歴史の転換期に賭ける大物投資家にとってのビットコイン

歴史の転換期に賭ける大物投資家にとってのビットコイン

1980年から2000年までの20年間、スタンリー・ドラッケンミラー(Stanley Druckenmiller)、ポール・チューダー・ジョーンズ(Paul Tudor Jones)、ジョージ・ソロス(George Soros)は、“悪名高き”投機家と呼ばれた。

ドラッケンミラーは「ベルリンの壁」が崩壊した時、ドイツマルクに20億ドル(約2070億円)を投資したことで知られている。ソロスとドラッケンミラーは、1992年にイギリスポンドが変動相場制に移行した時、イギリスポンドの下落に大きく賭け、数十億ドルの利益をあげた。

ジョーンズは1987年のブラックマンデーから利益を得た。

2020年、歴史の転換期に大きく賭ける3人のうち、ドラッケンミラーとジョーンズがビットコインに資金を投下した。

彼らがビットコインへの投資を始めるのに、なぜこれほどの時間がかかったのだろう。ビットコインほど純粋な「投資マシン」はほかにない。ビットコインは、ドラッケンミラーやジョーンズのような投機家が、多額のお金をすばやく手にできるよう(ときには失うために)作られた。

市場の歴史の中で狂乱した1日となった1987年のブラックマンデーを振り返れば、3人の大物投資家の思考の一端を知ることができる。33年後の2020年、彼らがついにビットコインに目を向けた理由についてのヒントも教えてくれるだろう。

人生でエキサイティングな瞬間

1986年、当時33歳でヘッジファンドのマネージャーを務めていたジョーンズは、投資の判断材料として1920年代の市場の動きを参考にした。1980年代と1920年の市場を比較する「アナログモデル」を作った。

ジョーンズは、自身についてのドキュメンタリー『Trader』の中で、このアナログモデルについて語っている。

ジョーンズのアナログモデルは、1980年代の市場が1929年のように、ある時点で崩壊することを示していた。そこで、ジョーンズは、1987年10月19日の「ブラックマンデー」の前に、株式市場を大幅にショートした(つまり、下落から利益を出せるようなポジションを取っていた)。

ジョーンズはブラックマンデーの1週間を「人生で最もエキサイティングな時」と形容している。

ドラッケンミラーも1987年のブラックマンデーについてのエピソードを持っている。ブラックマンデー前の金曜日の午後、ドラッケンミラーはソロスのオフィスに向かって歩いていた。

当時34歳で、自らのヘッジファンドを運営していたドラッケンミラーは、株式市場に大きく投資していた。ソロス氏は偶然、ジョーンズのアナログモデルのコピーを取り出した。

ドラッケンミラーは、ジョーンズが示したグラフを目にした日のことをこう述べている。

「その夜、家に帰って胃が痛くなった。自分が失敗したことと、市場がまさに暴落することを認識した」

月曜日に市場が開くと、ドラッケンミラーは金曜日の取引終了時より200ポイント低い価格で全ポジションを売り、ショートポジションを取った。その日、ダウ平均株価は最終的に22.6%にあたる508ポイントも暴落した。1日の下げ幅としては過去最大だった。

ソロスもブラックマンデーで損失を出した。

「私も皆と同じようにひどい目にあった。下落は日本から始まるだろうと確信していた。高くつく大失敗だった」

資産の1%をビットコインに

時は過ぎて2020年、ドラッケンミラーとジョーンズの二人は再び投資アイデアをやりとりしているのではないかと思うほどだ。

ジョーンズは5月、「資産の1%超はビットコイン。もしかしたら2%近いかもしれない。今はそれぐらいになっているだろう」とCNBCで語った。10月には「あの時よりも、さらにビットコインが好きだ」と語った。

ドラッケンミラーは11月、「ごくわずかの」ビットコインを保有していることを認めた。そして、ビットコインは「ミレニアル世代にも、米西海岸のIT長者にとっても、価値の保存手段として多くの魅力がある。知ってのとおり、IT長者は多くのビットコインを保有している」と語った。

