レイヤー2、イーサリアムから収益を奪う可能性──補完的ではなく競争的に:米コインベース

イーサリアムのブロックチェーンは「コストとスループットの欠点」に対処するためにレイヤー2システムを必要としている。だが、そうしたレイヤー2システムは「補完的ではなく、競争的」になり、イーサリアムから収益を奪う可能性があると米暗号資産取引大手Coinbase(コインベース)は8月8日、レポートで述べた。

「レイヤー2が経済活動の大部分を担うアプリケーションレイヤーになり、イーサリアムブロックチェーンは取引データを保存するだけになる可能性がある」とコインベースの機関投資家向けリサーチ責任者、デビッド・デュオン(David Duong)氏はレポートに記した。

レイヤー1ネットワークは、ブロックチェーンのベースレイヤー、つまり基礎となるインフラ。レイヤー2は、レイヤー1の上に構築されたオフチェーンシステムや個々のブロックチェーンのことだ。

レイヤー2の将来は「ゼロサムゲーム」になる可能性があるという。多くのDapp(分散型アプリ)を持ったレイヤー2が「イーサリアムのエコシステム全体を動かす」可能性があるためだ。レポートによると、イーサリアムブロックチェーンのTVL(total value locked)は約689億ドル、一方、レイヤー2は52億ドル。

レイヤー2sのTVLはまだ小さいが、zkEVM(ゼロ知識証明イーサリアム仮想マシン)の実装は、レイヤー2の実力を高め、その成長における「大きな牽引力」につながる可能性があるとレポートは指摘した。

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多くのユーザーが取引をレイヤー2に移し、レイヤー2が取引を可能にするために独自トークンを必要としたなら、イーサリアムのステーキングによる利回りは減り、バリデーターの収入は減少する可能性があるという。

ステーキング量の減少は、イーサリアムの流通量の増加につながり、価格にダメージを与える可能性がある。また、バリデーターの減少は、イーサリアムブロックチェーン全体のセキュリティに悪影響を及ぼす可能性もあるとレポートは述べた。

また当面の間、イーサリアムのメインネットワークでの取引は、「スピードよりもセキュリティ」を重視するユーザーにとってのソリューションになるとし、クロスチェーン・ブリッジのハッキング被害が今年すでに20億ドルに達していることに触れた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Unsplash
|原文:Ethereum Layer 2s Could Take Revenue From the Blockchain as They Become More Competitive: Coinbase