FATFがガイドラインを更新:DeFi、ステーブルコインへの対応は?

FATFがガイドラインを更新:DeFi、ステーブルコインへの対応は?

マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は、暗号資産(仮想通貨)に関するガイダンスを更新した。長らく待ち望まれた今回の更新では、急速に進化する暗号資産分野を規制するための包括的な一連のガイドラインが示された。

法域によって方針の厳しさに違いは出るかもしれないが、今回の更新によって、デジタル資産企業はこの先、アンチマネーロンダリング(ALM)やテロ資金供与対策(CFT)規制において、世界中でさらなる明確さを手にすることができるようになるだろう。

政府間組織であるFATFが更新したガイダンスは、暗号資産関連の違法行為についての規制当局の議論を追ってきた人にとっては、驚くような内容を含んではいない。しかし、DeFi(分散型金融)やステーブルコイン、「トラベル・ルール」の遵守など、規制上大きな不透明感をはらんでいた項目を取り扱っている。

ガイドラインは、これらの問題に対処する1つの画一的な方法を提供するのではなく、各法域が対処するべきリスクを紐解き、定義して、新興のデジタル資産の発展を、確固とした規制の範囲内に抑えるための多様なアプローチを提供している。

規制当局にとっての重要なポイントと、デジタル資産業界への実際的な影響を以下に紹介する。

DeFiは通常、分散化されていない

FATFは規制当局に対し、様々なプラットフォームを「分散化」と大まかに呼ぶ暗号資産業界のマーケティング手法を、疑わずに受け入れないよう警告している。

機能の面でこれらのプラットフォームには通常、その活動を管理、あるいはそれに影響を与える自然人(法人ではないかもしれない)がどこかにいる。「管理あるいは影響を与える」という点がポイントであり、ALTやCFTの規制に従う義務があるのは誰なのかを分析する枠組みとなる。

FATFの見解では、ほぼすべてのDeFiプラットフォームが暗号資産サービスの提供業者(VASP)である。FATFは、DeFiプラットフォームを規制当局による監視の元に置くための広範な戦略を提供しており、DeFiプラットフォームを運営する存在が本当にいないとすれば、規制当局は義務のある存在としてVASPを導入するよう命令できると示唆している。

今後の見通し:新たなDeFiプラットフォームの登場はおそらく、2022年にはペースが鈍るだろう。規制当局とブロックチェーン起業家の間では、誰が様々なDeFiプロトコルを「管理またはそれに影響を与える」かをめぐって、激しい法的争いが繰り広げられるだろう。

DeFiプラットフォームのまとめ役の多くが、特定の個人がプラットフォームとの間に持つオンチェーン、オフチェーンでの結びつきを解くなど、真の分散化に向けた試みを加速し始める可能性も高い。その他の規制を受けたVASPと同じようなAMLやCFTの要件に従わずに運営されるDeFiプラットフォームはますます、VASPによってリスクの高い事業とみなされるようになるだろう。

DeFiの活動がなくなることはないが、かつて大ブームを巻き起こした新規コイン公開(ICO)が数年前に低迷していったように、おそらく縮小していくだろう。

ステーブルコインを立ち上げ前に厳しく監視

FATFによれば、ステーブルコインのリスクを決定する主要な要素が1つある。それは、広範な市場への普及の可能性だ。FATFは、各法域が立ち上げ前にステーブルコインプロジェクトを監視し、計画段階からAMLとCFTのための措置を整備することを確実にするべきだと強調している。

今後の見通し:真に「グローバル」なグローバルステーブルコインの立ち上げは、この先ますます難しくなるだろう。規制当局は、ステーブルコイン発行業者を監視し、ステーブルコイン独自のルールや手続きを確立することにより緊急性を感じるはずだ。

FATFはAMLとCFT、そして制裁関連の規制に重点を置いているが、他の金融規制当局は、それぞれの監視領域(証券規制、消費者保護など)において、ステーブルコインに対して権威を行使するようになるだろう。

米政府は明らかに、ステーブルコインに対するFATFの姿勢と足並みを揃えており、バイデン政権は先週、ステーブルコイン発行業者に対する規制当局の監視を強める法律を導入するよう、議会に呼びかけた。

アンホステッド・ウォレットを止めることはできない

暗号資産を管理する秘密鍵が、取引所やその他の中央集権型組織ではなく、ユーザーによって保有されているアンホステッド・ウォレット(Unhosted Wallet)の完全な禁止を、FATFは勧めてはいない。その代わりに、リスクベースのアプローチを採用するよう規制当局に勧めているのだ。

今回のガイダンスは、アンホステッド・ウォレットがVASPによる監視を欠き、そのために仲介業者としての義務ある組織の不在による一定のリスクをもたらすことを認めている。

