「Web3」を10分で理解する【基礎知識】

「ウェブ3.0」とも表記される「Web3(以下、ウェブ3)」は、最近頻繁に耳にする言葉だ。分散型プロトコルを促進し、ユーチューブ、ネットフリックス、アマゾンなどの大手テック企業への依存を減らそうとする、次なるインターネットを意味する。

しかしウェブ3とはいったい何なのか、なぜ話題となっているのだろうか?

ウェブ3とは?

ウェブ3を理解するためには、その前に何があったかを理解することが必要だろう。ウェブ1と呼ばれる、最初のバージョンのインターネットは、1990年代後半に登場。リンクとホームページの集まりから成っていた。

ウェブサイトは特に双方向なものではなく、書かれているものを読んだり、他の人が読めるように基本的なコンテンツを発表する以外に、できることはほとんどなかった。

マイニング企業ビットフューリー(Bitfury)のCEO、ブライアン・ブルックス(Brian Brooks)氏は2021年12月、議会公聴会で次のように表現した。

「もし元祖AOLアカウントを覚えているとしたら、あれは『ウォールドガーデン』の中で、双方向ではなく、AOL上で提供されるコンテンツを見るための方法であった。タイム誌が雑誌の中で読んでほしい記事を見せていたのと同様で、この場合はスクリーン上というだけの違いだ」

次に、ウェブ2がやって来た。「リード/ライト」型インターネットと呼ぶ人もいる。閲覧だけではなく、ファイルを開いて編集できるコンピューターコードから来る呼び名だ。

このバージョンのインターネットでは、人々はコンテンツを消費するだけではなく、自ら作成し、タンブラーなどのブログやインターネットの掲示板、クレイグスリスト(Craigslist)などのマーケットプレイスで発表できるようになった。

その後、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどのソーシャルメディアの台頭により、コンテンツ共有は新たなる高みへと到達した。

その後しばらくして、人々は自らの個人情報がテック大手によって収集され、ターゲット広告やマーケティングキャンペーンに使われていることに気づいた。とりわけフェイスブックは、データプライバシー法の侵害で批判を浴び、2019年には50億ドルの罰金が課された。これはFTC(連邦取引委員会)による罰金としては、史上最高額であった。

ウェブ2は世界に、素晴らしい無料のサービスをもたらしたが、大手テック企業が生み出した新しい 「ウォールドガーデン」に人々はうんざりし、自らのデータやコンテンツをコントロールしたいと考えるようになった。そこで、ウェブ3の出番だ。

ウェブ3は、インターネットの「リード/ライト/オウン(読み出し/書き込み/保有)段階と理解できるだろう。自らのデータと引き換えに無料のテックプラットフォームを利用するのではなく、ユーザーはプロトコルのガバナンスや運営に参加することができる。つまり人々は、単に顧客や製品ではなく、参加者や株主になれるということだ。

ウェブ3においては、株式のようなものはトークンや暗号資産(仮想通貨)と呼ばれ、ブロックチェーンと呼ばれる分散型ネットワークの所有権を表す。トークンを十分に保有していれば、ネットワークで発言権を持てるのだ。ガバナンストークン保有者は、自らの資産を使って、例えば分散型貸付プロトコルの将来に投票できる。

ここでも、ブルックス氏にまとめてもらおう。

「ここでの真のメッセージは、分散型インターネット上で起こることは、投資家によって決定されるということだ。それに対し、メインインターネット上で起こることは、ツイッター、フェイスブック、グーグル、その他少数の企業が決定する」

ウェブ3では何ができる?

ウェブ3は、かつて中央集権型であったプロダクト向けに、協力的なガバナンス構造を拡散することを可能にする。ミーム、芸術作品、個人のソーシャルメディアでのアウトプット、有名起業家主催のカンファレンスのチケットなど、あらゆるものがトークン化できるのだ。

パラダイムシフトの典型例は、ゲーム業界に見られる。ゲーマーはお気に入りのゲームに開発者たちが残したバグについて、あるいは最新のパッチによってお気に入りの武器のバランスが崩れたことについて、延々と不満を並べる。

ウェブ3ならば、ゲーマーはゲーム自体に投資し、どのように運営されるかについて投票することができる。メタやユビソフト(Ubisoft)など大手ウェブ2企業は、一部ウェブ3が支えるバーチャル世界を生み出している。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)もまた、プレーヤーが集めたアイテムの変更不可能な保有者になれるようにすることで、ゲーム業界を改革するのに大きな役割を果たしている。

ウェブ3に対する批判

ウェブ3テクノロジーに対する主な批判は、その理想に及ばないというものだ。ブロックチェーンネットワークの所有権は平等に分配されず、初期の参加者やベンチャーキャピタリストに集中する傾向にあるとも言われている。

先日、ブロック(Block)のCEO、ジャック・ドーシー氏と、様々なベンチャーキャピタリストの間で、ウェブ3をめぐって、公開の議論が巻き起こり、この話題が表舞台で取り上げられることとなった。

批判の中心にあるのは、「分散型劇場」という考え方だ。これは、ブロックチェーンプロジェクトは名目上は分散型ということになっているが、実態はそうではないというものである。プライベートブロックチェーンやベンチャーキャピタリストが支援する投資、わずかな人が数億ドル相当の資金への鍵を握っている分散型金融(DeFi)プロトコルなどが、分散型劇場の例である。

そして、リーダー不在のはずのプロトコルのコミュニティにも関わらず、明らかなリーダーが存在する。『フィナンシャル・タイムズ』のブログ『Alphaville』のエディターを退任するイザベラ・カミンスカ(Izabella Kaminska)氏は、イーサリアムの共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏が、開発にはもう携わっていないにも関わらず、イーサリアムネットワークに対して持ち続ける大きな影響力を指摘している。

「ブテリン氏は彼自身、奇妙で矛盾した現象だ。事実上リーダー不在のシステムの精神的リーダーとして機能しながら、自らが作り上げ、監督するリーダー不在のシステムに対して驚くほどの影響力を保持している」と、カミンスカ氏は暗号資産関連情報サイト『The Crypto Syllabus』で述べている。

分散型金融プロトコル内でも、事態はそれほどましなものではない。投票者の不在が蔓延しており、しばしば中央集権型インフラに依存している。ブロックチェーン作成が、最高に専門的なエンジニアだけにできる難解な魔法のように見えることを考慮すれば、作成のための参入障壁もいまだに高い。

しかし、それらの問題を抱えるにも関わらず、ウェブ3は多くの可能性を秘めている。実現するにはあまりに理想主義的かどうかは、この先10年で一般ユーザーが発見していくことになるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:What Is Web 3 and Why Is Everyone Talking About It?