ビットコイン、インフレ減速でも3万1000ドル超えられず

12日に発表された消費者物価指数(CPI)でアメリカのインフレの大幅な減速が明らかになり、ビットコイン(BTC)の投資家にとっては歓迎すべきニュースとなった。

一時上昇後ビットコイン価格は低下

CPI発表を受けてビットコイン価格は3万1000ドル(約434万円、約1ドル140円換算)近くまで急上昇したが、長続きしなかった。本記事執筆時点で、ビットコインは3万500ドルを下回っており、CPI発表前の水準から1%以上下落している。

5月のCPIは前年同月比4%の上昇だったが、6月は3%の上昇にとどまった。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアCPIは、年初来5%以上を維持していたが、今回は4.8%の上昇に鈍化した。

急速なインフレは、ビットコインが2021年11月の7万ドル付近の高値から下落した要因の一つとされているため、インフレリスクの低下は価格の上昇要因となると考えられる。これが今回起こらなかったということは、いくつかの問題を引き起こす。

2023年の追加利上げ路線に変更なしとの見方

まず、おそらくこれは、コロナ期に数多くみられたインフレデータによるヘッド・フェイク(一旦セオリー通りに値動きした後、逆方向に大きく動くこと)だ。インフレが一時的な上昇にとどまるとの予想から、対応の必要はないとFRB(米連邦準備制度理事会)が考えていた2021年の「過渡期」の局面を思い出してほしい。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のニック・ティミラオス(Nick Timiraos)氏は今回のCPI発表で、一時的との仮説を裏付けるかのように見えたが後のデータで覆された2021年7月と8月のインフレ報告を思い出したという。同氏は、今回のCPIだけでFRBが2023年の追加利上げ路線を変更するとは予想していない。

米政府が押収したビットコインを売却か

第二に、今回はCPI発表以外のニュースもあった。12日午前のオンチェーンデータを分析すると、米国政府のものとみなされ、ダークウェブ「シルクロード(Silk Road)」から押収したビットコインを保管している2つのウォレットから、3回のトランザクション(取引)で9825BTC(約421億4000万円)が移動されたことがわかる。この売り圧力が、インフレに関する良いニュースを帳消しにする以上の影響をもたらした可能性がある。

市場はインフレ鈍化を予想

最後に、市場はアメリカのインフレ減速を予想している。ビットコイン価格は6月中旬以来20%以上上昇した。そのきっかけとなったのは一般に、世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)によるビットコインETF(上場投資信託)申請(およびフィデリティ(Fidelity)などのほかの資産運用会社が続けて申請したこと)だと考えられているが、強気の値動きの一部は市場が6月のインフレ報告の改善を嗅ぎつけたことによるものだろう。ティミラオス氏も、一部のCPI構成要素の大幅な軟化についてしばらくの間議論されていたと指摘した。

従来の市場は上昇

今回ビットコイン強気派を二重に苛立たせているのは、従来の金融商品市場は弱いインフレ報告を完全に受け入れているように見えることだろう。ドルインデックスは1%以上下落しているが、これはインフレ懸念とそれに伴う将来のFRB利上げの可能性が後退した際に予想される場合の動きだ。10年債利回りは13ベーシスポイント(0.13%)低下して3.84%となり、2年債利回りも同程度低下して4.74%となった。12日のビットコインは値下がりしているが、ナスダック総合指数とS&P500はどちらも約1%上昇し、過去最高値を更新している。

|翻訳:CoinDeskJAPAN
|編集:林理南
|画像:CoinDesk
|原文:Even as Inflation Risk Fades, Bitcoin Remains Stuck Below $31K