「第3のコイン」の悲劇【オピニオン】

「第3のコイン」の悲劇【オピニオン】

暗号資産(仮想通貨)の世界には常に、「第3のコイン」が存在する。これはつまり、ビットコイン(BTC)とイーサ(ETH)に次ぐ3番目のポジションにいる、移り変わるコインのことだ。第3のコインは通常、これら2大コインへの挑戦者とされる。新規投資家たちに好まれ、暗号資産の政治分布の中では中道の位置を占める存在だ。

リップル(XRP)やバイナンスコイン(BNB)、より最近ではカルダノ(ADA)がこのポジションに存在してきた。暗号資産界では、これほど危険なポジションはほとんどないだろう。後は下がるだけなのだから。

アメリカ人の大半にひいきのアメリカンフットボールのチームがあるように、暗号資産が普通の人にも馴染みのあるものになるにつれ、人々はお気に入りのコインを選ぶようになっている。

歴代の第3のコインを振り返る

新規参入者である第3のコイン投資家の想像の中では、第3のコインはビットコインとイーサの問題点をすべて解決してくれる存在だ。これらの投資家はしばしば、第3のコインの起源を知らず、XRPやバイナンスコイン、カルダノは斬新で革新的、自分たちと同じように新鮮なコインだと考えている。

第3のコイン投資家層は、ビットコインではなくブロックチェーンに興味を持つスーツを着たエリート層、興味津々の女性たち、もしくは投資アプリのロビンフッドをいじっている普通の人たちだ。

例えば、(SECによる告訴前の)XRPの魅力は、リップル社との関連と、宣伝されていたユースケースであった。つまり、コストがかさみスピードも遅い銀行インフラを排除して、リップルネットとXRPがそれに取って代わるというものだ。

新規投資家にとって、リップルは世界中にオフィスを持つしっかりとした企業であった。このような投資家は、分散化といった曖昧なテーマには興味を持たず、より高速な取引と低コストを生み出す、XRPの中央集権化された高信頼ネットワークに十分満足していた。もちろん、XRPは取引所バイナンスにしか存在しなかったために、第3のコイン投資家の大半はおそらく、これを実際に目の当たりにした訳ではない。

BNBも同じような理屈だ。このコインに関連する企業は、新規投資家に非常に馴染みのあるバイナンスであった。当然ながら、うたわれているユースケースもある。ユーザーは、バイナンスでの手数料をBNBで支払えるというものだ。

新しい投資家にとっては、これによってBNBの長期的な命運が、XRP同様、規制当局からの厳しい監視にさらされている企業と結びついてしまうということが、厳しい教訓であった。

第3のコインはしばしば、企業からの発表の恩恵を受けるが、企業についてのニュースの影響を受けるリスクも常に負っているのだ。

そして、バイナンス・スマート・チェーン(BSC)もある。BSCがどれほど完全な混沌となっているかを言葉で伝えるのは困難だ。多かれ少なかれ、イーサリアムをコピー・アンド・ペーストしたようなものだが、イーサリアムを作った誰かが、翌日には管理を止めてしまったような状態なのだ。予期せぬバグとユーチューブのインフルエンサー詐欺にまみれた無法地帯である。

最近では、投資家たちが企業コインの危険性に精通するようになり、ADAの心地良さに逃げ込んだようだ。XRPとBNBは中央集権型で中道派である一方、ADAは分散型であり中道派だ。

カルダノは、コードが学会のような厳格な査読のプロセスを経るという点で、イーサリアムから差別化を図り、イーサリアム・キラーと明確に位置付けられており、学術界との関係性から、正当なコインとしての基盤を築こうとしている。

新規ADA投資家たちは、このゆっくりと着実な査読プロセスを理由に、中核的な機能性の欠如(最近まで、カルダノにはスマートコントラクトがなかった)を弁護することができる。

イーサリアムもこのようなプロセスを採用していれば、2016年のDAOハッキングや2017年のParityのバグは起こらなかったかもしれない。今時のADA投資家たちが、このような昔の出来事を知っていたらの話だが。

永遠の3番手?

ADA、BNB、XRPは現在、私に言わせれば時価総額の大きなステーブルコインで、第3のコインではないテザー(USDT)の後ろにつけ、第3位のポジションを狙っている。

そしてその後ろには、ソラナ(SOL)が控えている。SOLはイーサリアム・キラーであり、見方によっては控えめ、あるいは大いに分散化されており、手数料は低く、取引は高速。法外なガス代を支払わずにノン・ファンジブル・トークン(NFT)を取引しようとする投資家を真っ向からターゲットにしている。

9月に起こったように、ダウンしてしまっても気にせずに。再起動すれば良いだけなのだから。それこそが、第3のコイン的発想だ。

第3のコインの悲劇は、ETH、ましてやBTCとの時価総額の違いがあまりに大き過ぎて、その地位を奪うには、大衆への普及によって追いつくのではなく、おそらく2大コインが劇的に暴落する必要があるということだ。当記事執筆時点で、ETHの時価総額は約3500億ドル。第3のコインADAは約660億ドルだ。

ここから得られる憂慮すべき結論は、先に謝っておくが、これによって私や私のような人たちはデュオ・マキシマリスト、つまり、ビットコインやイーサは確立され過ぎていて、打倒できないと考える人になってしまうということだ。

ポール・J. ディラン-イニス(Paul J. Dylan-Ennis)はユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのカレッジ・オブ・ビジネスで助教授を務めている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:The Tragedy of the Third Coin

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