犯罪組織が使った暗号化アプリはFBI製だった──10カ国以上で約800人逮捕

10カ国以上で約800人を逮捕、コカイン8トン、銃器250丁、4800万ドル(約53億円)相当を押収。映画になりそうな世界最大級の犯罪捜査で、証拠集めに一役買った暗号化アプリは、FBIが提供したものだった。

ユーロポール(欧州刑事警察機構)が8日に発表したプレスリリースによると、捜査は2700万通におよぶ暗号メッセージの解読をはじめ、3年間にわたって行われた。

2019年、FBI(米連邦捜査局)はオーストラリア連邦警察(AFP)と連携して暗号化アプリ企業「ANOM」を設立、秘密裏に運営していた。

AMONは最終的に100カ国以上、300以上の犯罪シンジケートに暗号化アプリをインストールしたスマートフォン1万2000台以上提供するまでに成長。顧客には、イタリアの組織犯罪、オートバイに乗ったギャング集団、国際的な麻薬密売組織なども含まれていた。

「市民に危害を加えようとする者を裁くことほど、法執行機関を団結させることはない。FBIは暗号化通信プラットフォームを提供し、AFPは世界最大の犯罪者たちの正体を暴くための技術力を提供した」とAFPのリース・カーショー(Reece Kershaw)長官は述べた。

この作戦の狙いは、世界的な組織犯罪、麻薬密輸やマネーロンダリングを手がける組織に、彼らが求める機能を備えた暗号デバイスを提供することだった。そしてANOMのアプリは実際にそうした機能を備えていた。多くの犯罪組織でANOMはデフォルトとなった。

先月、カリフォルニア州南部地区裁判所に提出された文書によると、ANOMを搭載したデバイスでやり取りされた2700万のメッセージのうち、45万枚以上の写真が犯罪組織によって送信されていた。

写真は、犯罪行為、暗号資産取引、大量の現金持ち出し、当局の腐敗などにかかわる情報を法執行機関に提供した。

オペレーション・トロージャン・シールド

当局は1年半をかけて証拠を集め、ついに大規模な捜査を展開した。作戦はFBIでは「オペレーション・トロージャン・シールド(Operation Trojan Shield)」と呼ばれた。

FBIは、オランダ国家警察、スウェーデン警察、米麻薬取締局(DEA)と連携し、数日間にわって、オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、リトアニア、ニュージーランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、アメリカなどで捜査を行った。

合計700件以上の家宅捜索によって、300以上の犯罪組織から約800人が逮捕され、8トンのコカイン、22トンの大麻と大麻樹脂、2トンのアンフェタミンとメタンフェタミンが押収された。

さらに、銃器250丁、高級車55台、暗号資産を含むさまざまな通貨4800万ドル以上が押収された。

「今回の作戦は、国際的犯罪組織が暗号化通信サービスを不正に利用していることを明らかにしたのみならず、彼らの行動に対抗できるイノベーティブな戦略を開発する法執行コミュニティの大きな関与を示した」とDEAのマシュー・ドナヒュー(Matthew Donahue)氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Major Law Enforcement Operation Busts Up 300 Crime Rings, Recovers Millions in Crypto