ウェブ3とメタバースは別物だ【オピニオン】

ウェブ3とメタバースは別物だ【オピニオン】

最近では、「メタバース」と「ウェブ3」という言葉は同じ意味で使われている。どちらも、より良い未来のインターネットというビジョンを表すものだが、これら2つのコンセプトが一緒にされたり、どのようにインターネットを構築してくかについてのイデオロギーをめぐる分断の源にならないことが大切だ。

2者の違いを認識する

1992年発表のSF小説『スノウ・クラッシュ』にその起源を持つメタバースは、具体的な現実というよりは、ビジョンに近い。多くの人は、同時接続ユーザーにとって同時的で持続的、無制限の没入型3Dの世界を想像している。デジタルネイティブの場であり、私たちは仕事、学習、遊び、エンターテイメントなどのための過半数の時間を、ここで過ごすことになる。

メタバースは曖昧で空論的な感じがするが、それはその通りだ。まだ形になってはいない。一部の技術者は、このビジョンをメタ社による『レディ・プレイヤー1』的なプレゼンに似たような世界に仕立てようとしているが、メタバースが真に形になるためには、全員の意見と参加が必要であるというのが現実だ。様々な繰り返しの取り組みと、技術的発展が同時に起こる必要があり、個別の境界線を持つべきではない。

一方のウェブ3は、ウェブ2インターネットの欠点に明確なソリューションをもたらす、はるかに具体的なパラダイムである。これは、人々のデータを引き出したり、プライバシーを侵害したり、自らが生み出したコンテンツをコントロールする力を抑圧してきた、フェイスブックやユーチューブなどのプラットフォームが生み出したウォールドガーデンのエコシステムへの対応である。

ウェブ3がそのようなモデルを覆すのは、オーナーシップ(所有権)とコントロールの問題に直接に対処するからである。

ブロックチェーン上に構築されることで、データはオープンで分散され、ピアツーピアのネットワークによって集団で保有される。その結果として、ユーザーは自らのデータを保有し、ピアツーピアの取引は仲介業者を迂回し、データはブロックチェーン上に、誰でもが貢献し、収益化できる公共財として存在することになる。

ウェブ3の取り組みからはすでに、新しく素晴らしい消費者行動が生まれている。例えば、クリエーターは自分のコンテンツをNFT(ノン・ファンジブル・トークン)として販売できたり、プレーして稼ぐタイプ(Play to Earn)のゲームによって人々はゲームをプレーすることによって生計を立てられたり、コミュニティーが組織した投資コレクティブ(ConstitutionDAO)が、米合衆国憲法の原本の競売に参加できるのに十分なほどの資金を集めることができるようになった。

ウェブ3と分散化は単純に、メタバースのための基本的要素であると認めることで、その他のタイプのクリエーターたちを敵に回す代わりに、彼らのためのチャンスを開くことができる。

メタやウェブ3への反発

メタ社がAR/VR(拡張現実/仮想現実)を中心としてメタバースのビジョンを発表した時に、ビッグ・テックがメタバースを占拠し、プラットフォームは再び、閉じられたエコシステムとしての運営を余儀なくされるという激しい非難が上がった。

人々が見落としていたのは、メタが推進していた重点分野はおおむね、率直に言って現在は存在しない、ハードウェアおよび3Dユーザー消費・インプットインターフェイスであった点だ。

メタは没入に関する問題を解決しようとしているのだが、それは大切な問題だ。考えてみて欲しい。私たちの多くがここ2年間、ズームを多用して、すでに疲弊しているのだ。1日中VRヘッドセットを装着することになったら、どのように感じるだろうか?

