中央銀行デジタル通貨(CBDC)で真に得をするのは? 国民ではない

中央銀行デジタル通貨(CBDC)に賛成する理由を考えることは難しい。メリットがほとんどない一方で、悪用のリスクは深刻だ。

CBDC支持者は、支持運動やCBDCの契約取引を政府から取りつけることで利益を得るかもしれないが、CBDCのメリットの大半を受け取る可能性があるのは政府だ。

中央銀行制度を長年支持してきた人でも、CBDCは一般市民に対してユニークなメリットをもたらさないことを認識している。

「(CBDCが)どんな問題を解決してくれるのか説明してくれるよう、(中略)いろいろな人に聞き続けている」とミネアポリス地区連銀のニール・カシュカリ(Neel Kashkari)総裁は語り、「返ってくる答えは、ごまかしばかりだ」と続けた。

CBDC支持者は多くのメリットを挙げているが、そうしたメリットはおおむね、十分な精査に耐えられないようなものばかりだ。

覆される根拠

議論の1つを例に取ってみよう。CBDCは金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を向上させるというものだ。連邦預金保険公社(FDIC)の調査によれば、人々が銀行口座を持てない最も一般的な理由は、最低預入金額を満たす十分なお金を持たないか、プライバシーを守るためか、銀行を信頼していないというもの。CBDCはどの問題も解決できる可能性は低い。

信頼から見てみよう。CBDCは銀行を信頼しない人にとって魅力的な代替選択肢のように見えるかもしれないが、問題がある。人々は政府も信頼していない。ピューリサーチによれば、米政府への信頼は史上最低水準。ということで、信頼という論拠は使えない。

プライバシーはどうだろう? 銀行はたくさんの質問をしてくるし、顧客に複雑な手順を踏ませる。しかし、CBDCが解決策となると考えることは間違い。銀行が顧客から情報を収集するのは、1970年の銀行秘密法によって政府が銀行を捜査官の代理に任命したからだ。

プライバシーを高めるようなテクノロジーも存在するが、米連邦準備制度理事会(FRB)から欧州中央銀行(ECB)に至るまで、中央銀行関係者はすでに、匿名性は検討の対象から外れていると発言している。つまりCBDCは、銀行秘密法体制の極限となる可能性も十分にある。

そうなると残る要件は、最低預入金額のみとなる。収入水準は、より広範な経済的問題であることはひとまず脇に置いておき、CBDCは助成金を受け、最低預入金額は存在せず、手数料もゼロだと仮定しよう。

一見すると、コストの障壁という問題が解決されたように思えるかもしれないが、そうなると、背後から迫り来る、より大きな問題が前面に出てくる。通貨と金融は同じではないという問題だ。

手数料ゼロのCBDC口座によって、デジタル取引のために現金を保有する人が換金できるかもしれないが、その人にプリペイドカードを与えた状態と比べて、金融システムによりインテグレートされていることにはならない。しかもプリペイドカードの付与は、今日すぐに実行できる。そのために、すべての人が持つ可能性のある通貨を再発明する必要もない。

提案されている他のユースケースにつきまとう問題も、少し精査すれば簡単に見えてくる。単純に言って、CBDCは金融包摂をサポートするには不適切であり、決済を改善するには登場が遅過ぎ、通貨政策を前進させる可能性は低く、米ドルの世界の準備通貨としての地位を維持するための解決策にもならない。

CBDC支持者たち

ではなぜ、CBDCに賛成する人たちがいるのだろう? CBDCについて知っている人の大半は賛成していない。しかし、政府関係者、CBDC支持団体、政府の請負業者たちはまた別の話だ。

残念なことに政府は、CBDCが通貨と決済に対する自らのコントロールを強固なものにするための最高のツールの1つと認識しているようだ。バイデン大統領の元アドバイザーは以前、議会で証言し、CBDCは暗号資産を締め出す「単独で最善のステップ」だろうと語った。

欧州中央銀行のクリスティーン・ラガルド(Christine Lagarde)総裁に至っては、暗号資産が台頭するなか、中央銀行がCBDCを前に進めなければ、通貨と決済に対するコントロールを失うリスクを冒すことになると語ったほどだ。インドネシア中央銀行も、同じ主旨の発言をしている。

政府関係者だけがこのように考えているのではない。CBDC開発から利益を得ようと、民間セクターで構成される業界が登場してきた。CBDCリサーチの推奨から、CBDCテクノロジーの開発まで、莫大な利益を上げるチャンスがあることを多くの人たちが認識している。

実際、米証券取引委員会(SEC)が暗号資産に宣戦布告をしたなかでは、暗号資産テクノロジーをCBDCに応用しようと方針転換している人たちがいることも驚きではない。

政府関係者やその取り巻きたちは、CBDCの台頭から恩恵を受けるかもしれないが、悪用されれば、それ以外のすべての人たちがその代償を払うことになる。だからこそ議会は、FRBと財務省があらゆる形態のCBDCを前に進めることを禁止するべきだ。

CBDC禁止に向けた取り組みが成功を収めれば、国民はCBDCの代償を払わなくて済むだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Who Really Benefits From CBDCs? It’s Not the Public