EU規制当局、大規模なステーブルコインに拒否権発動の可能性を示唆

欧州銀行監督機構(EBA)の議長は、許可不要のブロックチェーン使用が財政不健全性を招くという懸念を理由に、中央銀行は金融政策を覆す恐れがある場合は大規模なステーブルコイン発行に拒否権を行使すべきだと述べた。

EBAのホセ・マヌエル・カンパ(José Manuel Campa)議長は、今後数カ月のうちに、欧州連合(EU)の暗号資産市場規制(MiCA)を実施するための詳細な規則を定める予定だ。この画期的な枠組みでは、ステーブルコインの発行者にライセンスの取得と適切な準備金の保有を求めるとされている。

「中央銀行は、金融の安定や金融政策などの公共政策の目標に影響を与える場合、いわゆるステーブルコインの広範な導入に拒否権を持つべきだ」と、カンパ氏は5月11日にシンクタンクOMFIF(Official Monetary and Financial Institutions Forum)が主催したイベントで述べた。カンパ氏の所属する機関は、MiCAの下で主要な発行体を直接監督する責任も負うことになる。

MiCAでは、資産参照トークンと呼ばれる新しいステーブルコインの発行提案に中央銀行が介入することができる。また、トークンが1日100万件以上のトランザクションで広く使われるようになった場合、発行を停止することも義務付けられている。電子マネートークンと呼ばれる単一の法定通貨の価値に結びついたステーブルコインには、別のルールが適用される。

カンパ氏は、民間決済システムが中央銀行の貨幣を補完するように、ステーブルコインが決済手段として「さらに重要な意味を持つ」ようになる未来が見えると述べた。

また、アメリカ商品先物取引委員会の元委員長のティモシー・マサド(Timothy Massad)氏の質問に答えたカンパ氏は、アメリカの連邦準備制度理事会、連邦預金保険公社、通貨監督庁の分散型の無許可ブロックチェーン上のステーブルコインは安全でない、あるいは不健全であるとする懸念を共有しているように見えた。

カンパ氏は、EUのステーブルコイン発行者は「許可を得なければならない。プロジェクトを提示しなければならず、そのプロジェクトは、特にアメリカの規制当局が提示した懸念について評価されなければならない」と述べ、より野心的なプロジェクトについては精査が厳しくなると付け加えた。

「すべての発行体は、今後、強固な認可と監督の対象になる」とカンパ氏は述べ、これには、健全性ガバナンス、事業遂行、償還の取り決めが含まれ、大手の発行体は、準備金の「強化されたストレステスト」に直面するとしている。

MiCAは来週、各国の財務大臣から最終的な承認を受けることになっており、その規定は2024年7月頃に発効する。サークル(Circle)やアンストッパブル・ファイナンス(Unstoppable Finance)などの大手は、すでにMiCAの下でステーブルコインを発行する意向を表明している。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:欧州銀行監督機構(EBA)のホセ・マヌエル・カンパ議長(ECB/Flickr)
|原文:EU Could Veto Large Stablecoins During MiCA Approval Process, Regulator Signals