8月の暗号資産スポット市場の取引高、4年半ぶりの低水準に
  • 8月の暗号資産のスポット取引とデリバティブ取引の総取引高は11.5%減の2兆900億ドルだった。
  • スポット取引高の少なさとデリバティブの建玉の変動は、投機主導の市場であることを示唆している。
  • バイナンスは市場シェアが低下しているにもかかわらず、両セグメントでトップの座を維持した。

暗号資産(仮想通貨)スポット市場の活動は8月、4年以上ぶりの低水準に落ち込み、暗号資産取引デスクの停滞が続いた。グレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)がアメリカ証券取引委員会(SEC)に勝訴した裁判に端を発したボラティリティは、トレーダーを退屈な状態から呼び戻すことができなかった。

暗号資産のデータとインデックスを提供するCCDataによると、中央集権型取引所のスポット取引高は2カ月連続で冷え込み、7.78%減の4750億ドル(約68兆8750億円、1ドル=145円換算)と、2019年3月以降で最低となった。

デリバティブの取引高は12%以上減少して1兆6200億ドル(約234兆9000億円)となり、2021年以降で2番目に少なく、市場活動全体に占めるデリバティブの割合は3カ月連続で縮小して77.3%となった。デリバティブの建玉は19.5%減の171億ドル(約2兆4795億円)となり、特定の取引所における41億3000万ドル(約5988億5000億円)の建玉を一掃した。これは今年最大の建玉の減少だ。

暗号資産の月間スポット取引量とデリバティブ取引量(CCData)

継続的な下落は、サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)の取引所FTXが昨年11月に破綻して以来、厳しい状況に直面している取引所とマーケットメーカーをさらに厳しい環境に置いている。 この破綻は、取引所に対する投資家の信頼を低下させ、市場の厚みを損なった。ブルームバーグによると、マーケットメイカーの利益率はFTXの破綻以来30%低下した。

CCDataは米CoinDeskに提供したレポートの中で「グレイスケールがSECに勝利した後のボラティリティが中央集権型取引所での取引高に反映されなかったため、中央集権型取引所でのスポットとデリバティブを合わせた取引高は11.5%減の2兆900億ドル(約303兆500億円)になった」と述べた。「スポット取引高の少なさと建玉データの変動は、市場が現在投機によって動かされていることを示唆している」。

8月17日と月末の短期間のボラティリティ・スパイクがなければ、出来高の数値はさらに悪化していたかもしれない。時価総額トップの暗号資産ビットコイン(BTC)は、8月17日に10%以上下落し、2万5000ドルになったが、グレイスケールがSECに勝訴したことを受け、8月29日には一時2万8000ドルまで上昇した。

8月に市場シェアが最も低下したのはバイナンスだった。(CCData)

取引所の中でもバイナンス(Binance)のスポット市場シェアは6カ月連続で縮小し、2022年8月以来の低水準となる38.5%になった。デリバティブのシェアは53.5%に低下し、2022年6月以来の低水準になった。それでも、同取引所はスポット取引高で1830億ドル(約26兆5350億円)、デリバティブ取引高で8650億ドル(約125兆4250億円)を記録し、トップの座を維持している。

対照的にフォビ(Huobi)の世界スポット市場活動でのシェアは2.26%上昇し、全スポット市場出来高の6.09%を占めた。これでフォビは取引高で第2位の中央集権型スポット取引所になった。

デリバティブでは、ビットゲット(Bitget)が8.66%、バイビット(Bybit)が12.7%だった。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)における暗号資産デリバティブの総取引高は4.51%増の419億ドル(約6兆755億円)で、イーサリアム(ETH)オプションの取引高は3億6500万ドル(約529億2500万円)と過去最高を記録した。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:CCData
|原文:Crypto Spot Market August Trading Volume Hits 4.5-Year Low as Volatility Fails to Spur Activity