ユニスワップCEO、DeFiの未来や規制について語る【インタビュー】

ユニスワップ・ラボ(Uniswap Labs)のヘイデン・アダムズ(Hayden Adams)CEOは2018年、イーサリアムブロックチェーンと「スマートコントラクト」と呼ばれるブロックチェーンベースのコンピュータープログラムのアイデアが定着し始めた頃にユニスワップを立ち上げた。

ユニスワップは、仲介者を使わずに暗号資産の交換を可能にする自動マーケットメーカー(AMM)をメインストリームに押し上げ、瞬く間に金融の巨人へと成長した。競合が次々と登場するなか、現在も最大の分散型取引所(DEX)であるユニスワップは、さまざまなブロックチェーンで1兆ドル(約140兆円)以上の取引を処理している。

CoinDeskのインタビューでアダムズCEOは、 ユニスワップv4(6月にユニスワップ・ラボが公開レビューのために発表したアップグレード版)は、プラットフォームをこれまで以上に分散化し、強力なものにすると述べた。また、ユニスワップのガバナンスシステムにおける権力の分散化についての懸念にも触れ、アメリカの規制当局による取り締まりの強化にも触れた。


ユニスワップv4がもたらす違い

──ユニスワップv4の計画、ビジョン、v3や他のバージョンとの違いは何か?

過去を振り返ると、プロトコルの新バージョンは、基本的にほぼ完成してから発表されるという点でほとんど製品のようなものだった。そしてそれは、当時としては意味のあることだったと思う。しかし、ユニスワップの現状を考えると、公開した形で開発し、コミュニティを招いて私たちとともに開発し、この分散型プロトコルに貢献してもらうことは本当に重要なことだ。

最初にローンチした時、ユニスワップv3は本当にパワフルなプロトコルだった。そしてv3は最終的に、自らの力を証明し、現在ではイーサリアム上でオンチェーン取引とAMMにおいて約90%のマーケットシェアを誇っている。

しかし、このプロトコルが受けた批判のなかで非常に妥当なものの1つが「発表に少し驚いている。インテグレートのための時間がなかったので、ローンチされてから開発することになった」というものだった。

今回のv4では、イーサリアムのモデルにかなり近づくことになる。イーサリアムでは、ハードフォークが起こる数カ月、あるいは半年も前に誰もがそれを知っている。イーサリアム上で開発されている多様なプロジェクトはすべて、アップグレードそのものに関するフィードバックを提供するだけでなく、その準備や開発に何カ月もかけることができる。イーサリアムのロードマップに対するフィードバック方法については、オープンなプロセスが存在する。それと同じように、ユニスワップの次のバージョンにフィードバックを提供し、コードに貢献することもできるようになるだろう。

──ユニスワップv4の最大の特徴は、機能プールを拡張する「フック」と呼ばれるものだと思う。フックというアイデアと、それがユーザーにとって何を可能にするのかについて説明してほしい。

ユニスワップのようなものを開発するプロセスでは、多くのトレードオフを行うことになる。フックは基本的に、ユニスワップ内で流動性プールがどのように機能するかをカスタマイズし、変更する方法。プールを作る人によって行われるが、誰でもプールを作成し、カスタマイズする方法を選択できる。私たちがフックで実現したかったことは、人々が自分でこのようなトレードオフを行い、自分のプールがどのように機能するかを選択できるようにすることだ。

フックは、はるかに多くの柔軟性とカスタマイズ性を提供することをポイント。それが1つの側面で、フックのもう1つの側面は、ユニスワップをもう少し表現力豊かなプラットフォームにすることだと考えている。

分散化へのアプローチ

──ユニスワップの分散化に対するアプローチについて、プラットフォームの開発方法と、誰でもプールを作成できるようなパーミッションレスなプラットフォームの運営方法の両方の点をもう少し説明してほしい。他の分散型プラットフォームのアプローチとの違いは何か?

分散化は最初から、そして今でも私たちの哲学の一部。これまでのバージョンすべてと同様にユニスワップv4もその中核はイーサリアム上で実行されるスマートコントラクトだ。これは変更不可能なスマートコントラクト。アップグレードできず、パーミッションレスでオープン。決められたことを実行する。それが核となる部分だ。

ユニスワップv4が次のレベルに引き上げる可能性があるものは、人々に多くの選択肢と柔軟性を与え、そのうえで非常に強力な開発者エコシステムを可能にする点だと思う。v3はすでに、いくつかの点でこれらを実現していたが、今回のフックでは、私たちがシステムをコントロールしていないだけでなく、プールがどのように機能すべきかを指示することすらしていない。

──a16z(暗号資産フレンドリーなVCのアンドリーセン・ホロウィッツ)のように、トークンを大量に保有する組織が存在すると、分散型ガバナンス全体が少し崩れてしまうのではないか? VCや他の大きな組織が初期のトークン配分をコントロールしたり、長期にわたってトークンを買い集めることに懸念はないか?

