ビザとマスターカードがバイナンスとの関係縮小、だが影響は小さい:専門家

決済大手のビザ(Visa)とマスターカード(Mastercard)は、大手暗号資産(暗号資産)取引所のバイナンス(Binance)との関係縮小に動いている。専門家は、バイナンスが最近、法的課題に取り組んでいることを考慮すれば驚くべきことではないが、このことでバイナンスの市場シェアが低下する可能性は低いとの見方を示した。

SEC・CFTCの提訴と司法省の調査

バイナンスは、米証券取引委員会(SEC)から複数の争点で提訴された。その中には、バイナンスが無登録の事業を運営し、同社のリスクについて投資家を誤解させてきたとの疑いも含まれる。商品先物取引委員会(CFTC)もこれに先立つ5月、米国法の「故意の回避」があったとしてバイナンスを提訴していた。

米司法省もバイナンスを調査しており、詐欺容疑で告発することを検討していると報じられている。

アルゴリズム取引プラットフォームCoinRoutesのCEO兼共同創設者であるデイブ・ワイズバーガー(Dave Weisberger)氏は、バイナンスが直面しているあらゆる法的課題を考慮すると、ビザやマスターカードなどの主流企業の動きは驚くべきことではないと指摘。「決済処理業者がそうしたものから距離を置きたいと考えるのは当然のことだ」と述べた。

ビザは提携カードの新規発行停止

ビザは欧州でバイナンスとの提携カードの新規発行を停止したと報じられている。マスターカードの広報担当者はCoinDeskに対し、バイナンスとの提携終了を認めたが、決定の背景にある詳細については明らかにしなかった。広報担当者は、「アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、バーレーンで4つの市場におけるパイロットプログラムがあった。この決定は、これらのバイナンスのプログラムのそれぞれに適用される。他の暗号資産のカードプログラムには影響はない」と述べた。ビザはコメントの要請に応じていない。

バイナンスはX(旧Twitter)で、ラテンアメリカと中東のユーザーはバイナンスカードを利用できなくなると発表した。

影響は大きくない可能性

しかし、バイナンスの拠点が世界各地に広く存在することを考慮すると、この動きによって市場シェアが低下する可能性は低い。ワイズバーガー氏は、「流動性の観点から依然として主要な取引所であるバイナンスに対するこの影響を評価するのは難しい」とし、「それが変わるまで、人々は取引を続けるだろう」と述べた。

CFTC規制下にある機関投資家向けのデジタル資産管理プラットフォーム「ハッシュノート(Hashnote)」のレオ・ミズハラ(Leo Mizuhara)CEOは、提携の終了も業界全体にとっては大したことではないかもしれないと指摘。「CFTCや司法省との問題を考慮すると、個人や組織がバイナンスから撤退することはすでにかなり予想されていたため、この動きは業界への影響という点ではおそらくそれほど大きな問題ではない」と述べた。

ミズハラはまた、マスターカードが最近ブロックチェーン業界に注力していることを考慮すると、バイナンスと距離を置く決定をしたことは合理的だと思われるとも述べた。「マスターカードはブロックチェーン業界との関わりにますます意欲を見せており、バイナンスから離れるという今回の動きはむしろ、トラブルを起こす可能性のある主体について各組織が警戒していることを意味している」という。

ビザとマスターカードは最近、いくつかの大規模な倒産が発生した長期にわたる弱気市場であるにもかかわらず、ブロックチェーン業界で活発に活動している。直近では、ビザとマスターカードはいずれも、業界パートナーと協力して決済プログラムを市場に導入し続ける意向を表明していた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:CoinDesk
|原文:Visa And Mastercard Distancing Themselves From Binance Unlikely to Hurt the Crypto Exchange: Experts