ビットコインNFT、マイニングのトレンドを覆す──取引手数料がマイニング報酬を上回る

2017年以来初めて、一部のビットコイン(BTC)マイナー(マイニング事業者)では、新しいビットコインを生成する報酬よりも、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)を処理して得る収益の方が高くなっている。この冬、打撃を受けたマイニング業界にとって、歓迎すべき展開となる可能性がある。

ビットコインマイナーは、膨大なコンピューティングパワーを使って、新しいビットコインを生成すること、ネットワーク上のトランザクションを処理することの2つの方法でお金を稼いでいる。だが前者はビットコインブロックチェーンの設計上、収益性が低下している。約4年に一度、報酬が半分に減らされるいわゆる「半減期」が訪れる。現在、報酬は6.25BTCだが、来年にはまた半分になる。

つまり、マイナーの収益性は長期的には潜在的なリスクにさらされている。最終的には新しいビットコインを生成することへの報酬はきわめて小さなものになり、すべてのビットコインがマイニングされた後(おそらく100年以上後)にはなくなってしまう。

よって、トランザクション処理による収益が最近大きく伸びたことは、特に今回の「暗号資産の冬」の中でマイニング業界を襲った複数の倒産をはじめとする激痛を考えると歓迎すべきことだろう。この傾向は非常に勢いがあり、5月8日には、Luxor TechnologiesやAntPoolなどのマイニングプールが、6.25BTCのマイニング報酬よりも高い取引手数料を何度も支払っていた。

ビットコインNFT

Ordinalsが少なくとも部分的にはこの傾向の要因となっているようだ。Ordinalsは、いわゆる「ビットコインNFT」を可能にしたプロジェクトだ。

ここ数カ月のビットコインNFTの盛り上がりは「ビットコインは退屈になったと思っていたら、その先には誰もが驚くようなことが待っていたというクールな例」だとLuxor Technologiesのコンテンツ責任者コリン・ハーパー(Colin Harper)氏は語った。同氏は6.25BTCのマイニング報酬が半減されるまで、取引手数料がそれを上回ることはないと考えていた。

Glassnode

ハーパー氏によると、多くの人たちは「マイニング報酬を取引手数料が完全にリプレースするような未来を想像できず、このようなことが(実際に)起こる前はそんなことは不可能と考えていた」という。


同氏はさらに「ビットコインのブロックスペースが決済以外のユースケースを持てるかどうかを疑う人もいた」が、今は「ブロックスペースの新しい使い方があり、人々が手数料を支払うブロックスペースの使い方は、長期的にビットコインブロックチェーンにとって良いことだ」と考えていると述べた。問題は、ビットコインNFT、そしてOrdinalsに持続力があるかどうかだ。

BitInfoChartsによると、ビットコインブロックチェーンの平均取引手数料は5月に560%以上上昇し、19.20ドルを記録している。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Glassnode
|原文:Ordinals Upend Bitcoin Mining, Pushing Transaction Fees Above Mining Reward for First Time in Years