードを使うことができない。YouTubeを通じてマネタイズするしかない」とエリックは話す。

海外の口座にあるドル建ての収入を、家賃や食料品を買うお金に変える時、ビットコインはエリックにとって重要なツールだという。

ボーダレスマネーとしてビットコインを使っている世界中のフリーランサーは、プログラマーやエンジニアが多いが、エリックはビットコインを使うコンテンツクリエーターだ。そして、エリックのように生計を立てる人は徐々に増えつつある。

エリックは2019年11月にテクノロジークをテーマにしたYouTubeチャンネルをマネタイズした。友人の話に触発されて2020年7月頃からビットコインを使い始めた。

キューバでは(世界中どこでもそうだが)、外出して仕事をすることが難しくなっている。一方、キューバのテックコミュニティでは、ビットコインを学ぼうとする人が増えているとエリックは言う。

「数千人のキューバ人がビットリフィル(Bitrefill)で暗号資産(仮想通貨)が使えるプリペイドカードを購入し、デジタルサービスを消費している。他に良い方法はないから」

キューバのビットコイン事情

ビットコインを使う人がキューバにどれ程いるかはわからない。ブラジル在住のキューバ人、クラウディア・ロドリゲス(Claudia Rodriguez)は、自身が開設した取引所が2019年11月までに約7000人のキューバ人にアカウントを提供したと話した。

今年8月時点で、キューバの中央銀行は規制を明確にしていない。結果、クラウディアは取引所の運営は停止している。

クラウディアは「コロナウイルスによる経済危機とキューバの新規制で、暗号資産は効率的な解決策になる可能性がある」とした上で、「現時点でコミュニティをサポートし続けることができないことは残念です」と述べた。

エリックは、人口約1130万人のキューバには今、約5万人のビットコインユーザーがいると考えている。

彼はアメリカから制裁を受けた多くのキューバ人と同じように、ビットコインの入手に取引所は使わない。代わりに親戚の助けを借りて、海外でお金を入手している。親戚は何らかの方法でエリックにビットコインを送っているのだろう。

「稼いだお金は非公式市場で交換し、そのあとで国営、または個人経営の店で(商品を)買う。キューバ人は(暗号資産と法定通貨の両方の)取引でお金を稼いでいる」とエリックは話す。

インフルエンサーエコノミー

エリック自身の生活でもビットコインの利用ケースは増えている。今では収入の3分の1を占めるまでになった。

新たに手に入れた暗号資産を管理するための製品やサービスを探すうちに、YouTubeチャンネルでスペイン語の暗号資産コンテンツを収益化するという機会を発見した。

「こうした(暗号資産)プラットフォームのほとんどが、無知につけこんだマルチ商法や詐欺に過ぎないことに気づいた。だからこそ、(僕の)『Bachecubano』チャンネルでこういった問題を取り上げて、正しい使い方を説明しようと思った」

現在、チャンネル登録者数は3万人を超えた。エリックは、ビットコインを日々の仕事のツールとして使うラテンアメリカのインフルエンサーの一人だ。

給与・報酬支払いサービスの「Bitwage」で事業開発担当バイスプレジデントを務めるファビアーノ・ディアスは、数名のラテンアメリカのYouTuberがビットコインを国際的な決済ツールとして使っていると話す。

「少数ではあるが、規模が大きいYouTuberにもサービスを提供しています。なかには月2万ドル(約210万円)を稼ぐ人もいます」とファビアーノは言う。

Bitwageは今年7月に200万ドル相当の取引を支援し、なかにはP2P取引所のPaxfulのような企業との取引もサポートした。その多くがビットコインを使った取引だ。

エリックは、キューバの暗号資産は2020年を通して「成長し、力強くなった」と話した。(敬称略)

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:キューバのYouTuber、エリック・ガルシア・クルス。チャンネル登録者数は約3万人(Erich García Cruz)
原文:Bitcoin in Cuba: A Local YouTube Influencer Explains How It Works