現実資産(RWA)のトークン化が進展──伝統的金融機関の取り組みも活発化

主要金融サービス企業や大手企業の間で、Real World Asset(RWA:実世界の資産、現実資産)をブロックチェーンを使ってトークン化する動きが広まっている。ブロックチェーン業界関係者の多くは、2023年にこのトレンドがさらに加速すると楽観的だ。

株式や債券のような資産の所有権をブロックチェーン上に記録するRWAのトークン化は、ブローカーの介在なしに取引できるため、いつでも資産を売買できるという利便性をもたらす。

銀行や大手企業が参入

このコンセプトは新しいものではない。だがここ数カ月で多くの大手銀行や大手企業が活用し始めている。米銀大手のJPモルガン・チェースは11月、ポリゴン(Polygon)ブロックチェーン上で、トークン化された日本円とシンガポールドルの初取引を実施した。

その1カ月後には、暗号資産運用会社ウィズダムツリー(WisdomTree)が新たに9つのデジタルファンドを発表した。これらのファンドでは、イーサリアムもしくはステラ(Stellar)ブロックチェーンを使っている。

さらに今年2月には、香港の中央銀行が約1億ドル相当のトークン型グリーン債を発行。フランスの投資会社クレディ・アグリコル・CIB(Credit Agricole CIB)とスウェーデンの銀行SEBは、デジタル債券向けブロックチェーンベースのプラットフォーム開発で合意した。

S&Pグローバル・レーティング(S&P Global Ratings)が先日発表したレポートによれば、2022年にブロックチェーン上で流通したデジタル債券は約15億ドル(約1976億円)相当にのぼる。2021年には、わずか少数の債券しかブロックチェーン上には存在していなかった。

債券トークン化による効率性

ハイパーレジャー財団(Hyperledger Foundation)のエグゼクティブディレクター、ダニエラ・バーボサ(Daniela Barbosa)氏によれば、伝統的市場では実現できない効率性が債券のトークン化の目的だ。

「例えば伝統的な社債の発行を考えてみると、書類作業や追跡作業が数多くある」とバーボサ氏。

「資産をトークン化すれば、資産の使いやすさが高まる。スマートコントラクトプラットフォームによる自動化に対応し、重要な情報を追加することもできるからだ」と続けた。

2017年から暗号資産業界に携わっているバーボサ氏によれば、ここ数年、暗号資産業界を悩ませている一連の問題にもかかわらず、多くの企業がブロックチェーンによって実現する「ビジネスモデル」に一段と好意的になっている。

「市場で起こった問題は、ブロックチェーンテクノロジーとは無関係」(バーボサ氏)

ドイツの大手企業、シーメンス(Siemens)が2月にポリゴンで6300万ドル相当のデジタル債券を発行したのは、書類作業を減らし、「新しい市場を新しい顧客に対して」オープンにするためだったとバーボサ氏は語る。上場企業はこれまで資金調達のための債券発行に従来型の方法、つまり多くの場合はウォール街の引受会社を利用してきた。

「より多くの人がエコノミーに参加できるようにするテクノロジーやプラットフォームを構築すれば、そのエコノミーにはプラスの影響がある」とバーボサ氏は語る。

メリットとユースケース

取引所とデジタル資産エコシステムを手がけるソロジェニック(Sologenic)の共同創業者ボブ・ラス(Bob Ras)氏は、現実資産のトークン化は、部分的な所有権をより効率的に実現し、決済時間の短縮も実現する。

ラス氏によれば、ユーザーはより小口の単位に分割されたトークン化証券を低コストで取引可能になり、決済は数秒で完結する。伝統的市場の場合は一般的に、実際に株式が流動性プロバイダーから銀行やプラットフォームに移動するには48〜72時間かかるとラス氏は説明した。

トークン化債券が実現するスピードと効率性は「小規模な投資家に力を与え」、さらに「投資資産が多くない人たち」のアクセシビリティを向上させるとラス氏は指摘した。

暗号資産投資プロダクトを手がける21.coのリサーチディレクター、エリエゼル・ヌディンガ(Eliézer Ndinga)氏は、米ドル連動型ステーブルコインのテザー(USDT)は、特に通貨の価値低下や金融システムの崩壊に直面し、米ドルに対する需要が高まっている国で、RWAを支持する強力な根拠を提供したと述べた。

「送金の観点で言えば、インターネット接続があれば、eメール送信と同じようにグローバル規模でアクセスできる」

DeFiでの活用

一方、業界関係者はメイカーダオ(MakerDAO)の米国債や社債への投資、メープル・ファイナンス(Maple Finance)の伝統的金融からヒントを得た利回り戦略など、分散型金融(DeFi)におけるRWAの利用の高まりにも注視している。

ベルリンに本拠を置く暗号資産取引所スワーム(Swarm)は2月、自社DeFiプラットフォームを通じて、取引可能なトークン化された米株式と債券の取り扱いを開始した。

「これまでのところ、伝統的市場の参加者は現実資産をオンチェーンで発行、取引するための包括的で規制を遵守したソリューションを手にしていなかった」と、スワームの共同創業者ティモ・レヘス(Timo Lehes)氏は語った。

この先の展望

21.coのヌディンガ氏は、RWAのインフラは初期のインターネットの「ダイアルアップ」に相当すると説明。速度は遅く、理想的とは言えないユーザーエクスペリエンス(UX)で、テクノロジーの進展とともに改善が見込まれる。

関係者はさらに、アメリカの規制当局がトークン化資産をどのように扱うかにも注目している。好意的に捉えられた場合は、規制の明確さによって、開発がさらに進むだろう。

「私たちは今、伝統的金融と分散型金融の統合の転換期にいる」とヌディンガ氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Scott Graham/Unsplash
|原文:Real-World Tokenization Is Surging as TradFi Grows More Receptive to Blockchain