ウェブ3にウェブ2の過ちを繰り返させるな【オピニオン】

ウェブ3にウェブ2の過ちを繰り返させるな【オピニオン】

暗号資産(仮想通貨)は、驚異的な成長を遂げている。イーサリアムのノードオペレーターが数千人、ビットコイン保有者はその数倍、ノンファンジブル・トークン(NFT)のユーザーが数百人といった状態から、業界全体で数百万人の投資家とユーザーを抱えるまでに成長した。

誰でも許可なしに制作、開発、探求できる、開かれたオンラインの世界があることは素晴らしい。価値が生み出され、自由が維持されることも同じ。しかし、その中で失われているものもある。プライバシーだ。

プレー・ツー・アーン(プレーして稼ぐ)ゲームからNFT、DeFi(分散型金融)まで、あらゆる世界に広がる暗号資産の中でもとりわけ話題の一分野、ウェブ3は、ウェブ2と同じ過ちを繰り返しているようだ。

人々が自らのデータを保有すること、自らが生み出した価値に対して見返りを受け取ることを実現させ、インターネットの中央集権化の弊害への解決策となるとアピールされているが、ウェブ3はそうした大きな約束を果たせていない。

ウェブ2界の大物たちの一部がウェブ3に進出する中、問題はさらに悪化するだけかもしれない。

ウェブ2エコノミーは、シンプルなアイデアを基盤に築かれた。ユーザーデータという安価なリソースを大規模に収集し、それをまとめて、高価なプロダクトとして、ユーザーデータへのアクセスから収益を上げるというものだ。

ユーザーに対しては、コンテンツを作成し、グローバルにつながるためのほぼ無制限の能力を与える一方、広告主に対しては、捕らわれた聴衆を提供した。フェイスブックやグーグルをはじめとする企業は、数兆ドル規模のビジネスと「ウォールド・ガーデン」を築き、その後社名を変更(メタ、アルファベット)し、あり得ないような成長を可能にした価値抽出型のビジネスから距離を置いた。

置き去りにされるプライバシー

その過程で、ユーザーのプライバシーは無視されただけではなく、見捨てられた。ケンブリッジ・アナリティカの元社員の内部告発によって初めて、私たちは自らのデータが、ときには民主主義を犠牲にしてまで、乱用・転売されていることを真に理解した。

ウーバーからエクイファックス、リンクトイン、アリババまで、ウェブ2企業のほぼすべてが、大規模なプライバシー関連の不手際やデータ漏洩を引き起こしている。

ウェブ3は壮大な約束をいろいろと掲げているが、この中核的な問題を解決していない。ブロックチェーンの世界は確かに、ウェブ2よりもはるかに開かれているが、プライバシー保護のレベルははるかに低い。

ブロックチェーンはデフォルトですべてのユーザーデータを流出させるもの。それも単にケンブリッジ・アナリティカのような企業に対してだけではなく、ブロックチェーンを見るすべての人に対してだ。

「デフォルトで一般公開」というモデルは、ユーザーが自らのデータをデフォルトで明け渡さなければならないことも意味している。ウェブ3はユーザー中心にはまったくなっていない。デフォルトで一般公開というシステムやブロックチェーンは、再び中央集権化し、「勝者が全取り」という仕組みへと収束していく。

誰もが利用できるデータを最も有効活用できるリソースを持つ者が、価値の大部分を捉えることになる。つまり、豊かな人はさらに豊かになり、ユーザーはコントロールを失う。

ブロックチェーンデータを追跡するウェブ3企業は、こうして数十億ドルの評価額を達成した。ブロックチェーンのセキュリティ維持に貢献するマイナーは、公開されたデータを見られる特権を活かしてユーザーの先を行っている。

一方、メタ(旧社名:フェイスブック)などのウェブ2企業は、新興のメタバース(仮想世界)に全力を傾けることで、次の数兆ドル規模のチャンスを狙っている。ソーシャルメディア時代にオンラインプライバシーを壊滅させた企業が今では、開かれたメタバースをコントロールしようと狙いを定め、数兆ドル規模の価値を捉えるために、数十億ドルの資金を巧みに使っている。

プライバシーを尊重するメタバースを

私たちの目の前には、2つの好ましくない選択肢がある。あらゆるデータを流出する(公開する)ように作られた開かれたメタバースか、ユーザーデータを日常的に悪用する企業が保有・管理するメタバースだ。私たちは声を大にして、どちらにも「ノー」と言わなければならない。

メタバースが登場し、その基盤が築かれるなか、より優れたモデルを意識して、積極的に行動しなければならない。ウェブ3やオープンメタバースは、最初からプライバシーを大切にする設計でなければならず、デフォルトでユーザーを保護し、ユーザーは自らのデータの使用を承諾し、そこから恩恵を受けられるべきだ。

これは単なる夢ではない。世界中の何万人ものユーザーたちはすでに、デフォルトでプライバシーが守られる、自らに力を与えてくれるような、自律分散型アプリケーションを開発し、利用している。

私たちシークレット・ファウンデーションは、2015年からこの目標を目指して努力を続けている。これまでになく大事な局面を迎えている今は、私たちの戦いに加わるには絶好のタイミングだ。

作る価値があり、その中に生きる価値があるのは、プライバシーを守るメタバースだけなのだから。

トーア・ベア(Tor Bair)氏はオープンソースでプライバシーを優先したテクノロジーの研究・開発・スケーリングを目指すシークレット・ファウンデーション(Secret Foundation)の設立者。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Don’t Let Web 3 Repeat Web 2’s Mistakes

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