恐怖心を上手に使う投資の仕方【オピニオン】

恐怖心を上手に使う投資の仕方【オピニオン】

アメリカ株は21日、前日にダウ・ジョーンズ工業株価平均が1.8%の下落を記録したところから回復した。1.8%は、2カ月ぶりの大きな下げ幅であった。暗号資産も、20日に全体の時価総額が10%落ちた後、安定している。

下落の幅にも関わらず、多くの投資家が20日に経験したのは、暴落というよりは修正であった。証券市場は18カ月以上にわたって、驚くほど落ち着いていて、ほとんど上昇し続けており、暗号資産さえも過去のパターンを打ち破り、4月のブローオフトップから回復していた。

ブローオフトップ:取引量が急激に増え、価格が上昇した後に急落すること。

途中で諦めなかった限り、投資家は今のところあまりストレスを感じてはいないだろう。

しかし、本当は警戒すべきなのかもしれない。

今回の下落は、特定のファンダメンタルズや、この先いくつか異なる展開が予想されるマイナス要因の迫り来る影響についての懸念の結果のようであった。

中国の不動産開発大手「恒大集団(Evergrande Group)」の債務や、新型コロナウイルスのデルタ株が突如なくなることはなかったし、どちらもこの先数カ月にわたって、市場を苦しめ続けるだろう。

健全な恐怖を土台に

そこで今、恐怖とそれが投資に果たす役割について語り合うのにはぴったりの時だ。アメリカ文化では、恐怖は恥ずべき感情、弱さの現れ、人格の問題として軽蔑されている。

とりわけ暗号資産の世界では、恐怖は一段と忌み嫌われており、それはFUD(恐怖、不確実性、疑念:fear, uncertainty and doubt)という言葉にも表れている。

率直に言ってしまうと、FUDという言葉は主に、気まずい質問や、不愉快な事実を考えたくない人たちによって使われているようだ。米証券取引委員会(SEC)による詐欺の告発といった議論の余地もないマイナスのニュースや、米ドル連動型ステーブルコインを発行するテザーの準備資産といった、本当に気がかりな未知のものについて熟考することは、暗号資産界の人たちにとっては単なる「FUD」であり、関心を払う必要はないと片付けられてしまうことが多くある。

そのような態度は、完全な破滅へ向かうのにぴったりの方法だ。例えば、恒大集団の投資家が1年前に債務についての懸念について耳にし始め、それを「FUD」として片付けてしまったとしよう。恒大集団は巨大企業であり、FUDという言葉は使わなかったとしても、おそらくそのように考えた投資家は多くいただろう。

恒大集団の株は現在、1年前と比べて83%安だ。

恐怖、不確実性、疑念は、批判的思考の出発点であり、より力強い主張を築く土台となる。バカげたリスクを冒し、サーベルタイガーに食べられてしまわないように、進化の過程で私たちに備わった感情なのだ。

単なる消極性(どこも虎だらけだ)ではなく、答えを必要とする疑問(あの草むらの中には虎がいるだろうか?)を示唆しているのだ。つまり、リスクを気にかけ、市場は確かに時に落ち込むことを認識しているならば、恐怖に対してオープンでなければならない。

恐怖とパニックの違い

もちろん、悪いタイプの恐怖、パニックというものもある。21日の市場回復から個人投資家が学べる重要な教訓は、パニック売りは決してするな、ということだ。

理論的には、資本の一部を守り、底値をつくか回復するとともにどこかの時点でまた投資すれば良いと考えるかもしれないが、そのタイミングを測るのは、まさにギャンブルである。

これは現在の情勢には特に当てはまるようだ。人々の懐から市場に資金が流れ込む中、引き戻しにはほぼ即座に、「押し目買い」を狙う人たちが反応する。

少なくともアメリカの証券市場においては、そのような買い手の半分は、ニューヨーク証券取引市場に光ファイバーケーブルで直接つながった数学の天才のようなロボットである。彼らに、フィデリティ(Fidelity)のアカウントから勝てるはずはないのだ。それが、平均すると、活発な個人トレーダーが損失を出す理由の1つだ。

恐怖とパニックの違いを見極める1つの方法は、森で1日ハイキングするといった、リスクが少しある状況でどのように表出するかを見ることである。妥当な恐怖があれば、たっぷりの水、雨具、虫除け、コンパスを持って、最悪の事態に備えられるだろう。

一方、パニックに陥れば、蜂が顔に向けて飛んできただけで、山の向こう側へと転落してしまうことになる。

ここでのポイントは、情報をもとにした恐怖は、反射的なパニックを防ぐという点だ。恒大集団についての市場の懸念にすでに敏感であったとしたら、20日の取引開始とともに売却し、その後押し目買いにも成功した(繰り返しになるが、これに自宅で挑戦しないように)プロや高頻度取引のトレーダーと同調できていたかもしれない。

しかし、マイナスのサインから目を逸らしていただけなら、東部時間午前11時に中国の不動産開発業者についての見出しを目にし始め、蜂を恐れる都会っ子のように、底値で売った投資家たちの1人だったはずだ。

恐怖を持ちながら、前に進んでいこう。長期的には、優位に立てるはずだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Fear Is Good (For Your Wallet)

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