暗号資産マーケティングには変化が必要──インフルエンサーに説明責任を【オピニオン】

暗号資産マーケティングには変化が必要──インフルエンサーに説明責任を【オピニオン】

ケンダル・ジェンナーをはじめとするトップモデルを広告塔にした音楽フェス「ファイア・フェスティバル(Fyre Festival)」を目当てに、ミレニアル世代の若者たちは2017年、バハマに押し寄せた。

その後の展開は、多くの人が知っての通り。地元ビジネスは大きな痛手を受け、食事には悲惨なチーズサンドイッチが提供され、騙された参加者たちは、贅沢なライフスタイルを送るためにチケット代金を使った主催者を相手取って集団訴訟を起こした。この騒動の核となったことがある。「インフルエンサー・マーケティング」だ。

新しいフェスのコンセプトを適切にチェックせず、フェスとの金銭関係を明らかにしなかったセレブたちは、捜査機関の訪問を受け、そのツケを払わされた。例えば、ケンダル・ジェナーは、フェスの宣伝に関わったとして、9万ドル(約1200万円)の支払いを余儀なくされた。

熱帯の楽園からセレブの関与まで、ファイア・フェスティバルはFTXの破綻や、ここ数カ月の他のよく知られた暗号資産関連のスキャンダルに似ている。

セレブによる宣伝

暗号資産をめぐる規制の明確さの欠如、さらには伝統的金融機関が直面しているコンプライアンスに関する監視も欠如しているにも関わらず、米アメリカンフットボールリーグ・NFTのスター選手、トム・ブレイディ氏はFTXにお墨付きを与えた。その間にもサム・バンクマン-フリード氏率いるチームは、何十億ドルもの損失を出しつつ、バハマのリゾートにあるバーへの支払いは5万5000ドル(約720万円)も滞っていた。

ケンダル・ジェナーの異父姉であるキム・カーダシアンも規制当局の標的となり、パンプ・アンド・ダンプ(吊り上げと売り叩き)詐欺のethereumMaxを宣伝したとして、126万ドル(約1億6500万円)の罰金を支払った。さらに皮肉なことに、ファイア・フェスティバルが開催された土地は現在、NFTとして販売されている。

セレブ、そしてセレブに広告の仕事を持ってくるマネージャーたちは、製品やサービスを適切にチェックし、宣伝しているものが何なのかをしっかり理解する責任をファンやフォロワーに対して負っている。

Web3の開発者の大半は、暗号資産に投資することのリスクやDeFiアーキテクチャをひと通り理解しているが、キム・カーダシアン氏の2億2800万人のインスタグラムフォロワーが「ポートフォリオ分散」といった話題に精通している可能性は低い。フォロワーは、イーサリアムについて意見を述べたことのないような人によって、屠殺場へと連れていかれる羊のような存在だ。

残念ながら、セレブは現在の暗号資産マーケティングが抱える問題の一部に過ぎない。Web3ユーチューバー、ツイッチ(Twitch)ストリーマー、TikTokスターから構成される業界が、新型コロナウイルス感染拡大の間に誕生した。こうしたクリエーターの大半は善意で動画を投稿し、暗号資産やブロックチェーンに対する情熱をシェアしたがっているのだが、有料で宣伝をしていたり、収入を得ていることを公表せずに利益を上げている人たちもいる。

パンプ・アンド・ダンプ詐欺を行う悪人たちのいないWeb3を作り上げるためには、暗号資産マーケティングのインセンティブの仕組みを変えなければならない。

さらなるアカウンタビリティ

米連邦取引委員会はすでに、個人が宣伝報酬を公開することを義務付けているが、Web3の世界には、さらなるアカウンタビリティが必要な、実証されていないスタートアップ、価値提案、チームがあふれている。

この分野で宣伝を行う人たちは、あるブランドと手を組む選択をした理由を説明する必要がある。スキンケア製品やグッズとは異なり、暗号資産は金融市場に直接影響を与え、デリバティブなど、他の分野に波及するリスクを伴っている。

公開され、すべてのトランザクションが確認可能なブロックチェーンテクノロジーは、透明性を念頭に設計されている。このテクノロジーの良さを宣伝する人たちは、法律的にも、道徳的にも、このきわめて重要な原則に従うべきであり、業界としてもそうした人たちに説明責任を果たさせる必要がある。

暗号資産インフルエンサーのトレーディングカード (3Hunna S. Thompson/CoinDesk)

暗号資産関連のインフルエンサー、マーケター、PRパーソンは、ブロックチェーンの基盤となっているアーキテクチャーを深く掘り下げることにもっと時間を費やし、暗号資産や分散化に対する自らの考え方やスタンスを見つけ出して、手を組むプロジェクトを選ぶ際の指針とするべきだ。

まず自らを教育しなければ、他人を教育することはできない。これは自明であるべきだが、FTXやセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)の破綻を経て業界は、中核となるテクノロジーを理解、尊重することなしにブランドを騒々しく盛り立てるプロモーターを一切容赦しないポリシーを採用する必要がある。

最初の一歩として、企業やインフルエンサーは、金融市場や一般の人たちへの潜在的影響力を数値化する方法として、ソーシャルメディアでのリーチを測ることから始めるべきだ。

透明性のあるマーケティング

私が立ち上げたマーケティング企業オキシジェン(Oxygen)は、オンラインのクリエーターやブランド、関連するオンチェーンアクティビティを理解し、その正当性を検証するためにデータ分析を使うことで、Web2とWeb3のマーケティングに透明性をもたらすことをミッションとしている。

クリエーターを支援する資金調達・テクノロジープラットフォームのCreatorDAOなどの弊社のパートナーは、フォロワーを守るためにベストな宣伝方法に関するインフルエンサー教育で積極的な役割を担っている。ターゲットを明確にする方法をはっきりとさせることで、マーケティングチームはアカウンタビリティを受け入れる大切なステップを踏むことができる。

2023年の暗号資産マーケティングは間違いなく、新しい規制フレームワークの確立が中心テーマとなるだろうが、新しいカルチャーや振る舞いを採用する必要もある。暗号資産企業を一般の人たちに宣伝するセレブは、少なくともそのコンセプトがブロックチェーンエコシステムの中で、どのようなポジションを占めているのかを、プロトコルレベルからコンセンサスメカニズムに至るまで説明できる必要がある。

Web3の世界で権威を持つ人たち(ベンチャーキャピタルや創業者など)は、中央集権型の既得権益集団によるブランド連想ではなく、善意を持って企業を宣伝し、間違っているときにはそれを認め、コードの裏にあるイデオロギーに情熱を持った個人に光を当てることができる。

ネモ・ヤン(Nemo Yang)氏:Web3マーケティングプラットフォーム、オキシジェン(Oxygen)の創業者兼CEO。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像: キム・カーダシアンのトレーディングカード(3Hunna S. Thompson/CoinDesk)
|原文:Crypto Marketing Needs to Change. Let’s Make 2023 the Year for Influencer Accountability

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