セルシウスから報酬を受け取った人気インフルエンサーに批判殺到

ビットコイン(BTC)とイーサ(ETH)に特化した人気星占い師マレン・アルトマン(Maren Altman)氏が、ツイッター界で突如人気を失っている。

最近浮上した裁判関係書類によって、暗号資産レンディングを手がけるセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)から、同社が破産申請する前に、マーケティング報酬として3万ドルを受け取っていたことが明らかになったのだ。

アルトマン氏をツイッターで批判する人たちは、セルシウスがキャッシュフローの問題に苦しんでいる最中に、セルシウスに好意的なコンテンツを作ることでアルトマン氏が報酬を受け取っていたと主張。さらに、報酬の受け取りを率直に認めていなかったことを批判しているのだ。

ツイッターのフォロワーが23万7000人を超えるアルトマン氏は、星占いを織り交ぜた投資予測が人気。CoinDeskのインタビューに答えた彼女は、セルシウスから報酬を受け取っていたことは認めたが、ツイッターでの批判については「魔女狩り」だと言った。さらに、名誉毀損で訴えることなど、法的措置について弁護士と話をしていることを明らかにした。

「私の過ちはセルシウスを信頼したこと」とアルトマン氏。セルシウスの財政状況について知っていたかを尋ねると、「何も知らなかった。マーケティングキャンペーン以外については、何も知らされていなかった」と答えた。

怒りを募らせた株主や顧客にどのように返金するかについて、セルシウスは長く複雑な裁判所での手続き中。先週公表された裁判関係書類では、セルシウスのCEOアレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)氏や幹部が、同社がユーザーのアカウントを凍結し、破産申請をする直前に1700万ドルを引き出していたことが判明した。

セルシウスの破綻は、暗号資産価格の暴落につながり、業界への信頼も損なわれた。セルシウスは破綻の原因を、アルゴリズム型ステーブルコインUSTとその姉妹コインであるLUNAの暴落にあるとしている。

ここ数年、多くの暗号資産企業はインフルエンサーに報酬を支払い、自社事業の知名度を高めようとしている。

しかし、アルトマン氏が「パートナーシップ」と呼ぶ関係は、セルシウスの財政管理や彼女の契約のタイミングを問題視する関係者から、大きな反発を招いている。

広告ファッションと同じこと?

ティックトック、ツイッター、ユーチューブ、インスタグラムを合わせると180万人以上ものフォロワーを抱えるアルトマン氏は、星占いの要素を取り込んだ暗号資産トレーディングコンテンツを投稿することで、強気相場中にフォロワー数を大幅に伸ばした。

2022年3月、セルシウスとアルトマン氏はマーケティングインフルエンサー広告契約を締結。ユーチューブビデオの中でアルトマン氏は、セルシウスを暗号資産関連の本拠地として使っていると語り、セルシウスで暗号資産を買うことの容易さを強調した。

セルシウスの広告を行うアルトマン氏
出典:アルトマン氏のユーチューブチャンネル

アルトマン氏はCoinDeskとのインタビューの中で、パートナーシップは「企業のためにファッションの広告をするのと何ら変わりはない」と語った。

CoinDeskが入手したセルシウスとアルトマン氏の契約には、「ひと月に2本のユーチューブ動画中の広告と、ティックトックで2回セルシウスに言及することと引き換えに」、アルトマン氏がひと月に1万5000ドルを受け取ると記載されている。

しかし、この契約書には、セルシウスのパートナーとして、アルトマン氏が「CELトークンについて語ってはならない。過去、現在、将来的な声明、分析、どんな種類の情報のチャートもなし」とも明記されている。

「アメリカの基準で違法とされることについて話すことは許されていない。そこには、CELトークン価格の吊り上げなども含まれる」と、アルトマン氏は説明した。

アルトマン氏が投稿したセルシウス関連のユーチューブビデオでは、セルシウスから報酬を受け取っていることも明らかにされていた。

アルトマン氏が最後に、ユーチューブに有償のセルシウスの広告を投稿したのは5月24日のことである。

アルトマン氏によれば、セルシウスは2022年5月に、突如契約を解除した。再編成が理由で、クリエーターコンテンツは継続しないとの説明だった。この方針転換は、暗号資産市場が暴落したのと同じ時期だ。テラは5月に崩壊し、セルシウスは6月、「極端な市況」を理由に、資金の引き出し、スワッピング、送金を停止した。

非難の始まり

セルシウスとアルトマン氏の関係について批判が集まるようになったきっかけは、ある匿名のツイッターアカウントが、1万4500ページに及ぶセルシウスの提出書類の中から、セルシウスからアルトマン氏へ1万5000ドルの支払いが行われたことを示す書類のスクリーンショットを投稿したことだ。

一般公開されているこれらの書類には、4月21日から5月26日にかけてのセルシウスからアルトマン氏への支払いの記録が含まれていた。

その後、オンチェーンハッキングや詐欺の調査を行うツイッターアカウントZachXBTが、アルトマン氏がセルシウスからの報酬受け取りについて正直ではなかったと指摘した後に批判は激化。

マシンスキー氏とのインタビューの中で、「マシンスキー氏がCELトークンで報酬を支払ったのか?」と聞かれたアルトマン氏が「何も支払いを受けなかった」と言った部分のスクリーンショットを、ZachXBTは投稿したのだ。

5万4300人以上ものチャンネル登録者を抱える暗号資産ユーチューバーのアーロン・ベネット(Aaron Bennett)氏は、アルトマン氏が批判される理由を簡潔にまとめている。

「アーロン・ベネット:セルシウス・ネットワークがアルトマン氏にひと月に1万5000ドル支払っていたのに、彼女は報酬の受け取りを否定している」

アルトマン氏には「詐欺師」といった非難が寄せられ、彼女の会社を「ポンジスキーム」と呼ぶ人たちもいる。

アルトマン氏は10月9日付けのブログの中で、セルシウスとの有償パートナーシップを認めたが、マシンスキー氏とのインタビューは「頼まれてやったことで、報酬は受け取っていない」と語った。

ツイッター界では、アルトマン氏を擁護する声も登場している。著名暗号資産投資家のEric Wall Xは、アルトマン氏は「ソーシャルキャピタルの多くを賭けて、卑劣な会社だと判明した場合には自ら苦しむことになることも承知で、セルシウスの宣伝を行った。そして今、実際に彼女は苦しんでいる。別に特別なことではない」とツイートした。

アルトマン氏は、「私に寄せられる脅迫に含まれる悪意と狂気は誇張してもしきれないほど。(中略)知らない人に対する魔女狩りみたいなものだ。(中略)ペロトン(人気エクササイズバイクを手がける米企業)から報酬を受け取ってペロトンのエクササイズバイクの宣伝をした後に、ペロトンの株価が下がったからといって投資家から非難を受けるようなもの」と語った。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:インフルエンサーのマレン・アルトマン氏(Maren Altman)
|原文:Popular Bitcoin Astrologer’s Star Falls on Twitter Following $30K in Celsius Payments