- クリスティーズはデジタルアート部門を閉鎖し、美術品販売におけるNFT実験に終止符を打った。
- スタッフ2名が解雇されたが、スペシャリストのセバスチャン・サンチェス氏はニューヨークに残留する。
- NFT取引高は前四半期比45%減少し、市場の不安定さを浮き彫りにした。
Now Mediaの報道によると、クリスティーズ(Christie’s)はデジタルアート部門を閉鎖し、絵画や彫刻などの作品に加え、NFT(非代替性トークン)をオークションハウスの美術品販売に組み入れるという、短命だったが影響力のある試みに終止符を打った。
8月末には、デジタルアート担当バイスプレジデントのニコル・セールス・ジャイルズ(Nicole Sales Giles)氏を含む2人のスタッフが解雇されたが、スペシャリストのセバスチャン・サンチェス(Sebastian Sanchez)氏はニューヨークに残る。

ジャイルズ氏はクリスティーズのデジタル戦略推進において目立った存在だった。特に昨年、香港フィンテックウィークと並行して開催されたクリスティーズのアート+テックサミットでは重要な役割を果たした。
彼女はそこで、クリスティーズが絵画や彫刻と同様の評価基準をNFTにも適用しているが決定的な違いがあると述べた。
「デジタルアートのユニークな点は、コミュニティの関与という側面です。これは、従来のアートでは決して見られなかった形で、間違いなく影響を与えるものだ」と彼女は当時語った。
サミットの他の参加者も、この分野がまだ成熟には程遠いことを認めていた。
「現時点でデジタルアートの価値について標準化された理解があるとは思わない」と、アート・バーゼル香港のディレクター、アンジェル・シヤン=レ(Angelle Siyang-Le)氏は述べていた。「だからこそ、突然大量の作品が登場し、あの興奮を生み出した。そして興奮が認知度を高めた。その次の段階へ進むには…我々がこうした価値基準をどう整合させるかだ」
それから1年、その基盤がいかに脆弱だったかが数字で明らかになった。
DappRadarによれば、NFT取引高は前四半期比45%減の8億6700万ドル(約1257億1500万円、1ドル=145円換算)となった。一方で取引件数は78%増の1250万件に達している。
ブルーチップNFT(優良なNFT)コレクションのフロア価格はピーク時を大きく下回っている。CryptoPunksは約46.6ETH(約21万ドル、約3045万円)、Bored Apesは9.1ETH(約4万1000ドル、約594万5000円)、Moonbirdsは2.8ETH(約1万2600ドル、約182万7000円)で取引されている。対照的に、イーサリアム(ETH)自体は過去3カ月で76%上昇して4509ドルに達し、NFT市場を上回る伸びを示している。
Xでは、一部の観測筋がクリスティーズの決定は降伏ではなく単純な経済原理の反映だと主張している。そして、NFTが独立した「収集品」カテゴリーとして扱われるより、主流の現代美術販売に吸収されつつあることを指摘する声もある。
クリスティーズの後退は、より確固たる評価基準と明確な規範がなければ、NFTは現代美術の付加物に留まり、独自の市場を持続できないリスクがあることを示唆している。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Chris Lam/CoinDesk
|原文:Christie’s Closes Digital Art Department as NFT Market Stays Frozen


