「伝統的金融とDeFiを掛け合わせる」マネックスG清明社長──円ステーブルコイン発行は報道を否定

マネックスグループ(マネックスG)は9月1日、事業戦略発表会を開催。代表執行役社長CEOの清明祐子氏以下、グループ会社トップが各セグメントごとに事業戦略を発表した。ここでは主に暗号資産(仮想通貨)関連の発言を取り上げていく。

TradFiとDeFiを掛け合わせる

まず、グループの全体戦略を語った清明氏は「イノベーションを起こしていくのにテクノロジー・エンジニアは不可欠。各社それぞれ基幹システムを内製化し、エンジニアが多くいるという金融グループだ」とマネックスGの特徴を述べ、「テクノロジーがビジネスを生み、それをグローバル化することを繰り返している」と続けた。

さらに「日本発の企業で、トラディショナルな金融を持ちながら、DeFiと言われる分散型金融も手がけられる会社は非常にレアではないかと思っている」とし、今後のグループのテーマとして「Beyoud」を掲げた。

TradFi(伝統的金融)とDeFi(分散型金融)の関係については「今までは “TradFiからDeFiへ” という論調で語られることが多かったが、これからは “from” ではなく、“&” だろう」と述べ、TradFiにDeFiを掛け合わせて「人々の生活を良くするようなサービスや商品」を生み出していくと語った。

事業はよりグローバルに

続けて、証券セグメントを挟んで、クリプトセグメントについて、蓮尾聡氏(マネックスグループ執行役/Coincheck Group COO/コインチェック代表取締役会長執行役員)がプレゼンテーション。「事業としては、よりグローバルに拡大をしていきたいと考えている」と述べ、口座数、銘柄数、IEO、新サービスとしてのステーキングなどを紹介。さらにメルコインとの戦略的提携などに触れた。

業界でのコインチェックグループおよびコインチェックのポジションについては「日本の他のプレイヤーは基本的には国内での競争を行っており、一方ではグローバルな、大きなプレーヤーがいる。日本のプレイヤーの中で上場しているのはコインチェックグループだけなので、そのメリットを生かしながら日本国内、そして海外に向けても事業を拡大していきたい」と語った。

そして「現時点で口座数は日本全体で1250万口座ほど。証券口座と比べてもまだまだ少ない。これからまだ伸びる余地があると考えている」と続けた。

円建てステーブルコインは報道を否定

先日、「発行を検討」と伝えられた円建てステーブルコインについては、質疑応答の中で清明氏が「私どもは発行しますとは申し上げていない」と報道内容を否定。ただし、「いろいろなものを変えていく機会になると考えている」とし、「非常に注目していることは事実。グループとして、どういった形で、どのような分野でステーブルコインに関係するビジネス、サービスができるのか。提供できる付加価値は何かを研究している」と述べた。

既存の金融はいつまで続くのか?

また、DeFiとの融合についての質問に対して、まだ明確に言い切れるものはないとしながらも、「ブロックチェーンが出てきたときに、証券業も含めて、既存の金融は果たしていつまで続くのかという疑問を持った。ブロックチェーンテクノロジーでピアツーピアでやり取りができると、証券も証券取引所や証券会社経由でなくてもできるようになるかもしれない。さらにそこにAIが加わってくるとデバイスレスになると思う」とTradFiとDeFiの融合・掛け合わせを掲げた背景を語った。

「アメリカではワン・プラットフォーム、マルチ・アセットという形で、既存の金融機関が行っていたビジネスと、クリプト(暗号資産)業界から来ている、ブロックチェーン技術を背景としたものが密接に関わり出してきている」

「お客様目線に立ったとき、送金、証券取引など、既存の金融機関が提供しているサービスは、果たして個別の会社がそれぞれ必要なのか? という時代が来るのではないか」「ひとつのプラットフォームやデバイスで、いろいろなサービスを提供でき、価値の交換ができ、お金も送れるような世界が来ると思っており、しっかりとグローバルな潮流を見続けて、サービスを作っていきたい」

事業戦略発表会の中で、暗号資産については、新たな取り組みの発表などはなかったが、アセットマネジメントセグメントの中でも、一文ではあったが「暗号資産ETFの組成」が触れられ、全体としてマネックスGのグローバル志向、金融グループとしてのブロックチェーン領域、分散型金融への注力を感じさせた。

|文:増田隆幸
|写真:CoinDesk JAPAN編集部

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