ソロスは、ビットコインの保有については口を閉ざしている。

一部の人は、ドラッケンミラーやジョーンズのような伝説的な投機家が、歴史の浅い投資商品を購入していることに驚いている。だが私は、彼らがビットコイン投資を始めるまでに、これほど時間がかかったことに衝撃を受けている。

経済学者ケインズの美人投票

ソロス、ドラッケンミラー、ジョーンズのような人物は投資家ではない。投資家は、株式が割安か否かを見極めるために、企業の将来のキャッシュフローを評価する。

一方、投機家は、企業の実情やファンダメンタルズをさほど気にせず、多くの人々にどう思われているかに関心を持っている。他人の行動を先に見極めることができれば、先に買う(または売る)ことができ、その後、狙いどおりに、より有利な価格で売り払うことができる。

1987年のジョーンズの戦略は、投機の絶好の例だ。アナログモデルを使って、市場の心理を見極め、他人のパニックから利益を得るポジションを取った。

有名な経済学者のジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)はかつて、投機を「美人投票」にたとえた。投機は、優勝者に投票した人が賞品をもらえる美人投票のようなもので、投票者は、自分が最も美しいと思う人ではなく、他の投票者が最も美しいと考える人を選ばなければならない。

「平均的な意見を持つ人たちが、平均的な意見だろうと考えることを予測することに知性を捧げる」深く絡み合った心理ゲームが生まれるとケインズは書いている。

「そして、第4段階、第5段階、さらに高い段階で参加する人たちもいる」

ジョーンズが1987年に行ったのは、この高い段階でのゲームだ。そして2020年、ジョーンズはついに、地球上で最も純粋な投機商品を見つけた。

ファンダメンタルズは存在しない

株式やコモディティは美人投票的要素を持っているが、純粋な美人投票ではない。さまざまなファンダメンタルズが関わっている。

例えば、石油の価格は、社会が天然ガスやその他の代替資源にシフトすれば、影響を大きく受ける。株式の価格は、発行する企業が新たなに株式を発行すると、下方圧力がかかる。

ビットコインは違う。

ケインズの美人投票のように、ビットコインの価格は純粋に市場の想像力によるものだ。つまり、S&P500や原油のようなコモディティとは異なり、ビットコイン価格を左右するファンダメンタルズは存在しない。

朝起きた時にビットコイン価格は上がるだろうと考え、それに従って行動する人が十分な数存在すれば、ビットコインは上がる。

このファンダメンタルズの欠如が、ビットコインがきわめて驚異的な速さで、価格を変動させる理由だ。ひと月で2倍になったり、3カ月で10倍になることも可能だろう。逆に1日で50%下がることもあり得る。

投機家の得意領域

こうした心理主導の価格変動は、ドラッケンミラーやジョーンズのようなプロの投機家の得意領域だ。

二人とも、美人投票が得意であることを証明してきた。人々が将来的に買ったり売ったりするものが何かを予測するために、人々の心に深く入り込むことができる。そうしたスキルによって、きわめて速く、莫大な利益をあげることができる。彼らにとって、ビットコインは“完璧な投資マシン”となる。

投機家はしばしば、自身のポジションについて語る。つまり、何かに投資していることをテレビで何気なく語り、時流を生み出そうとする。彼らの言葉を、本当の信念と誤解してはいけない。

ジョーンズはビットコインが「1イニング(野球の試合の最初の回)」にあると形容した。しかし、必要となればすぐにビットコインを売るだろう、1987年に株式を売った時と同じように。

投機家はゲームが大好きだ。彼らがどちら側にいるか、決めつけてはいけない。

J.P. コニング(J.P. Koning):カナダの証券会社の元リサーチャー、現在はカナダの大手銀行で金融ライターとして働き、人気ブログ「Moneyness」を運営している。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:ポール・チューダー・ジョーンズ氏(スクリーンショット)
原文:Druckenmiller, Jones and Bitcoin’s Perfect Trading Machine

おすすめ記事: