Aptos:期待大ゆえに落胆も大きかったブロックチェーンの誕生

Aptos:期待大ゆえに落胆も大きかったブロックチェーンの誕生

シリコンバレーの寵児たちが生み出した待望のブロックチェーン「アプトス(Aptos)」が、先週の暗号資産界ではジョークのネタになっていた。10月17日のデビューが波乱含みで、大いに批判されたのだ。

ネイティブトークンのAPTは、取引開始から最初の24時間で約50%値下がり。1秒間に10万件の取引を取り扱うことができると謳うネットワークでの当初の取引件数は、1秒間にわずか4件であった。

ローンチ前の非公開投資ラウンドでは20億ドルの評価額がついたアプトスの時価総額は、当記事執筆時点で9億5900万ドル。このようなデータを見て笑うだろうか?それとも尻込みするだろうか?答えはおそらく、手持ち資産の規模によるのだろう。

業界関係者数人と話をして感じたのは、人々がアプトスの失敗を願っているということだ。アプトスは、価値のある複数の技術革新を提供するかもしれないが、暗号資産の理想に反する「内部関係者優先」の開発アプローチを象徴してもいるからだ。

フェイスブックのルーツ

アプトスの中核となるチームは主に、フェイスブックを手がけるメタ・プラットフォーム(Meta Platform)による失敗に終わったトークンプロジェクト「リブラ/ディエム(Libra/Diem)」に携わっていた人たちだ。

リブラ自体も、2019年に初めて発表された時には、大いに議論を呼んだ。リブラも、暗号資産の普及に関して、新しいアプローチをとっていた。暗号資産、法定通貨、その他の資産が裏付けとなったステーブルコインで、メタが所有するフェイスブック、ワッツアップ(WhatsApp)、インスタグラムが抱える広範なユーザーベースを活用して、国際的な準備通貨となることを目指していた。

リブラはその計画発表からまもなく、規制当局の要求に屈することとなり、本来のビジョンは大幅に変更された。振り返ってみれば、長年にわたるプライバシー侵害や、その他の人道に対する犯罪のせいで、人々はメタに不信感を持っており、この計画は最初から見込みがなかったのかもしれない。

しかし、フェイスブックはこのプロジェクトに大いに投資しており、興味深いブロックチェーンのスケーリングプロダクトや、Moveと呼ばれるプログラム言語も開発した。

だからこそアプトスが発表された時に、ディエムの抱えていた様々な問題抜きで何か新しいものが生まれると、人々はワクワクしたのだ。共同創業者のモー・シャイフ(Mo Shaikh)氏さえもが「もっと上手くいったはずだ」と認めたローンチに終わったアプトスは、暗号資産の最悪の特徴をいくつか引き継いでしまったようだ。

市場コメンテーターのCobieは、トークン供給や最初の分配など、アプトスのトークンの仕組みの基本的な情報が、バイナンスやFTX、コインベースなどの取引所にAPTが上場される前に公開されなかったことに、深刻な不安を示した。

アプトスは、トークン取引開始まで残すところ1日を切ってからこれらの情報を公開しても、論争を収めることはできなかった。アプトスのブログによれば、アプトスが最初に分配する10億のトークンのうち、49%は「中核的な貢献者、投資家、財団」に直接配分されるのだ。

それより少しだけ多くのトークンは「コミュニティ」のために取り分けられ、アプトス上でアプリやプロコトルを開発する人たちに与えられるようだ。しかし、ここでの「コミュニティ」の定義は、お粗末なものかもしれない。その「大半」(〜41%)はアプトス財団へ、「より少ない割合」(10%)がアプトス・ラボに分配されると、ブログには書かれている。

内部関係者たちは、1年間のトークンのロックアップに同意。ベンチャーキャピタリストや大口保有者が、個人投資家に売却するのを防ぐためだ。しかし、これらのトークンのうち約半数は、1日に最大7%のトークン報酬を獲得するためにステーキングが可能で、それらのトークンはロックアップの対象とはならない。

さらに内部関係者は、メインネットのローンチの5日前、10月12日にはステーキングを開始できたようだ。暗号資産アナリストのAkadoSangはこの仕組みを、「支援者は通常、大量のトークンを保有するため、流動性を得るためのずる賢いやり方」だと批判した。

FTXベンチャーズ(FTX Ventures)とジャンプ・クリプト(Jump Crypto)は7月に、1億5000万ドルの資金調達ラウンドを主導。コインベースとバイナンスはそれぞれ、3月と9月に「戦略的投資ラウンド」を行った。

アプトスを擁護する

中立性を保つことだけが目的だとしても、様々な危険信号を抱えるアプトスを擁護する意見を、簡単に書いておきたいと思う。

まず、1秒間の取引件数がお粗末だと言って、ローンチしたてのブロックチェーンを評価することは卑劣な攻撃のように感じられる。取引相手となるようなものが何も開発されていないのだから。

次に、公平とはほど遠いアプトスのトークンの仕組みは、ソラナ(Solana)やニア(Near)、フロー(Flow)などの競合と一致するものだ。これらのプロジェクトはすべて、「コミュニティ」向けのトークンを助成金の資金にするなど、上手く活用している。

最後に、コインベースやバイナンスの「戦略的」投資というのは怪しげだが、単に早めにトークンを購入して、ローンチ時やローンチ後まもなく、人々が取引するものがあるようにしていただけのようだ。

アプトスに対する市場の期待は高く、取引所においてもアプトスに対する需要を取り込みたいと考えただろう。

これらのポイントは、世界はさらに新しいレイヤー1ブロックチェーンを必要としているかという、別個で重要な疑問に答えるものではない。現在すべてのブロックチェーンは空きの容量とブロックスペースを抱えており、イーサリアムでさえも、再び安く使えるようになっている。

前回の強気相場では、ソラナのようなとりわけ「スケーラブル」なブロックチェーンが、その規模のために処理の問題を起こすのを、私たちは目の当たりにした。アプトスがこの点に関して、適切な解決策を見出したかどうか、誰にも分からない。

自らのベンチャーファンド、ドラゴンフライ・キャピタル(Dragonfly Capital)を通じてアプトスに投資したハシーブ・クレシ(Haseeb Qureshi)氏の言葉を紹介しよう。

「新しいレイヤー1への投資は(中略)、よりスケーラブルなオペレーティングシステムを開発するということが主眼だ。この旅はまだ始まったばかりだろう?スマートコントラクトブロックチェーンは、7年ほど前にイーサリアムが誕生して以来存在しているが、まだ完成してはいない。これらのシステムはあまりに未発達で、性能を高める方法をリアルタイムで学んでいるところだ。

私が初めてベンチャーキャピタリストになった時、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)がそもそも可能なのかという議論が行われていたことを覚えている。いまや私たちは、最大級のブロックチェーンがPoSへ移行を完了させた世界にいるのだ。取引を並列で処理したり、一般的な演算を並列で実行したりといった点で、私たちは多くのことを学んできた。これらは、ソラナやニア、ポリゴンやアバランチが成功させてきたことだ。

アプトスを支援することにワクワクしている大きな理由の1つは、とても分かりやすいものである。ブロックチェーンの進化の新たなる一歩だからだ。だからと言って、アプトスが勝者になると確証を持っているわけではない。しかし、彼らの取り組みが重要なのは分かっている」

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:homas Neveu / Shutterstock.com
|原文:In Defense of Aptos, Crypto’s Punchline This Week

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