ビットコイン、そこそこのパフォーマンスでも元気のないクジラ【Krakenリサーチ】

3月のビットコイン(BTC)は、歴史的に4番目に良いパフォーマンスを記録した。

ただ、ビットコインの大口投資家を指す「クジラ」の動きを見てみると、ビットコインに対する自信が揺らぎ始めている兆候が見られるため、注意が必要かもしれない。

歴代4番目のパフォーマンス

3月のビットコインは、3%のプラスで取引を終えた。

「コロナショック」があった2020年の3月を含め、歴代の3月はパフォーマンスが悪い月が多いことで知られている。平均リターンはプラス8%だが、これは2013年3月の171%プラスという桁外れの値が押し上げてる。中央値はマイナス5%。

(画像:ビットコインの月間リターン/Kraken Intelligence)

しかし、オンチェーン分析を見ると、ビットコインは一安心できない状況であることが分かる。

元気のないビットコインのクジラ

オンチェーン分析は、仮想通貨の取引量やアドレス数などブロックチェーン上で確認できる取引記録の傾向を分析して、現在の相場動向を読み解く手法。今回の分析対象である「クジラ」について、クラーケン・インテリジェンスは、ビットコインの場合は1000BTC以上、イーサリアムの場合は1万ETH以上を保有するアドレスと定義している。

ビットコインのクジラの数は3月前半は増加したが、後半にかけて減少を記録。2259アドレスで始まり2257アドレスで3月を終了し、前月比でほぼプラスマイナスゼロという結果だった。

(画像:ビットコインのクジラの数(水色)とイーサリアムのクジラの数(紫色)/Kraken Intelligence)

対照的に、イーサリアムのクジラの数は3月に急増した。とりわけ3月後半での増加率が顕著で、1149アドレスから1187アドレスへと一気に増えている。同期間、イーサリアムの価格は30%の上昇を記録している。

一方、クジラの保有量でもビットコインとイーサリアムの明暗が分かれている。

ビットコインのクジラが保有するビットコインの量は、806万BTCから803万BTCへとわずかに減少した。対照的に、イーサリアムのクジラが保有するイーサリアムの量は、8140万ETHから8170万ETHに増えた。

(画像:ビットコインのクジラが保有するBTC(水色)とイーサリアムのクジラが保有するETH(紫色)/Kraken Intelligence)

イーサリアムについて、クジラの数が増加したことと合わせて考えると、既存のクジラがポジション調整をしたわけではなく、新しいクジラが増えてきていることを意味していると言えるかもしれない。

3月は、人気NFTコレクションAzukiの#9605が、NFTマーケットプレイスのオープンシー(OpenSea)でAzuki史上最高価格となる420.7ETH(約1億7000万円)で売却されている。一部のNFTコレクターの間では強気相場は続いており、新しいクジラが増えている要因になっているかもしれない。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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