2023年、ReFiがメインストリームに【オピニオン】

DeFi(分散型金融)は2020年夏に大きな盛り上がりを見せ、直近の強気相場や、それ以降の多くの投機的な行動の代名詞となった。DeFiが誕生した理由の1つは、銀行が透明性があり、包括的な金融システムを提供できなかったことに対処するためだ。

ReFi(再生金融)は、経済をより包括的で持続可能な形で再構築するために暗号資産のテクノロジーや考え方を活用するもの。私は2023年、特に暗号資産と気候変動が交わる分野において、ReFiはDeFiよりも熱いものになると考えている。

暗号資産と気候変動

弱気相場やいくつかのスキャンダル以外では、イーサリアムブロックチェーンの「Merge(マージ)」が2022年の話題を独占した。マージがもたらした成果の中で、最もよく議論され、分析されたものの1つは、新しいプルーフ・オブ・ステーク(PoS)コンセンサスメカニズムによる二酸化炭素排出量の劇的な削減。とりわけ、エネルギー負荷の高いビットコインブロックチェーンのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)メカニズムとは対照的だ。

だが、暗号資産と気候変動の関係で言えば、これは氷山の一角に過ぎない。

2023年、低炭素エコノミーに向けた前進を加速するために暗号資産を活用することに重点をおいたエキサイティングなWeb3プロジェクトがいくつも登場するだろう。

また一方で、そのようなプロジェクトを加速するために、ReFiに特化した新しいベンチャーファンドも立ち上げられるはずだ。

ReFiを呼び込むブロックチェーン

低炭素エコノミーを促進し、サポートすることに重点を置き、さらにはReFiプロジェクトを自らのブロックチェーンに呼び込むために、エコシステムでの資金提供を行うレイヤー1、レイヤー2ブロックチェーンは驚くほど存在している。

例えば、コスモス(Cosmos)、ヘデラ(Hedera)、Topl、ポリゴン(Polygon)、セロ(Celo)、ニア(Near)、アルゴランド(Algorand)などだ。

だが少なくとも私にとってより興味深いことは、これらのブロックチェーン上で展開される、業界、人間、地球に、より直接的な影響を与えるようなプロジェクトだ。

気候変動をテーマにしたReFiは、2700億ドル規模のグローバル・カーボンオフセット市場に一層の透明性をもたらすだろう。カーボンオフセットは、二酸化炭素排出者やオフセットの購入者による主張の信頼性が長く疑問視されてきた。さらなるアカウンタビリティ(説明責任)をもたらす規格も導入されたが、一般の人たちの間にはシンプルで、素直な懐疑心が残っている。

さまざまなReFiプロジェクト

例えば、コスモスを基盤としたRegen Networkは、土地所有者がオンチェーンでのデジタル・カーボンオフセットを実現することをサポートしている。

Klima DAOは、カーボンオフセットの仕組みをトークン化。当記事執筆時点、大気中から1700万トン以上の二酸化炭素を削減することに役立っている。

私にとって、さらにエキサイティングなことは、ベースレイヤーブロックチェーンやカーボンオフセットにとどまらないReFiが誕生し始めていることだ。あらゆる業界、消費者の行為は気候への何らかの影響を伴うが、そうした問題に対処するために暗号資産を活用するReFiプロジェクトが登場している。

カーボンオフセットをオンチェーンのものとすることと同様に、Reneumではブロックチェーンテクノロジーを活用して、再生可能エネルギー・クレジット(REC)の分野にさらなる透明性をもたらしている。

Powerledgerは2016年の誕生以来、ピア・ツー・ピアの分散型再生可能エネルギー取引を手がけている。

エンドユーザーレベルでは、Move-to-earn(M2E)プロジェクトなど、低炭素ライフスタイルの導入をゲームの形で促進する動きが出てくるだろうと私は楽観視している。

M2Eと二酸化炭素削減、そして個人向けの透明性を備えたトークン化されたカーボンオフセットを組み合わせることが、2023年には実現するかもしれない。

ベンチャーファンドと国際的取り組み

世界経済フォーラム(WEF)は先ごろ、ReFiユースケースの普及を加速させることに重点を置いた「Crypto Sustainability Coalition(暗号資産サステナビリティ同盟)」を立ち上げた。イーロン・マスク氏が立ち上げた、気候変動に関するイノベーションに報酬を与える「X Prize」もReFi分野に手を広げている。

ここ数カ月で、Cerulean Ventures、AeraForce DAO、ReFi Venture Studio、Allegory、a100x、Vanagon Ventures、Possible Ventures、Draft Venturesなど、ReFi分野に重点を置いた複数の新しいベンチャーファンドやDAO(自律分散型組織)が生まれている。

メインストリームのベンチャーキャピタリストがESG(環境・社会・ガバナンス)指標をさらに導入し、サステナビリティにフォーカスしたファンドを立ち上げていることと同じように、2023年には、メインストリームのインパクトファンドや暗号資産ファンドが、ReFiをテーマにしたファンドを手がけるようになるだろう。

リアルな世界への影響

2023年が始まったが、私たちはまだ弱気相場の真っ只中にあり、短期的に強気状況に向かう希望はほとんどない。

だが2023年は、ReFiがメインストリームからさらに注目を浴びて普及し、暗号資産がリアルな世界に確かな影響をもたらすことを証明すると私は確信している。

そして、2022年に広がってしまった詐欺や不正のストーリーは、サステナブルで低炭素なエコノミーに向けた加速とポジティブな変化のためのパワーに変わっていく。

ボイド・コーエン(Boyd Cohen)氏:環境に優しい移動手段を選んだユーザーが報酬をもらえる「Move-to-Earn(体を動かして、遊びながら稼ぐ)」ゲームWheelCoinを手がけたIomobの共同創業者兼CEO。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:ReFi Is Going Mainstream