し烈なグローバル競争──ビットコインマイニングの未来を考える

記事の要点

■ビットコインマイニングの収益性は今年、最低水準となっている。

■ハッシュレートは上昇傾向にある。要因の1つは、マイニング事業者が事業拡大に向けて、新しいハードウエア購入のための資金を調達していることにある。

■ビットコインのハッシュレートは、中国の季節的要因(雨季の終わり)などにより低下。マイナーの利益改善につながった。マイニング業界では、ハッシュレードの低下は一時的との見方が聞かれる。


低下するビットコインマイニングの収益

ビットコインマイニングの利益は2020年、大幅に減少している。

1年のほとんどの期間、その収益性はきわめて低い水準となった。これは、ビットコインのマイニング(採掘)に使われる計算能力を示す指標であるハッシュレートが、過去最高を更新し続けているためだ。

北米のビットコインマイニング企業、ルクソール(Luxor)のハッシュプライス・インデックスによると、マイナーは1テラハッシュあたり0.096ドル(約10円)を生み出している。最近の価格上昇の前は、さらに低い0.08ドル、約8円だった。

3年前のこの時期には、マイナーは約1.40ドル(約146円)の利益を期待できた。2019年10月の収益は、2017年の市場の熱狂時と比べれば数桁少なかったが、それでも現在の2倍の0.16ドル(約17円)だった。

2019年末、マイナーは1秒あたり約90エクサハッシュ(EH)を生成していた。現在、マイナーは約124EH/sを生成しているが、10月半ばには過去最高となる157EH/sとなっていた。

ビットコインマイニングは、資源の消耗戦だ。ビットコインのハッシュレートが上昇している年は利益が少なくなる。新しいマイニング機器をめぐる資金調達がその大きな要因かもしれない。

大規模なマイニング事業者がローンを借り、最新ハードウエアを大量発注することは、ネットワークに新しいハッシュレートを溢れさせることにつながる。ハッシュレートの上昇はデジタル・ゴールドラッシュのこれまでにない競争を意味する。分け前は少なくなり、小規模のマイナーは競争についていけなくなる。

ハッシュレートと収益は反比例

ルクソール・マイニングのイーサン・ベラ(Ethan Vera)氏は、マイナーの収益の低さは、ハッシュレートの上昇、比較的停滞気味のビットコイン価格などが直接的な原因だとCoinDeskに語った。

ルクソールのインデックスによると、ビットコインの7日平均ハッシュレートは当記事執筆時点で1秒あたり124エクサハッシュとなっており、ヴェラ氏はその多くは「ビットメイン(Bitmain)S19」と「ワッツマイナー(Whatsminer)M30」が大量に市場に届けられたためと説明する。

もちろん、ハッシュレートが上昇している時にマイナーの収益が下落することは珍しいことではない。2020年、ハッシュレートが30%近くも上昇していることは、業界への投資が加速している結果だ。この成長のほとんどは、マイナーがローンを借りて最新マイニング機器を購入することによるものだ。

マイニング機器への融資は、ブロックフィルズ(Blockfills)、アルクトス(Arctos)、ブロックファイ(BlockFi)、SBI、DCG、ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)といった大手企業が手がけ、成長を続けている。競争の激化は利子の低下につながり、一部のマイナーは10%未満の利子でローンを借りることができるとベラ氏は述べた。わずか1年ほど前には、一般的な利子は20%だった。

「多くの北米企業がハードウエアの大規模な調達でニュースに取り上げられている。特にライオット・ブロックチェーン(RIOT Blockchain)とビットファームズ(Bitfarms)だ。Foundryも注目を集め、ビットコインマイナーにさまざまな融資を提供している」とマイニングメディア、HASHR8のトーマス・ヘラー(Thomas Heller)氏は述べる。

最近では、マラソン・パテント・グループ(Marathon Patent Group)が1万台のアントマイナーS19を購入、約1.1エクサハッシュが同社の事業に追加されることになる。同社がビットメインからマイニング機器を大量購入するのは今年に入って2度目。8月には2300万ドル(約24億円)で、1万500台のマイニング機器を購入した。

大手マイナーの損益はマイナス

大気中に放出される天然ガスを動力源とするマイニング装置を石油掘削業者に提供しているアップストリーム・データ(Upstream Data)のスティーブン・バーバー(Stephen Barbour)氏は、この状況はビットコインマイニングの短期的な健全性にとっては有害と考えている。つまり、大手企業は金銭的な余裕があり、収益性に対して必ずしも最適化されていないとバーバー氏は言う。

「大手企業は古いマイニング施設を借りて、赤字で運営し、それから資本を増強する」。つまり、大手企業は資金が必要な時には新しいローンを借りたり、投資家を頼りにできるというわけだ。

そうした企業の1つ、ライオット・ブロックチェーンを見ると、バーバー氏が指摘していることがわかる。同社は今年、2021年までにハッシュレートを4倍にするという野心的な取り組みを進め、数千台のマイニング機器を購入している。

SEC(証券取引委員会)への申請書類によると、2020年6月時点で、上場企業である同社は1500万ドル(約16億円)近くの営業損失を抱えている。ライオットは2019年上半期も同様の損失を計上した。マラソンも2020年上半期に320万ドル(約3億3000万円)の損失を出している。

同じく上場しているマイニング企業、ノーザンAG(Northern AG)は、2019年は870万ドル(約9億1000万円)の損失、2018年は560万ドル(約5億8000万円)の損失だった。

