ゴミで溢れた水路:暗号資産についてメディアが嘘をつくとき

ゴミで溢れた水路:暗号資産についてメディアが嘘をつくとき

暗号資産(仮想通貨)を理解することは難しい。テクノロジーは複雑で、専門用語はわかりにくく、インターフェースには改善の余地がある。初めて取引するときは、メディアやSNSの有名人たちに騙されたり、誤った方向に誘導されないようにすることも大変だ。

暗号資産のヘビーユーザーはそうしたことを無視する術を知っている。だが、それ以外の人たちが受け取る情報のほとんどは、まさにゴミで溢れた水路、ゴミ溜めだ。つまり、ミームコインの怪しげなプロモーションや、YouTuberが持ちかける儲け話ばかり。

暗号資産業界には、一般的な人たちの関心を引くだけのお金と悪巧みが存在し、質の高い情報は不足している。そして、そのギャップを悪用しようとする人が存在する。

ゴミ溜めで起きていることは、メインストリームの暗号資産の世界にはほとんど届かない。規制やベンチャーキャピタル投資、NFT(ノンファンジブル・トークン)のような今話題のトピックスに関するハイレベルな議論に注力している事情通の目の届かない場所で起きている。

ゴミ溜めのゴミを集めるとどうなるか。私は大きく分けて2種類のゴミがあることに気づいた。レッドトップのニュースと、YouTuberだ。

レッドトップ:安価なタブロイド紙

レッドトップとは、安価で、人気のあるタブロイド紙のこと。多くの業界通は、暗号資産ニュースサイトやツイッター、テレグラムなどから情報を得ている。だから、業界に詳しい人たちはタブロイド紙に「Safecoin」のコーナーがあることを知らない。あるいは「柴犬コイン」が暗号資産のニュースのほとんどを占めていることも知らない。

業界通が「ジャーナリストは暗号資産を保有すべきか否か」を議論している一方で、したたかなレッドトップは多くの一般的な人たちに次の柴犬コインを紹介している。

残念なことに、こうした行為はBBC(英国放送協会)のような歴史ある組織にまで広がっていることがある。結局のところ、ゴミ溜めは、タップルート(Taproot)やイーサリアムのレイヤー2ソリューション「Arbitrum」を知っている人と、ぼったくり店の存在を知らない日帰り観光客との間のギャップを狙っている。

YouTuberによる詐欺

ごみ溜めを埋め尽くしているゴミの大半は、YouTuberによる詐欺だ。この詐欺行為は、ほぼすべてが暗号資産メディアの目を逃れている。

例えば、チャンネル登録者数が2000万人を超えるローガン・ポール(Logan Paul)は「Dink Doink」というコインを積極的に支持していた。だがDink Doinkの価格は現在、0.0000000045ドル、ポールと開発者は何事もなかったかのように放置している。

ポールのファンにとっては、これが今の暗号資産の姿。つまり、誰もが「これこそ暗号資産!」と思う価格操作スキームだ。ポールが「CryptoZoo」と名付けたNFTプロジェクトを始めたことも驚きではないだろう。CryptoZooはオリジナル作品などではなく、ストック写真を使った手抜きプロジェクトだ。

YouTubeでの暗号資産詐欺の最悪の例は、間違いなく「Save The Kids」だろう。

このコインはバイナンス・スマート・チェーン(BSC)上にあり、意欲的なチャリティーとして発表され、eスポーツチーム「FaZe Clan」の4人のメンバーを含む、豪華なYouTuberたちが支援していた。だが、プロジェクトのスタートと同時に、参加したYouTuberのほとんどがコインをすぐに売却したり、ユーザーに嫌がらせ行為、いわゆる「荒らし行為」を行い、関係した4人が活動停止や解雇になるスキャンダルとなった。

YouTubeから情報を得ている世代にとって、暗号資産はWeb 3.0のイベントが持つ文化的な雰囲気ではなく、Save The Kidsの暴露記事で出会うものだ。暗号資産は、DeFi(分散型金融)の使い方を学んだ翌日に、有名YouTuberに襲われることだ。

「袋に入った豚」

ゴミ溜めは、今の暗号資産の何を意味しているのだろうか?

ごみ溜めで起きていることは、暗号資産エコシステムが生み出した副産物であることは間違いない。もはや業界を包括的にカバーすることは不可能。ジャーナリストも、リサーチャーも、評論家も、専門分野を選ばなければならない。そして、そこで専門知識を深めていく。最初の入口が見えなくなるほどに。

そうなると、一般的な人たちは、不安定なポジションに置かれることになる。暗号資産の世界に踏み入るには、まず水路を渡らなければならない。だが橋は危険で、脆い。落ちたら流されて、二度と連絡できなくなるかもしれない。

実際、ゴミで覆われた水路で提供されているのは、古い信用詐欺の手口「Pig in a poke」だ。この詐欺は、村に現れた詐欺師が、小さな袋に入った割安な豚を売るというもの。

安い豚を手に入れたいと考えた者は、袋の中身を確認せずに、誰かに先を越されないよう、すぐに豚を買ってしまう。詐欺師はそそくさと村を離れ、村人は袋を開けて、猫が入っていたことに気づく。

現代の詐欺は、ミームコインを本物のコインとして販売することだ。そして多くの人が袋を握ることになる。

筆者のポール・J. ディラン-イニス(Paul J. Dylan-Ennis)はアイルランドの国立大学、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのカレッジ・オブ・ビジネスで准教授を務めている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Trash Moat: When the Media Lies About Crypto

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