ビットコインマイニング:暗号資産の未来を占う?【コラム】

元CoinDeskのブレイディ・デール(Brady Dale)氏は先週、「Crypto will be fine(暗号資産は大丈夫)」と題された記事の中で、暗号資産は2022年を通じて苦境に見舞われたが、一部の指標は強気のままだったことを指摘した。

特に、ビットコインネットワークの安全性を保つことに費やされるコンピューターの演算能力を示すハッシュレートは安定していた。

「仮に業界が終わりを迎えようとしているなら、マイナーは徐々に減っていくはず。しかし、そうなっていない」とデール氏は指摘。実際、Blockchain.comのデータによると、ビットコインのハッシュレートは2022年11月、史上最高を記録した。

ビットコインのハッシュレートはここ12カ月間、ビットコイン(BTC)がその価値を3分の2以上も失ったにもかかわらず、一貫して上昇を続けた。多くの人にとって、これはビットコインネットワークの長期的成功に対する信頼のサインとなった。

苦難の2022年

もちろん、この1つの指標だけですべてを物語っているわけではない。コンパス・マイニング(Compass Mining)のザック・ボエル(Zack Voell)氏が指摘するとおり、ビットコインマイニング業界は2022年、大きなダメージを受けた。

「マイナーが苦しんだ、すべての辛いこと」をリストにしたボエル氏は、大手マイニング企業の幹部で辞任した人は少なくとも4人、マイニング企業に対して起こされた訴訟は6件あったと指摘。さらに上場しているマイニング企業の株価も低迷した。

さらに、コア・サイエンティフィック(Core Scientific)とコンピュート・ノース(Compute North)が破産を申請。暗号資産レンディングを手がけ、どちらも破産申請を行ったセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)とブロックファイ(BlockFi)もかなりの規模のマイニング部門を抱えていたが、事業の再編成を強いられる可能性は高い。

マラソン・デジタル(Marathon Digital)とアルゴ・ブロックチェーン(Argo Blockchain)も破産申請のリスクを抱えている。

状況は各企業によって異なるが、問題の主な原因はビットコイン価格の低迷と、財務管理のお粗末さにある。多くのマイニング企業はここ数年、マイニングしたビットコインを保有したまま、負債や投資によって急速な成長戦略を追求してきた。

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ビットコイン価格が10万ドル(約1300万円)に達すると予測し、「多くのマイナーが過剰に自信を持って事業を運営していた」と暗号資産マイニングとステーキングを手がけるファウンドリー(Foundry)のマイニング責任者ジュリ・ブロヴィック(Juri Bulovic)氏は語った。

ビットコイン価格が上昇し、資金調達コストが安価だった頃、状況は順調だったが、マクロ経済の不透明感と利上げのなか、これら2つの要素は変化した。

2023年の展望

すでに外部の企業が活気を失ったマイニング業界に介入し、損失を補填したり、必要な資本を注入している。

ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)は1億ドルでアルゴを救済し、暗号資産取引所バイナンス(Binance)はマイナー向けのファンドを設立。米投資大手ブラックロック(BlackRock)も先日、破産申請を行ったコア・サイエンティフィックに1700万ドル(約22億円)の貸付を行った。

マイニング業界は危険な状況にあるが、ビットコイン価格が6万9000ドル付近まで上昇した2021年の好調時に注文、配備された最先端のマイニング機器に支えられていることもあり、業界そのものが消滅してしまうことはないだろう。

試練に耐えた企業の財務状況はしっかりしており、原油などの他のコモディティ市場と同じように、マイニングのリスクをマイナーがヘッジできるデリバティブオプションなど、新しい資金調達の方法も登場している。

さらなる破綻もあり得るし、収益性の低いマイナーは事業を停止するかもしれない。しかし、マイニング業界が世界中に広がっていること、熱心な投資家や支持者の存在、エネルギー業界におけるマイニングの重要性が高まっていることを考慮すれば、マイニング業界は生き残るだろう。むしろ、最近のトラブルを経て、より良いものになるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Eliza Gkritsi/CoinDesk
|原文:Bitcoin Mining: A Positive or Negative Indicator for the Future of Crypto?