楽しくバーチャルの世界でより多くの時間を過ごすためには、より没入型で自然で表現豊かなバーチャルインターフェイスが必要だ。AR/VRと動作検知のテクノロジーにおけるメタの進歩は、ウェブ3や分散化の取り組みを台無しにすることはない。実際、最善のシナリオは人々が、AR/VRやホログラフィーの新興の3Dフォームファクタ内で、ウェブ3アプリケーションを開発し始めることだ。

別のセンセーショナルな意見は、ウェブ3がウェブ2を時代遅れにしてしまう、というものだ。こちらも、そのような現実を想像するのは難しい。ウェブ2は確かに特定の欠点を抱えているが、それでもブロックチェーンを使わない方がより効果的に運用される製品は数多くある。

メッセージアプリのディスコード(Discord)や、ゲーム配信アプリのツイッチ(Twitch)などのプラットフォームは、人々が大規模かつリアルタイムにコミュニケーションしたり、配信を行うのに役出つ。ウーバーやドアダッシュ(DoorDash)などの企業は、効果的に需要をまとめ、それを供給とマッチさせることができる。

好むと好まざるに関わらず、中央集権化は機能するのだ。現在最大のNFTマーケットプレースであるオープンシー(OpenSea)は根本的に、ブロックチェーン上で取引をスムーズに行わせる中央集権型のマーケットプレイスである。

コインベース(Coinbase)も、暗号資産(仮想通貨)の取引を可能にする中央集権型取引所の一例だ。どちらの場合でも、これらの仲介業者はウェブ2マーケットプレイスと同じように、取引に対してサービス手数料を課している。

多様な要素の交わり合い

このような混合型のプロダクトは、分散化のイデオロギーに完全にマッチする訳ではないが、メインストリームに対する魅力があるために、ウェブ3の要素をさらに普及させることを助ける重要な「架け橋的プロダクト」である。

スナップ・ストーリーズ(Snap Stories)がティーンエイジャーに人気のプロダクトであったのに、高い年齢層のユーザーへの普及で苦戦したが、旧フェイスブックがストーリーズを導入することで、すべての年齢層にとっての主流プロダクトとなったのと同様だ。

新しいテクノロジーやパラダイムが現れるとしばしば、革命のように捉えられる。しかし、私たちが歴史を通して目の当たりにしてきたのは、それらが過去の時代の既存の基盤の上に築かれる傾向があるということだ。

Eメールはいまだに、私たちの日常生活の大きな部分を占めているが、これはインターネットのウェブ1時代に発明されたプロトコルである。

投資会社アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)のゼネラルパートナー、ジョン・ライ(Jon Lai)氏は、ポッドキャスト『Hello Metaverse』のあるエピソードにおいて、メタバース開発のための道のりに関して、次のようにしっかりとした態度を持っていた。

「まだ開発すべきものがたくさんある。ブロックチェーン、プレーして稼ぐタイプのもの、様々なタイプの仕事、バーチャル経済、それらすべては足掛かり(であり)UGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォームとスケーリングコンテンツ作成もだ。(中略)『今まで10年にわたって開発に取り組んできました!こちらがメタバースです』とどこかの会社が発表するような、きらびやかなプロダクトローンチにはならない。まったく異なる分野で、まったく異なるプロダクトに取り組む、たくさんの会社が積み重なったものになるのだ」

それはつまり、私たちは、異なる運用モデルの違いに注目し、「どちら側につくかを選ぶ」ことに力を入れるのではなく、それらの相互作用、そしてそれらがどのように連携し、人々にとってより良い現実を作り出すか、という点に重点を置く必要があるということだ。

ウェブ3の最新の展開と、ブロックチェーンのユースケースをメインストリームにするための取り組みは、より良いインターネットを作るための道のりにおける大きな前進であるが、それは単に1つの要素であり、その他の補完的取り組みを無視するべきではない。

アニー・チャン(Annie Zhang)氏は、メタバースによる文化的、社会的影響を取り扱うポッドキャスト『Hello Metaverse』のホスト。幅広い消費者向け企業において、次世代のソーシャルプロダクトを開発している。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Web 3 and the Metaverse Are Not the Same

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