開発者を最も惹きつけたのはビットコインではなくイーサリアム:2020年VCレポート

暗号資産(仮想通貨)業界で開発者の数が再び増加しているという。同分野を投資ターゲットに置くベンチャーキャピタルのエレクトリック・キャピタル(Electric Capital)がレポートにまとめた。

プログラマーにとっての魅力という点で、イーサリアムは勝者であり続けている。ひと月に300人以上の開発者がイーサリアムのコミュニティに参加しており、イーサリアムは「暗号資産・冬の時代」と呼ばれた時期を乗り越え、成長を続けていると、エレクトリック・キャピタルのパートナーでレポートを執筆したマリア・シェン(Maria Shen)氏は述べる。

レポートは、複数のブロックチェーンのエコシステムを調査した内容がまとめられた。ライトニング・ネットワーク(Lightning Network)やウォレットの開発者も、ビットコイン開発者としてカウントされ、イーサリアムも同様だ。

業界にとってグッドニュース

エコシステムという点では、イーサリアムは突出している。「ビットコインに次ぐ暗号資産」との表現には語弊があると思えるほどだ。2020年第3四半期、月平均で約2300人の開発者がイーサリアム関連の開発に参加した。一方、開発者数が2位のビットコインは400人弱だった。

とはいえ、業界にとってグッドニュースであることは明らかだ。開発者の数は、よりパワフルなプロジェクト全体で増加している。

新たな暗号資産開発者の数
出典 : Electric Capital Developer Report 2020

エレクトリック・キャピタルのデータはすべて、1月から10月の間にGitHubやGitLabなどのサイトで一般公開されたプログラミング・ドキュメントに基づいている。ドキュメントからは、誰が報酬を受け取るスタッフで、誰がボランティアかは分からない。同レポートはその詳細を分析している。貢献度合いによって貢献者を分割した。

「今年、月ごとの暗号資産開発者の数は、15%増加した。ビットコイン・エコシステムは3年前よりも70%多い開発者を抱えている」とシェン氏はレポートに記した。

トップ200とそれ以外

レポートは、時価総額トップ200の暗号資産プロジェクトと、それ以外を区別している。開発者の減少の大半は小規模なプロジェクトで起き、他での増加の大部分を相殺したと指摘。エレクトリック・キャピタルはこれを、質への逃避と呼んだ。

イーサリアム、ビットコイン、ポルカドット(Polkadot)、テゾス(Tezos)、カルダノ(Cardano)、イオス(EOS)は大規模ネットワークであり、それぞれ月平均100人以上の開発者が活動していた。2020年第3四半期を2019年と比べると、これらの中ではイオスのみが開発者の数を減らした。

トップ200の暗号資産とそれ以外の区別は、幅が広すぎると考える人も多いだろう。今はきわめて小規模なネットワークだが、まもなく頭角を現すプロジェクトが存在する可能性はあるとシェン氏は述べる。トップ200の下位に長く存在するプロジェクトはそうした可能性は小さいだろうが、皆を驚かすような新プロジェクトが存在する可能性もある。それが同VCが範囲を幅広く置く理由だ。

DeFiブーム

最も目覚ましい成長分野はDeFi(分散型金融)であり、2020年の大きな話題となった。

エレクトリック・キャピタルはその理由をいくつかあげている。開発環境がこれまでになく優れており、開発に利用できる実証済みのプログラムが豊富に存在することが、理由の一つだという。

今は開発者がスマートコントラクトを実装し、きわめて短期間に膨大な資金を集めることができる時代だとエレクトリック・キャピタルの共同創業者、カーティス・スペンサー(Curtis Spencer)氏は話す。

潤沢な資金、容易なスタート

暗号資産分野には資金が潤沢にあり、開発者が新しい企業を立ち上げることはそれほど難しいことではない。

「助成金のプロ化が起きている」とスペンサー氏は言う。つまり、資金を潤沢に持った大規模プロジェクトは、ユーザーを引きつけるアプリケーションのアイデアを持つ有望な開発者のサポートに意欲的ということだ。従って、その企業を成長させることはより簡単になった。

預かり資金で今や最大級のDeFiプラットフォームのユニスワップ(Uniswap)は、助成金でスタートしたことは指摘しておくべきことだろう。

DeFiの成長はまた、部分的にはフィンテック業界では実現できないことに不満を思っていた開発者の存在も起因しているのだろうと、エレクトリック・キャピタルのパートナー、ケン・ディーター(Ken Deeter)氏は話す。

「DeFiは興味深い分野。(中略)開発者は伝統的金融システムでは実現困難なことをDeFiで実験できるのだから」

エレクトリック・キャピタルは昨年のレポートで、コスモス(Cosmos)における開発がそうであったように、テストネットでは常に開発者のアクティビティが増加すると述べた。イーサリアムの競合を目指すスマートコントラクトプラットフォームのNEARがその代表例だろう。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:エレクトリック・キャピタルの共同創業者、アビチャル・ガーグ氏(CoinDesk archives)
原文:Ethereum Far Outpaces Bitcoin in Developer Activity in 2020: Electric Capital Report