それでもFATFは、規制当局は各法域におけるアンホステッド・ウォレットにまつわるリスクの性質と程度を研究し、それに応じてリスクを管理する必要があると説明している。

ガイダンスでは、適切なリスクベースのアプローチの1つとして、VASPがユーザーに対して、アンホステッド・ウォレットとの取引を制限、あるいは禁止することを示唆している。

しかし、方針はリスク環境に応じたものであるべきであり、VASPはブロックチェーン分析ソフトウェアなどの技術ツールを使うべきだ。アンホステッド・ウォレットへの対応において、すべてに通用する画一的なアプローチは存在しない。

今後の見通し:アンホステッド・ウォレットは長年、規制を遵守したVASPから厳しい目を向けられており、とりわけVASPがユーザーとアンホステッド・ウォレット間の取引制限や取引高の上限など、リスクベースの正式な制限を整備するまでは、そのような監視は強化されるだろう。

FATFがアンホステッド・ウォレットにまつわるリスクを研究、理解するように命じたことは、ブロックチェーン分析企業にとっては朗報かもしれない。ブロックチェーンプライバシー擁護派が、匿名化ソフトウェアへの支持を強化するよう促すことになる可能性もある。

規制を受けた暗号資産分野は成長するだろうが、アンホステッドのエコシステムは、重要な発展や革新を伴ったニッチな分野に留まり続けるだろう。

VASPはトラベル・ルールを受け入れる必要がある

FATFは、VASPがトラベル・ルールを遵守しなければならず、完璧さを追求することで本来の目的を犠牲にするべきではない点を明確にした。

暗号資産業界が、見解の一致したコンプライアンスソリューションを持たないとしても、VASPはトラベル・ルールが求めるように、送り手と受け手についてのデータを記録し、次の業者に渡すためにできる限りのことをしなければならない。このために使えるテクノロジーは数多くあり、FATFは適宜導入するように業界側に任せている。

今回の更新の最も重宝な部分は、暗号資産取引の発信元なのか、受け手なのかに応じて、VASPが記録・伝達する必要のあるすべての情報を記載した表であろう。さらに、FATFはデータの取り扱いとプライバシーの重要性を認めており、VASPはトラベル・ルール関連のデータをカウンターパーティーVASPにシェアする前に、そのVASPを精査しなければならないと念押しした。

今後の見通し:これによって、業界のトラベル・ルール遵守の取り組みが加速されるだろう。少なくとも、一部のVASPは業界全体での統一的なソリューションを待たず、全体としては非効率的なアプローチになったとしても、遵守のための独自の経路やメカニズムを作りだろうとするだろう。

トラベル・ルール導入の必要性について、業界内に懐疑論があったとしたら、議論の余地はもうほとんどなくなった。

懸案事項

今回の更新には意図的に含まれていなかった、個人的に大切と思う2つのポイントがある。

まず、このガイダンスは明確に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)には言及していない。それにはもっともな理由がある。CBDCは法定通貨として規制される可能性が高く、非許可型暗号資産向けのこのガイダンスに含めてしまっては、事態を複雑にさせてしまうだろう。

さらに、実際に立ち上げられたCBDCはほんのいくつかだ。FATFがCBDCに言及するのは時期尚早だろう。しかし、CBDCパイロットが進展するに連れ、FATFからのさらなる関心に値するものとなるだろう。CBDCの普及には、新たな金融犯罪のリスクがつきものである。

ガイダンスに含まれなかったもう1つのポイントは、業者が幅広くモノやサービスへの支払いに暗号資産を受け入れるようになる可能性から生じるリスクだ。

FATFは、暗号資産を受け入れる業者はVASPではないが、業者に代わって暗号資産での支払いを処理する企業はVASPであると説明している。CBDC同様、支払いを処理する仲介業者を伴わない業者への暗号資産支払いに関するAMLやCFT、制裁のガイダンスを整備するのは時期尚早かもしれない。

しかし、業者による暗号資産での支払い受け入れが大規模に広がり、とりわけ多くの業者がアンホステッド・ウォレットを使うようになった場合には、規制当局も注目する必要があるだろう。

ヤヤ・J・ファヌジー(Yaya J. Fanusie)氏は、元CIA分析官で、ワシントンDCにある顧問企業、クリプトカレンシーAMLストラテジーズ(Cryptocurrency AML Strategies)のチーフストラテジストを務めている。

シンクタンク「新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security)で非常勤のシニアフェローも務め、デジタル資産に関係するアメリカの国家安全保障とアンチマネーロンダリングの問題を専門としている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:FATFのウェブサイト(Jarretera / Shutterstock.com)
|原文:What FATF’s Latest Guidance Means for DeFi, Stablecoins and Self-Hosted Wallets

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