バイナンス、独占的になり過ぎているか?

FTXとCoinbase(コインベース)の方がよく知られているかもしれないが、Binance(バイナンス)の1日の取引高は440億ドル(約6億5000万円)で他を引き離している。

またスポット(現物)市場とデリバティブ市場の全取引件数の約52%、全取引高の約26%を占めている。

出典:Nomics

さらにBinanceは単なる暗号資産(仮想通貨)取引所にとどまらない。

バリデーターのほとんどをコントロールしているブロックチェーン(BNB Chain)、優先的に使用されるステーブルコイン(BUSD)を持ち、Uniswap DAOでは大きなガバナンスを占め、低迷する暗号資産マイニング業界にとって最後の拠り所(融資元)となっている。

Binanceは支配的になりすぎているだろうか?

もちろん、他の取引所も中核事業を超えるプロダクトや取り組みを進めている。サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)氏が率いるFTXは、Binanceよりも1日の取引高は小さいが、今年、破綻の恐れが広がる暗号資産業界に資金を提供し、その影響力は拡大している。

リバタリアンのDNA

暗号資産業界にはリバタリアン(自由主義者)のDNAが流れている。これは決して悪いことではない。暗号資産が1兆ドル(約150兆円)規模の資産クラスになったことで、各国の規制当局は新しいテクノロジーを否定して規制によって排除するのではなく、検証して受け入れなければならないと認識した。

しかし同時に、トレーディングビジネスのような規模の経済が働く業界では、独占が生まれる傾向がある。暗号資産業界のM&Aは弱気相場で加速すると予想されている。

リバタリアンは、当局が巨大企業を解体することは、市場ダイナミズムの「創造的破壊」を認識できていないと主張するだろう。市場は独占を是正する。例えば、マイクロソフトは今、1990年代後半の独占禁止法裁判の頃のような支配的な力を持たない。

Web2の世界では、規制当局の独占禁止法裁判はあまりうまく進んでいない。Meta(メタ:旧フェイスブック)に対する連邦取引委員会と多くの州による訴訟は一度棄却された。その結果、独占禁止法の改正を求める声があがっているが、議会が着手するまでには何年もかかるだろう。

Binanceは独占的か?

暗号資産でも同じことが起こるだろうか? Binanceへの挑戦者は現れるだろうか?

Binanceが、ユーザーが保有する3つのステーブルコイン(USDC、USDP、TUSD)をBUSD(バイナンスUSD)に変換すると発表したとき、USDCを発行するCircle(サークル)はさほど動揺を見せなかった。CircleのCEO、ジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は、アメリカではUSDT(テザー)からのシフトが加速するため、USDCが勝者となるだろうとツイートした。

ただ、「世界最大級の取引所におけるドル流動性を最適化することは同社に利益をもたらすだろうが、この動きは市場行為に関する潜在的な問題を引き起こす」とCircleは述べたと伝えられた。

独占禁止法違反的な要素が示されているが、現状、BUSDと競合するUSDCは受益者でもあるので、立件されることはないだろう。

だが、Binanceが保有する個別の事業体をまとめ、すべての競合他社を特定の市場から不当に締め出すようなことをしたらどうなるだろう?

その時こそ、Binanceが独占的になりすぎているか否かを再検討する時だろう。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Binanceのチャンポン・ジャオCEO(出典:Shutterstock/CoinDesk)
|原文:First Mover Asia: Is Binance Becoming Too Dominant?