バンクマン-フリード氏の起訴内容を理解する【コラム】

バンクマン-フリード氏の起訴内容を理解する【コラム】

FTXとアラメダ・リサーチ(Alameda Research)の創業者サム・バンクマン-フリード氏がバハマで逮捕されたことが報じられた時、私は飛行機に搭乗するところだった。詐欺が行われていたことを示す気がかりなサインが毎日のように浮上し、彼の深刻で多方面にわたる犯罪はすでに数週間前から明らかだった。

新事実が次々と発覚していったにもかかわらず、バンクマン-フリード氏はたびたびメディアに登場し、自分を悪質だったのではなく、ただ無能であったかのように見せることによって、法律や規制の分野からのお咎めを軽いものにすることに成功するのではないかとの懸念があった。

見当違いの少数の人たちは、バンクマン-フリード氏に同情的なコメントをしていたほどだ。そのため、少しでも良識のある人たちは歯がゆい思いをし、愚か者や詐欺師たちがストーリーをコントロールして、ここ最近では最大、あるいは史上最大の犯罪者の1人が報いを受けることを免れたりしないよう願っていた。

野心的で計算高い犯罪者

とりあえず我々は安堵のため息をつくことができそうだ。ここ2日間の起訴内容からは、アメリカ政府がバンクマン-フリード氏をいくつかの間違った投資をしたテック界の神童ではなく、野心的で計算高い犯罪者として扱っていることが明らかになっている。

SEC(証券取引委員会)、CFTC(商品先物取引委員会)、そして最も重要な司法省の3つの当局から、極めて重い民事上、刑事上の起訴が行われている。

起訴内容は包括的なもので、そこに示された見解に曖昧さはない。どの当局もバンクマン-フリード氏が歴史上最も手の込んだ詐欺に匹敵するような規模で、故意に、しかもかなりの計画性を持って詐欺を行ったと主張している。

FTXはエンロンだけでなく、1860〜70年代のフランスの銀行クレディ・モビリエのスキャンダルや、1720年代の南海泡沫事件と並んで記憶されることになるだろう。

バンクマン-フリード氏は暗号資産や金融の天才ではなかった。金融犯罪の才を持った愚か者だった。一生、刑務所から出られない可能性もある。

SECとCFTCの起訴内容

3つの当局の管轄に基づいて、起訴内容は3つに分けられている。

SECは証券を担当し、その告訴内容は顧客よりも株式投資家に対する詐欺に重点が置かれている。ほぼ間違いなく多額の罰金を課され、おそらく金融業界から一生追放という結果になりそうだ。

SECは「バンクマン-フリード氏が、FTX顧客資産のアラメダ・リサーチへの非公開の移動、(中略)FTXプラットフォームでアラメダに与えられていた秘密の特別待遇、FTX関連のトークンなどアラメダが大量に保有する、価値が吊り上げられた流動性のない資産にFTXがさらされていたことに起因する非公開のリスクをFTXの投資家から隠すために、何年にもわたって詐欺を働いた」と主張している。

CFTCは基本的に市場構造を監督しており、その起訴内容はバンクマン-フリード氏の犯罪の中核に重点を置いている。FTXとアラメダの間での顧客資産の混同だ。こちらも主に罰金につながる民事的な起訴となる。

司法省による刑事起訴

しかし我々が本当に気にかけているのは司法省による刑事起訴の方だ。詐欺、共謀、マネーロンダリングが8件の容疑のうちの3つを占めるという驚くほど幅広く深刻なものだ。

捜査の進展に伴って検事が具体的な主張を組み立てる余地を残すために起訴状は意図的に曖昧なものとなっているようだ。

曖昧さも一因となって、バンクマン-フリード氏に課される懲役の長さについての予想はさまざま。しかし、刑事起訴が複数行われたことで、少なくとも理論的には終身刑になる可能性もあるとのこれまでの予想は肯定されている。

司法取引を持ちかけられ、応じた場合には、刑罰が軽くなる可能性もあるが、そうした取引でもおそらく、かなり長く服役することになるだろう。

司法取引の可能性

司法取引の可能性は通常、非常に大きいが、2つの否定的要素がある。まず、バンクマン-フリード氏は自ら作り上げた妄想の中にいるように見えること。具体的に言うと、何も悪いことはしていないと信じているようだ。そうなると司法取引ではなく、陪審裁判を選ぶかもしれない。私としては、そちらの方を見てみたい。

しかしそもそも、司法省が取引を持ちかける保証はない。非常に深刻な犯罪でも司法取引はよくあるのだが、FTXをめぐる国民の怒りは激しく、バイデン政権はその怒りをなだめるために裁判を選ぶ可能性もある。

多くの人の予測通り、FTXがアメリカではなくバハマに拠点を置いていたことは、バンクマン-フリード氏を守ることにはほとんど役立たなかったようだ。例えば司法省による刑事起訴は、FTXの財政状況についての誤った情報を含む、9月18日付けの投資家へのEメールに基づいている。Eメールにはおそらく、すでに経営陣によって資産が搾り取られていたのに、FTXの経営は順調と書かれていたのだろう。

こうして、バンクマン-フリード氏とその詐欺帝国の驚くべき凋落は、よりゆっくりと、より整然とした段階へと進んでいく。もっと恐ろしい新事実も出てくるだろう。

ここからの道筋はおおむね決まっており、バンクマン-フリード氏にとっては楽しい結末にはならないだろう。あなたがこの記事を読んでいる時、彼は劣悪な環境のバハマの刑務所にいて、アメリカの警備の厳重な施設への迅速な送還を望んでいるだろう。裁判に臨むか、司法取引に応じるまで、十分な保護を受けられるはずだ。

元天才青年よ、さようなら。大きな賭けに象徴される人生の中で、彼は何度も何度も、間違った賭けをしてきた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:バンクマン-フリード氏(Nikhilesh De/CoinDesk)
|原文:Understanding the Charges Brought Against Sam Bankman-Fried

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