利益を上げている上場マイナー企業のHut 8でさえ、2019年はかろうじて利益を出したに過ぎない。収益は8300万ドル(約87億円)、利益はわずか210万ドル(約2億2000万円)だった。

利益を度外視して、これらのマイナーは将来の利益に望みを託し、拡大を続けている。だが、こうした動きそのものがビットコインのハッシュレートを急上昇させているとバーバー氏は述べた。

「こうした大手企業は巨額のローンを借り、実質的に赤字経営を行っており、それがハッシュレートを支えている」

個人マイナーへの影響

大手マイニング事業者が利益を無視して拡大することでビットコインのハッシュレートは上昇し、小規模マイナーは激化した競争についていくことに苦戦している。

「小規模マイナーにとって、ホスティングやハードウエア購入で競争することはますます難しくなってきている。大手マイナーは大量発注で機器を安価に購入できる」とHASHR8のヘラー氏は述べた。

一方、ベラ氏は「中国にはまだ大きな個人マイナー市場があり、四川省では雨季に0.04ドル(約4円)以下の電力を利用できる。だが中国以外では、個人によるマイニングは大きく衰退した」と述べた。

中国のマイナーに安価な電力を提供した雨季は終わり、それに伴って、ビットコインのハッシュレートは12%減少し、124エクサハッシュとなった。ヘラー氏は、毎年発生するこの減少は「一時的なものに過ぎず」、古いマイニング機器は、南米、カザフスタン、ロシア、イランなどに移されていると語った。

こうした古い機器を買うマイナーは利益を気にしておらず、「例えば、資本規制や制裁回避など、他の理由がある」とベラ氏は述べた。

利益を求めるマイナーにとって、ビットコイン価格の上昇はある程度の助けになるだろう。さらに上昇すれば、マイナーの利益は拡大する。

しかし、価格は解決策の一部にしかならないかもしれない。つまり、大手との競争力の違いに対処するには、ハッシュレートの分配を変える新しい市場ツールも必要になるだろう。少なくとも、機器をホスティングするマイニング施設と個人マイナーをマッチングする「HASHUR8」を運営するコンパス(Compass)は、そうしたアイデアから生まれた。

コンパスは、個人マイナーがマイニング施設を見つけることをより簡単にすることで、マイニングへの参入障壁を下げ、個人マイナーが最も経済的な施設を見つけることを(願わくば)実現しようとしている。

ビットコインマイニング市場の課題

コンパスのようなサービスは、小規模マイナーがマイニングに参加する助けになるかもしれない。あるいは、問題は市場に任せておけば自然に解決するのかもしれない。

「長期的には、こうした多くの大手事業者は失敗していくだろう」とバーバー氏は話す。

上昇するハッシュレートは常に「マイナーにとっては厄介なもの」とハーバー氏は述べる。そして「大手マイナーのようなスケールメリットを持たない」ことを考えると、小規模マイナーにとっては、とりわけ厳しい現実になるだろうと同氏は付け加えた。

大規模マイナーも楽観的というわけにはいかない。結局のところ、多くのマイニング機器を抱えることは、運営コストが増えることであり、マイニング機器の融資返済のための巨額の負債もある。

「融資を受けている事業者はすべて、業界にとって私が『発見段階』と呼ぶものの一部だ。短期的にはさらに増えるが、長期的には苦戦し、砕けてバラバラになっていくだろう」(バーバー氏)

バーバー氏は「自己資金でリスクを背負っている」自分のような小規模マイナーとは違って、大手マイナーは他人の資金を使って設立されていると続けた。そのことが利益を無視した運営につながるわけではないが、小規模マイナーよりも個人が背負っているものは小さい。

だが、ベラ氏は大手マイナーのすべてが同じではなく、その成功の可能性は「金利と借りているコストに左右される」と指摘する。さらに、約10%の金利はおそらく一部のマイナーにとっては好ましいものだが、それより高い金利での融資は持続不可能なものになる恐れがあるという。

「ゼロに向けた競争」

だが、利益を上げていない企業については、そもそもなぜ運営しているのかという疑問がある。バーバー氏はそうした企業は本質的に「(価格上昇を期待して)投機している」と述べる。つまり、強気市場の先頭に立つために最新ハードウエアを発注し、強気市場がすぐに訪れることに賭けている。

だがそれでも、結局は根比べの消耗戦になってくるではないだろうかと、バーバー氏は言う。また、価格は長期的にはそれほど重要ではないかもしれない。計算能力は指数関数的に上昇するというムーアの法則によると、マイニング機器は効率の最大化に向けて性能向上を続けるだろう。

最終的には、最新機器は古い機器と比べて、それほど効率的ではなくなり、大量発注できるマイナーの優位性はなくなるとバーバー氏は述べる。マイナーが安価な、無料に近い電力を求め続けるなか、巨大マイナーは最終的には経済的に締め出されるとバーバー氏は予測する。資本の利用を正当化するメリットがなくなるためだ。

「単にビットコインを購入する方が良くなるだろう。(中略)安価な電力を生み出すものがある限り、収益性は下がり続けることになる。ゼロに向けた競争だ」とバーバー氏は語った。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:‘A Race Toward Zero’: With Hashrate in the Clouds, Bitcoin Mining Is Less Profitable Than Ever