中銀デジタル通貨はインフレを加速させる可能性:バンカメ

「中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、強力かつ直接的な「資金投入」を促し、インフレ期待を高める可能性がある」──バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が3月31日に発表したレポートで述べた。

バンカメのレポート「Digital Love: Central Bank Digital Currencies」は、コストの大幅削減を実現し、国内外で決済システムのスピードアップを可能にし得るなどのCBDCのメリットを解説している。

同レポートによると、各国政府や中央銀行はCBDCを導入することで、経済刺激策をより簡単に講じる可能性があるという。

より実効性の高い経済刺激策をサポート

「CBDCは、経済刺激策を実施する中央銀行にとって、次の目指すべき課題だ。現金給付、緊急融資プログラム、ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)といった政策の強力な実施手段となり、強力で直接的な『資金供給』を促進する可能性がある。中銀デジタル通貨の発展は、インフレ期待を高め、2020年代にインフレ資産を押し上げる可能性が高い」

「暗号資産によるディスラプション(創造的破壊)により、中央銀行には決済手段としての支配的な役割と、銀行を監督し、金融政策を実施する能力を確保することが求められている」

「CBDCはまた、直接的な経済刺激策やヘリコプタードロップ(ヘリコプターマネー)の展開を迅速化することもできる。実際、米連邦準備制度理事会(FRB)の新型コロナ対策の多くは、法的問題や提供手段の問題に妨げられた」。実際、最大6000億ドルのメインストリート貸付プログラム(Main Street Lending Program)は、まだ310億ドルしか実行されていない。

ヘリコプターマネー:中央銀行が大量の貨幣を市中に供給する制作のこと。

「CBDCは、単純な制度設計を可能にし、ターゲットを限定した経済刺激策の実行を促進できる。財政当局と協力し、経済刺激策を調整することができる。米財務省が最近行った1400ドル(約15万円)の現金給付のような広範な財政措置とは対照的に、政策目的を達成するために、政府は特定の人たち、あるいは産業に対してより小規模な経済刺激策を展開できるようになる」

銀行と競合する恐れも

レポートは、CBDCの潜在的なデメリットも指摘している。つまり、政府は個人の支出データにアクセス可能になる可能性がある。

またクラウディングアウト効果(押し退け効果)もある。「CBDCは、価値保存の別の選択肢を提供したり、銀行にとって低コストな資金調達手段となっていた預金を削減したり、公社債投資信託の利益を低下させることで、銀行や投資信託と競合する可能性がある」

バンカメは、CBDCの進化はインフレ期待を高め、今後数年間、インフレ資産を押し上げる可能性があると予想している。

新型コロナウイルス感染拡大により、政府の社会保障給付費は上昇
出典:BofA Global Research, Federal Reserve Bank of St. Louis

レポートはビットコイン(BTC)に言及していないが、各国によるCBDCの採用は、インフレヘッジとしてのビットコインに対する需要が間接的に増えることを示しているようだ。

|翻訳:新井朝子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文Central Bank ‘Money Drops’ With Digital Currencies Could Fuel Inflation: Bank of America