“イーサリアム・キラー”になることが目的ではない【バイナンスCEOインタビュー】

“イーサリアム・キラー”になることが目的ではない【バイナンスCEOインタビュー】

バイナンス(Binance)の「CZ」ことチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)CEOは、世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所としてのポジションを維持しながら、急成長するDeFi(分散型金融)に進出する矛盾を認識している。

DeFi進出に向けた新たな取り組みであるバイナンス・スマート・チェーンは、イーサリアムブロックチェーンの特徴の一部を複製しようとするものだ。イーサリアムブロックチェーンは、理論的にはいつの日か、従来のレンディング(貸付)企業や、ウォール街のトレーディング企業を脅かすとも言われる分散型アプリケーションの開発者たちに最適な環境を持っている。

ユニスワップ(Uniswap)、カーブ(Curve)、バランサー(Balancer)、スシスワップ(SushiSwap)のような新興のDeFiプロジェクトが成長し、取引高に占める割合が大きくなるなか、バイナンスもライバルのオーケーエックス(OKEx)、フォビ(Huobi)、コインベース(Coinbase)と同じように、デジタル資産市場での中心的役割を維持しようとしている。

バイナンスのビジネスモデルに変化

ジャオCEOは、DeFiの預かり金額が今年、16倍の110億ドル(約1兆1600億円)まで急増するなか、バイナンスが重要な存在であり続けるためにはビジネスモデルを変える必要があるかもしれないと述べた。

「我々のミッションは、CeFi(中央集権型)取引所を作ることではない。CeFiは今、我々の成長を支える大きな事業の1つ。だが長期的には分散化を進めたいと考えている」

バイナンス・スマート・チェーンの設計において、同社はイーサリアムと戦いつつも自社ブランドを守るために、分散化の要素をいくらか犠牲にせざるを得なかった。

バイナンス・スマート・チェーンは、バイナンス・コイン(BNB)保有者によって選ばれた21のノード・オペレーターによって管理されている。とはいえ、同社はBNBコインの大口保有者であるため、プロジェクトの方向性に大きな影響力を維持している。

「イーサリアム・キラー」ではない

「さらなる分散化とスピードの間にはトレードオフがある。そこで、コミュニティが運営する21のノードは、おそらくそれで十分だろうと考えた」

バイナンス・スマート・チェーンの目標は「イーサリアム・キラー」になることではなく、高騰するイーサリアムの取引手数料に不満を持つユーザーや開発者に代替案を提供することと、ジャオCEOは述べる。

「分散化が本当に好きな人たちがいる。そういった人たちはおそらく、イーサリアムにこだわるだろう」

DeFiには「なんでもあり」のカルチャーがあり、サツマイモ(Yam)からスシスワップ(SushiSwap)まで、馬鹿げた名前のプロジェクトがあたかも一晩で大人気となり、すぐに下火になっている。だがバイナンスは、DeFiプロジェクトで好き放題できるわけではない。評判上の問題があり、守るべきブランドがある。

ベーカリースワップの失敗

バイナンス・スマート・チェーンが9月はじめにスタートした後、匿名の開発者たちが同チェーンを使って「ベーカリースワップ(BakerySwap)」を作った。ユニスワップと同様の自動マーケット・メーカー(AMM)と呼ばれる分散型トレーディング・ネットワークの一種だ。

ジャオCEOは「ベーカリースワップを紹介する」とツイートし、自分のメッセージは「推奨ではなく、スーパー・ハイリスク」だが、同プロジェクトは「かなり話題になっている」と述べた。

削除されたジャオCEOのツイート
出典:Google cache

ベーカリースワップはスタートから1時間で崩壊し、ジャオCEOはツイートを削除した。

「イーサリアムで失敗に終わったプロジェクトはおそらくもっと多い。だが誰も(イーサリアムの生みの親の)ビィタリックに文句は言わない。人々が『バイナンス・スマート・チェーン上のプロジェクトはバイナンスが運用しているわけではない』と認識するには、単に時間がかかるということだろう」

DeFiは中国、タイ、シンガポールで人気

ジャオCEOは、DeFiは中国、タイ、シンガポールなどのアジア市場で大きな人気を集めると見ている。

「我々はさまざまな実験的取り組みを行う。なかには定着するものもあるだろう。なにかが定着すれば、我々は全力で自分たちのイノベーションを押し進めたい」

ジャオCEOは、仮に分散化がデジタル資産市場における支配的なビジネスモデルとして勝ち残ったとしても、バイナンスは保有するBNBトークンから利益を得ることができると語った。インタビューの中でジャオCEOは、同社はその重点を分散型アプリケーションの開発にシフトすることによっても利益を上げることができると述べた。

「ビジネスモデルについてはまったく心配していない。私は常に、サービスを利用するユーザーがいるかどうかを何よりも心配している。ビジネスモデルには常に複数の選択肢があり、ポイントは有用なものを開発することだ」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:バイナンスのチャンポン・ジャオCEO(Zoom/CoinDesk)
原文:Binance CEO Says He Fully Expects DeFi to Cannibalize His Crypto Exchange

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