2018年にイーサリアムは証券とは思えないと述べたヒンマン氏、SEC内部からさまざまな意見が寄せられていた

2018年、米証券取引委員会(SEC)の企業財務部を率いていたウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏は当時、イーサリアム(ETH)を「規制する必要性を…見出さない」と言いたかったようだ。

6月13日、リップルラボ(Ripple Labs)は未登録証券を違法に販売してきたとするSECの訴えをめぐる裁判で、イーサリアムは証券とは思えないと述べた同氏のスピーチに関連したメールが弁護資料として公開された。

メールが公開された直後、XRP価格は急上昇した。

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メールを見ると、SEC職員たちが同氏のスピーチについて、さまざまな意見を表明していたことがわかる。

「(スピーチの草稿は)イーサリアムが証券かどうかは曖昧なままだ。証券ではないと断言したいのであれば、文言はもっと強くていい(つまり、そう言えばよい)。断定的な姿勢を取りたくなければ、一貫性を持たせるために、Bitcoin re.の開示で使ったものと同様の文言を使うことを提案する」と2018年6月12日にSECのブレット・レッドファーン(Brett Redfearn)取引・市場部長(当時)は書いている。

同氏は、そうした点をさらに強調するコメントを残し、スピーチには部分的に「イーサリアムのポジションについて、多くの混乱を生じさせる可能性があるように思える」と述べていた。

FinHubグループの現責任者、ヴァレリー・シュチェパニック(Valerie Szczepanik)氏は、2018年5月25日付のメールで、スピーチの最も初期の草案の1つと思われるものに言及し、「詳細は少ないほど良い」だろうと書いている。

「概念を紹介するもので、おそらく多くの議論を呼ぶだろうから、議論のための余地を残しておくことはよいことだと思う」

スピーチの初期バージョンは、ビットコインには触れているものの、イーサリアムにはまったく触れていない。

SECの弁護士、ローラ・ジャースリック(Laura Jarsulic)のメールは、何が証券にあたるかを判断するためのテスト、いわゆる「ハウィー・テスト(Howey Test)」のもとになった画期的な最高裁の判例「SEC 対 W. J. Howey Co.」に言及している。この事件では、将来のリターンを約束したオレンジ畑を販売したことは連邦証券法に違反するとして、SECがハウィー社を訴えた。

ジャースリック弁護士は、最高裁が「土地を買ったが投資契約を買わなかった購入者は、証券購入にあたらない」と判断した点を明確にすることを提案していた。

「裁判所は、土地とサービス契約の購入のみが証券購入にあたると判断した(土地のみを購入した人は証券購入にあたらない)」

さらに同弁護士は、トークンが確かに証券である状況もあり得ると補足している。例えば、企業が株式の代わりにトークンを発行する場合などだ。

SEC職員のメールの中には、スピーチをより前述の「ハウィー・テスト」に近づけることを指摘したものが複数あった。また、SEC職員がイーサリアム創設者のヴィタリック・ブテリン氏と面会し、イーサリアム財団の役割について議論したことも記されている。

13日、メールを公開した後、リップルラボのスチュ・アルデロティ(Stu Alderoty)最高法務責任者は「ヒンマン氏が、同氏のスピーチには法律的根拠のない、でっち上げの分析が含まれており、ハウィー・テストの要因から乖離し、規制ギャップを露呈し、市場に単なる混乱にとどまらない『より大きな混乱』を生じさせるだろうとする複数の警告を無視していたことがわかる」とツイートした。

SECはこの件に関するコメントを控えた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Hinman Emails Reveal 2018 Speech on Ether Drew Input From Multiple SEC Officials