テイラー・スウィフトが投資について教えてくれること──FTXのオファーを拒否した質問とは

FTX破綻の被害者は「広告塔」になったセレブに賠償を求めている。ラリー・デビッド、トム・ブレイディ、シャキール・オニールなどだ。だがテイラー・スウィフトはこの危機を回避した。彼女は1億ドル(約135億ドル)と伝えられたスポンサー契約のオファーに対して、基本的な質問をぶつけ、その後、恥ずかしい思いをしたり、法的な問題に直面することを避けた。

スウィフトは交渉の過程でFTXの担当者に「これら(FTXに上場されていた暗号資産)は未登録の証券ではないと言えるのか」と質問したと、セレブを訴えている訴訟の原告側弁護士アダム・モスコウィッツ(Adam Moskowitz)はWebメディア「The Block」に語った。

真偽は確認できていないが、このエピソードには学ぶべき点が多い。スウィフトが音楽の才能に加えて、聡明で鋭いビジネスウーマンであることをすでに実証されている。例えば、楽曲の原盤権を手にいれるために多大な努力を行った。

暗号資産取引所に対する規制当局の積極的な取り締まりを目の当たりにしている今、未登録の証券についてのスウィフトの質問は、驚くほど先見の明があったと言えるだろう。

ただし、未登録証券の販売がFTXを崩壊させたわけではない。FTXは昔ながらの詐欺だった。スウィフトが「御社の経営陣はユーザーの資産を提携しているヘッジファンドに秘密裏に送っていませんか?」と聞いたわけではない。

挑戦的な質問

では、最終的になにがスウィフトとFTXの交渉を決裂させたのだろう? 推測だが、よくあるシナリオとしては、スウィフトやその関係者は、FTXがこうした問題に対応する時の姿勢に満足できなかったのかもしれない。対応が混乱していたり、一貫性に欠けているなど、深い問題を抱えていそうな組織の兆候を示していたのかもしれない。

弁護士の発言とはいえ、これが実際に起きたこととは断言できない。FTXとスウィフトの交渉は2022年12月にフィナンシャル・タイムズが伝えた。内容はスウィフトがコンサートでFTXを宣伝することで、1億ドルを手にするというものだった。しかし、その天文学的な金額からFTX社内には懐疑的な見方もあったという。なおFTXはNBA「マイアミ・ヒート」のスタジアムの命名権に1億3500万ドルを支払っている。

しかし、このエピソードから得られる教訓は、投資先が抱えるリスクをすべて把握する必要はないかもしれないということ。スウィフトが正しかったのは、法律や証券についての特定の質問をすることではなく、挑戦的でクリティカルな質問をすることだった。

真に賢明な投資家は、難しい質問に対する回答のみに注目するのではなく、質問に対する対応にも注目するもの。ビジネスや投資における基本的かつ重要な評価方法だ。

少なくとも私の印象では、テイラー・スウィフトは証券取引法についての質問に対する回答に怪しい臭いを感じ取った。リスクを避けることで彼女はトラブルを回避した。

※敬称略
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:What Taylor Swift Can Teach You About Investing