分散化にはさまざまな形態があると思う。しかしまず、ユニスワップにおける分散化の最も重要な側面は、誰もプロトコルをコントロールしない点にあると考えている。例えば、ガバナンス投票によって、流動性プールの資金を引き出すことはできない。分散化にはさまざまなタイプがあり、その度合いも異なる。分散化の最善の形は、ガバナンスを必要としないことだと言えるだろう。真の自動化だ。分散化の最も純粋な形は、自動化できるものは自動化し、変更不可能にできるものは変更不可能にすることだ。

分散化の2つ目の形態は経済的なもの。経済的インセンティブが生みだされることで、何かが自然に機能するかどうかという点だ。流動性プロバイダーとスワッパーが双方向のマーケットプレースに参加し、何が起こっているかを管理する必要がないという状態を想像してもらえばいい。ガバナンスの問題ではない。システムに参加する経済的インセンティブが自然に生まれる。誰でも参加でき、オープンなマーケットプレースが実現する。

取り締まりとアメリカの遅れ

──SEC(米証券取引委員会)がコインベース(Coinbase)とバイナンス(Binance)を提訴した。ユニスワップのような分散型プラットフォームにとって、SECが中央集権型プラットフォームを標的にしていることは何を意味すると考えているか。

これらの訴訟については、あまりよく知らない。一般的にDeFiや分散型プラットフォームは中央集権型とはかなり異なると思う。異なる特性があるので、私から言えることはあまりない。

個人的には、時間が経てば経つほど、中央集権的なプラットフォームよりも分散型プラットフォームが多くなるだろうと常に期待している。セルフカストディ、透明性、証明可能な支払い能力など、根本的なメリットがあるからだ。

──ユニスワップ・ラボでの日々の意思決定に、規制はどのような影響を与えているのか。

もちろん弁護士もいるし、私たちが行うすべてのことが合法であることを確認している。一般的に言って、私が業界について考えていることは、DeFiは新しい業界であるということ。私はDeFiがユーザーに対して根本的に良い結果をもたらすと信じているから、この業界で仕事をしている。

私はDeFiを、初期のインターネットのようなものだと考えている。いろいろと答えを出さなければならないことは多い。インターネットを規制するためには、多くのルールを作り上げなければならなかった。電子商取引は合法であるべきか? インターネットで物を買うことは恐ろしいことではないか? YouTubeのようなものは合法か? 商標権侵害にはどう対処すべきか? といった未解決の問題が山積みなっていた時期があり、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)が生まれた。

全般的に言えば、この業界はこれからも根付いていくと考えている。そして、このテクノロジーも根付いていくだろう。アメリカはおそらく、遅れている。他の国と比べれば、ほぼ確実に遅れをとっている。ヨーロッパでは、例えばイギリスやフランスでは、人々がDeFiともっとダイレクトに関わり始めており、そのためのルールをどのように作るかを、私が見たところ、非常に思慮深く考えている。アメリカは私の知る限り、その点でかなり遅れているように思える。

もう1つ指摘しておきたいことは、暗号資産の世界ではときにアメリカで起きていることばかりを議論しがちだが、ユニスワップのユーザーの70%以上がアメリカ以外の国の人たちだということ。

現時点で私が望むのは、アメリカが主導するのではなく、他の国でより多くの進展があり、アメリカがそこから学ぶことだ。

進歩の尺度

──暗号資産は低迷期にある。分散型プラットフォームの取引高は、1年前、2年前と比べると減少している。分散型金融の将来について不安を感じているだろうかそれとも、今は弱気相場であり、必ずまた強気相場がやってくるという、一般的なサイクルの一部と考えているか。

私の進歩の尺度は、決して価格ではない。私の進歩の尺度は常に進歩であり、私にとっての進歩とは、業界の状態であり、人々による使用状況だ。私にとっての進歩とは、生み出される根本的な価値と、生まれてくる技術イノベーション。私に言わせれば、その指標は時間とともに向上し続けている。

この業界はときに騒がしく、誇大広告や気を逸らせるものが多い。昨年は非常に大規模な詐欺があった。しかし私は、壊れたものの多くは、もともと壊れていたようなものだと言ってきた。それらは非常に中央集権的なもので、大々的にマーケティングされたものだった。

私に言わせれば、真のDeFiはきわめてうまく嵐を乗り切った。メイカーダオ(MakerDAO)、コンパウンド(Compound)、ユニスワップなどのプロトコルはすべて、問題なく運営を続けたという意味でこの市場サイクルにきわめてよく対応している。

これはつまり、壊れたものは、私たちがリプレースしようとしているものと最も近いものだったことを強く示している。きわめて中央集権的なプロジェクトや、オンチェーンに担保が確保されていない貸付を行っていたオフチェーンのヘッジファンド的なもの、そういったものが崩壊した。ユニスワップではない。

個人的には、ある意味で、今のようなときの方が楽しめると言ってもいい。強気相場を席巻してしまうような盛り上がりやマーケティングではなく、開発と前進に注力できるからだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ユニスワップ・ラボのヘイデン・アダムズCEO(CoinDesk)
|原文:Uniswap’s Hayden Adams: Q&A on Weathering the Regulatory Storm, What’s Next for DeFi