【デジタル証券フォーラム2022】企業の枠を超えた共創で新市場拡大へ

デジタル有価証券「セキュリティトークン」が投資の世界に何をもたらすのか。資産のデジタル化で今後どんな変化が訪れるのか。三菱UFJ信託銀行デジタルアセット事業室の齊藤達哉氏に、セキュリティトークンのこれからについて聞いた。

三菱UFJ信託銀行
プロダクトマネージャー
齊藤 達哉氏

2010年三菱UFJ信託銀行入社。16年「FinTech推進室」設立後、1人目の専任 担当としてFinTech戦略を企画・推進。情報銀行基盤「Dprime」、デジタルアセット基盤「Progmat」などを立ち上げる。デジタルアセット事業推進のほか、新たなビジネスの企画にも従事。特許登録6件。


パブリックに開かれたエコシステム目指す

三菱UFJ信託銀行では、2019年にデジタルアセット基盤Progmat(プログマ)を発表し、21年に日本初の不動産セキュリティトークン(ST)の公募を開始しています。また並行してデジタルアセット共創コンソーシアムを運営し、業界横断的にデジタルアセット全般の迅速な社会実装を目指しています。

ProgmatはSTだけでなく、会員証や優待的な使い方ができるユーティリティトークン(UT)、非代替性トークン(NFT)や暗号資産などとも決済可能なステーブルコイン(SC)など、さまざまな「トークン」をブロックチェーンでつなぐことができます。オープンかつ分権的なインフラにより、あらゆる価値のデジタル化と、多くの企業がネットワークでつながることで、新たな市場・体験を創出することが可能です。

ブロックチェーン技術を使う以上、囲い込むのではなく、パブリックに開かれた新しいエコシステムを共創すべきです。それが資本グループを超えた企業の参画を促し、摩擦のない、投資家フレンドリーな市場の拡大につながると考えています。

「トークン」意識せず「体験」で感動を

今後、ST普及の鍵になるのは日常チャネルへの浸透です。仲介業者の制約なく、小口化されたSTを発行し、投資というよりも「応援」するようなスタンスで個人がデジタルアセットと日常的に関わりを持つということ。例えば航空機や列車などのSTであれば、利回りとは別にオーナー感、ステータス感が得られる体験を提供することも可能です。温泉旅館のSTを購入した“1口オーナー”に、特別体験を提供するUTを付与する方法で顧客エンゲージメントを強化する例などもすでに実現しています。

流動性の課題は、23年度に大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)がST流通市場を開設し、Progmatと連携して「T + 0」(約定同時)決済を可能とする見込みであるなど、解決は時間の問題です。スキームを制約している法律面の課題も既に手当てがなされており、不動産以外のトークン化案件も続々登場すると予想されます。

「トークン」はインフラ技術の革新であり、本来目に見えないものです。多くの人が「トークン」を意識する必要なく、投資と利用が一体化した摩擦レスの「体験」によって、感動できる社会の実現を目指しています。Progmatが“いつのまにか”浸透していることで、あらゆる価値をデジタル化していきます。

|2022年12月21日付け日本経済新聞朝刊「デジタル証券フォーラム2022広告特集」より転載
|写真:多田圭佑