ReFi:Web3の次なるステップ【オピニオン】

ReFi:Web3の次なるステップ【オピニオン】

「ディジェネレット(degenerate)」の短縮版「ディジェン(degen)」は、暗号資産コミュニティで親しまれている言葉。ハイリスク・ハイリターンな暗号資産取引の特徴と、全財産を賭けてしまうような恐れを知らない暗号資産トレーダーを表す言葉となっている。ウォール街が暗号資産のボラティリティとネズミ講的ダイナミスクを軽蔑しているとしても、暗号資産まわりでは名誉の証として受け入れている。

しかし、こうした快楽主義的メンタリティを暗号資産の定義のデフォルトとしてしまうことは間違い。ジョークとして作られたドージコイン(DOGE)が時価総額トップ10にランクインしている状態では、Web3はジョークのように見えてしまう。確かに面白い。そして、自らを笑い飛ばすことができることは重要だ。

しかし我々は今、ブロックチェーンの革命的な可能性をジョークのオチにしてしまうような危機に瀕している。ボラティリティの大きな価格やミーム的な出来事の下で、Web3は銀行サービスを受けられない人に同様のサービスを提供し、新しい経済価値を解き放ち、より公平な未来を築くポテンシャルを秘めている、変革を生み出すパワーだ。

リファイ(ReFi)

経済学者で哲学者のジョン・フラートン(John Fullerton)氏は2015年に「Regenerative Capitalism(リジェネラティブ・キャピタリズム)」と題した論文で、失われたものを再生し、残っているものを保護し、長期的な経済的繁栄を確実にすることによって、コミュニティに対する価値を最大化するような経済デザインを「regenerative economics(リジェネラティブ・エコノミクス)」と表現した。

つまり、従来の資本主義ではしばしば無視されるようなマイナスの外部性を考慮に入れた経済の考え方だ。環境破壊、社会的不平等、金融の不安定などを含む。

フラートン氏は暗号資産(仮想通貨)について議論していたわけではないが、同じ原則はDeFi(分散型金融)を考えるときにも適応できる。DeFiは最も単純に言えば、金融サービスへのアクセスを民主化し、自らの立場を巧みに利用する仲介者を排除することがポイントだ。

Regenerative Economy(再生経済のコンセプトはまだ初期段階にあるが、ReFiの原則を使って前向きな変化を生み出そうとしているWeb3プロジェクトがすでにいくつか登場してきている。

トークンとNFTを使ったカーボントレーディング

我々はここ数十年で、温室効果ガス排出やプラスチック汚染の壊滅的な影響を目の当たりにしてきた。ここまでくると、現代の人間の活動と気候変動の関連を疑う余地はほとんどない。しかし人間が引き起こしたことは、人間がもとに戻すことができるかもしれない。

工業化のダメージを緩和するために、さまざまなカーボントレーディングの仕組みが生み出されている。これらの仕組みを使い、企業は大気中から二酸化炭素を除去するプロジェクトに投資することで自らの排出を相殺することができる。

ほとんどのカーボントレーディングの仕組みが抱えている問題は、腐敗と透明性の欠如だ。ここで、Web3が役に立つ。

トークンやNFTを活用することで、透明性がより高く、悪用されにくいカーボントレーディングの分散型システムを構築できる。Web3ネイティブ企業はブロックチェーン技術を使ってカーボンクレジットをトークン化し、パブリックチェーンで利用できるようにすることで、企業の責任あるカーボンオフセットを推進しようとしている。

ブロックチェーンの活用によって、カーボンクレジットを追跡・検証することが一段と簡単になるだけでなく、より多くの参加者に市場を開くこともできる。より多くの企業がカーボンオフセットを迫られることに伴って、カーボンクレジットトークンに対する需要は高まり、カーボン削減プロジェクトへの投資も増えるだろう。

NFTを使った文化遺産保護

世界中の文化遺産が、気候変動、戦争、経済的不平等から危機にさらされている。主に観光が牽引する文化交流のエコノミクスはしばしば、関連するコミュニティには不利なもので、仲介業者が価値のほとんどを吸い取ってしまう結果になりがちだ。世界の文化遺産を未来の世代のために保護するためにデジタル版が必要だ。

有形・無形の文化遺産の変更不可能で検証可能な記録を作ることに、NFTが活用できる。

ブロックチェーンは文化の要素の記録を簡単にするだけでなく、人々が芸術や知恵を世界中と共有することも可能にする。NFTは慈善団体や現地コミュニティにとっての強力な資金調達ツールであり、検閲できない流通市場(多くは公平で事前にプログラムされたロイヤリティ分配の仕組みを持つ)があれば、コミュニティは暗号資産の時代に文化交流から恩恵を受け続けることができる。

ご承知のように、市場は商品化と均質化によって、世界の興味深く、ユニークな文化の多くを破壊している。しかし暗号資産が支えるより効率的な市場は、そうしたトレンドを逆転できるかもしれない。ピア・ツー・ピアの金融は、取引からの利益をコミュニティに直接還元できる。

ReFi(リファイ)は、文化的遺産の保護に取り組むコミュニティとアーティストに直接恩恵をもたらす収入と雇用を生み出し、この先何世代にもわたって遺産を保護するための新しい資金調達手段だ。

ReFiの未来

ReFiの認知度が高まり、多くのプロジェクトがReFiを採用するにつれて、この革新的なテクノロジーの用途はますます拡大していくだろう。

ディスラプション(創造的破壊)の機が熟している分野の1つがインパクト投資。インパクト投資とは、金銭的なリターンと、社会的あるいは環境的な効果をどちらも生み出そうとする投資を指す。

ReFiを使えば、世界にメリットをもたらすプロジェクトに投資する「インパクトDAO」を作ることができる。そうしたDAO(自律分散型組織)は、再生可能エネルギープロジェクトから、安価な住宅プロジェクトまで、あらゆるものの資金調達に活用できる。

Web3は、新しいレベルの透明性と説明責任をもたらし、資金をすべての関係者に公平に分配することを実現する。

ReFiが大きな効果をもたらすことのできるもう1つの分野がコミュニティガバナンス。多くのコミュニティでは、コミュニティ全体からの意見抜きに、少数の関係者によって決断が下されることが多い。

ReFiでは、コミュニティの運営方法について、全員が意見を表明することができる。民主的で効果的な意思決定、そして社会的な結果の改善が予想できる。

暗号資産の世界はしばしば、詐欺や素早くリッチになるための策略にまみれた未開の地と考えられている。Web3がメインストリームに普及するなかで、スキルとテクノロジーを使って現状を打破し、より良い公平な世界を作ることで、そうしたイメージを変えるチャンスが私たちにはある。そうしたディジェンこそが勝利をおさめることを願っている。

リンダ・アダミ(Linda Adami)氏は、Web3プラットフォームのクォンタム・テンプル(Quantum Tmple)の創業者兼CEO。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Next Step in the Evolution of Web3: Regenerative Finance

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