保釈金330億円は誤解──バンクマン-フリードCEOは書類にサインしただけ【オピニオン】

FTXのサム・バンクマン-フリード前CEOは12月22日、保釈されて実質的に自由の身になった。世界中のメディアは、前代未聞の「2億5000万ドル(約330億円)」という巨額の保釈金を支払ったと報じた。法廷でニコラス・ルース(Nicholas Roos)連邦検事補も「史上最大の」公判前保釈金と述べた。

だが、この「2億5000万ドル」には、数字とは違う事実があることが判明した。実際、保釈金はかなり少ない。

一般的な連邦事件では、保釈保証人は保釈金の10〜15%を現金で請求する。バンクマン-フリード前CEOの天文学的な保釈金の場合、15%で3750万ドルとなる。

だがバンクマン-フリード前CEOは3750万ドルを支払ったわけではない。実は現金をまったく支払っていない。ゼロだ。

自宅の価値は5億円強

保釈にはもう1つ、方法がある。被告人、あるいは被告人の代理人が保釈金の全額を担保に入れることだ。その場合は被告が法廷に現れなければ、担保が没収される。つまり、バンクマン-フリード前CEOの場合、保釈のためには2億5000万ドル相当の財産を担保に入れる必要があった。しかし、それも行われていない。

関連記事:約330億円で保釈、バンクマン-フリード元CEO──両親が自宅を担保に

バンクマン-フリード前CEOの両親は、前CEOが軟禁されているカリフォルニア州パロアルトにある自宅を担保にしたが、その価値は400万ドル(約5億3000万円)と伝えられている。そして、これが2億5000万ドルの保釈金の担保のすべてだ。それ以外の担保は差し出されていないし、今後、予定もない。

では、「2億5000万ドル」という数字はどこから出てきたのだろう?

今回、バンクマン-フリード前CEOは、従来の保釈金を要求されなかった。その代わり、個人誓約保証金(personal recognizance bond)と呼ばれるもので身柄を解放された。個人誓約保証金の書類には、バンクマン-フリード前CEOが約束の日時に裁判所に出廷しなかった場合、裁判所に2億5000万ドルを支払うという約束が記されている。

つまり、バンクマン-フリード前CEOは、引き渡し条項のない他国に逃亡したら裁判所に2億5000万ドルを支払うという意味の書類に署名して、実質的に自由の身となって法廷から出て行った。

バハマの方がアメリカより金融事件の保釈条件が厳しかったとは、誰が想像できただろう。

James Murphy(ジェームズ・マーフィー)氏:法律事務所Murphy & McGonigle(マーフィー&マクゴニグル)の創業者兼会長。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:FTXの前CEOサム・バンクマン-フリード氏(Danny Nelson/CoinDesk)
|原文:Bankman-Fried’s Incredible Shrinking ‘$250 Million Bond’