Oracle、クラウドマーケットプレイスでDeFi構築ツールを強化

ソフトウエア大手のオラクル(Oracle)は、イーサリアムベースのエンタープライズ向けブロックチェーン開発企業、ハイドロゲン(Hydrogen)を自社クラウドマーケットプレイスに加えた。

2019年9月4日の発表によると、銀行、投資、貯蓄、保険、健康管理などのアプリケーションを開発する50万近くのオラクルユーザーは、ハイドロゲンのAPIを利用できるようになった。

オラクル・クラウド・マーケットプレイス(Oracle Cloud Marketplace)は、パース(PaaS:platform as a service)とイァース(IaaS:infrastructure as a service)のリーディング・プロバイダー。ベンダーが参加するには、オラクルによる審査を通過しなければならない。

ハイドロゲンのグロース担当ディレクター、スコット・ラスパ(Scott Raspa)氏は、11月に創業2年を迎える同社の製品はスケーラビリティにおいて他社製品と一線を画しているとCoinDeskに語った。

マーケットプレイスのユーザーは、現在ベータテスト中のHydrogen Moleculeを含む同社のAPIを使って、本人確認、国境を越えた送金、証券のトークン化など複数のシステムを構築できる。

さらにハイドロゲンによると、同社の技術を使えば、ブロックチェーン上で運営される融資や金融サービス、いわゆる分散型金融(DeFi)を簡単に構築できるという。

前述のMoleculeは、分散型金融の一領域である分散型取引所を構築するプロトコル、ハイドロ(Hydro)上に構築され、ハイドロはイーサリアム上に構築される。

「ハイドロゲンのMoleculeはDeFiにおけるストライプ(Stripe)のようなもの。開発者の使いやすさを優先したAPIとライブラリのセットで、DeFiの標準となるだろう。DeFiはいまや世界中のあらゆるアプリケーションに追加できる」と同社はコインデスクに語った。

大口顧客

マイケル・ケイン(Michael Kane)氏とマシュー・ケイン(Matthew Kane)氏の兄弟が設立したハイドロゲンは、彼らの以前のプロジェクト、金融初心者向けのヘッジャブル(Hedgeable)から生まれた。ラスパ氏によると、ケイン兄弟のもとには、ブロックチェーン技術を使ったAPIに対する要望がしばしば寄せられていた。

ラスパ氏は、数多くの企業がハイドロゲン製品を使っているとCoinDeskに語った。例えば、カナダのTD銀行(TD Bank)は、ハイドロゲンのAPIを使って投資予算編成アプリを開発し、数カ月の時間と何百万ドルものコストを削減した。

「このツールの目的は、フロントエンドの複雑さを解消し、顧客にとって分かりやすいツールを構築することだった。プランニングツールに必要なモデルなど、すべての要素がバックグラウンドに搭載されている」とTD銀行のジャコブ・マシューズ(Jacob Matthews)氏は、Tearsheetのポッドキャストで語った。

マシューズ氏によると、TD銀行はハイドロゲンを選ぶ前に、フィンテック関連のスタートアップ20社を精査した。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Oracle image via Shutterstock
原文:Oracle Lets Blockchain Tech Firm Hydrogen Into Its Cloud Marketplace