イーサリアムのレイヤー2エコノミクスを理解する

暗号資産(仮想通貨)は、世界中で新しい投資可能な資産クラスを生み出そうとしている。そしてそれは、インターネット上のあらゆるものの仕組みを徐々に変えていくだろう。

暗号資産の新たなフロンティア

新たな資産クラスの誕生とともに、新たなビジネスモデル分析も生まれるだろう。評価基準としての新しいKPI、指標、ベンチマーク。新しいレポーティングと監査の仕組み。新しいデータプロバイダー。そして、新しいバイサイドとセルサイドのリサーチ体制。

さらに複雑なことに、暗号資産投資家はメトカーフの法則、ムーアの法則、リンディ効果、オープンソーステクノロジーのパワー、コンポーザビリティといった概念を理解する必要がある。より高度なテクノロジーが利用可能であるにもかかわらず、消費者が「これで十分」なテクノロジーを利用するという原則や、ムーアの法則が適用すると言われる「10年という期間」などもだ。

さらに投資家は、暗号資産ネットワーク、プロトコル、アプリケーションを効果的に分析するために、テクノロジー全体を通して価値がどのように流れるかについてのフレームワークを必要としている。

この点は今日、特に重要だ。イーサリアムは「ブロードバンドの瞬間」に近づいている。スループットの制約がレイヤー2ブロックチェーンによって解決され、新しいアプリケーションと次の10億人のユーザーをサポートできるスケーラブルなインフラが解放される。

2年足らずの間に私たちは、アービトラム(Arbitrum)、オプティミズム(Optimism)、そしてBaseというイーサリアム最大規模のL2スケーリングソリューション上のトランザクションが3438%増加することを目の当たりにしてきた。

イーサリアムのトランザクション:L1(紫) vs L2(ピンク:ARB、OP、BASE)

だが、これはレイヤー1であるイーサリアムブロックチェーンにとって何を意味するのだろうか?

L2は、トランザクションをバッチ処理し、データを圧縮し、最終的にデータの証明をL1トランザクション(最終決済)としてイーサリアムにアンカーすることで、アプリケーションレイヤーに実行サービスを提供する。

したがって、投資家はテクノロジー内の価値発生を適切に評価・予測するために、L2とL1の経済的関係を知る必要がある。

補完財としてのレイヤー2

これまでのL2の収益を見てみよう。

イーサリアムL2のマージン:ARB、OP、BASEの合計手数料(紫)とL2からL1に支払われた手数料(ピンク)

全体として、L2はその実行エンジンを活用するアプリケーションを通じて得られる全取引手数料の平均23.5%を維持している。

イーサリアムのバリデーターは、L2で支払われるユーザー取引手数料の残り76.5%を受け取っている。したがって、L2はイーサリアムとその関連資産であるイーサリアム(ETH)の保有者にとって補完的な存在である。

市場におけるすべての製品には代替財と補完財がある。代替財とは、最初の製品が高すぎる場合に購入する可能性のある別の製品のこと。例えば、鶏肉は牛肉の代替財だ。補完財とは、通常、他の製品と一緒に買う製品のこと。例えば、ガソリンと車。あるいは、ホットドッグ用のパンとホットドッグを考えてもらえば良いだろう。

他の条件が同じであれば、補完財の価格が下がれば、その製品に対する需要は増加する。例えば、マイアミ行きの航空券の値段が大幅に下がれば、マイアミのホテルは値上がりする。

L2が補完財であり、より優れたユーザー体験を可能にするコストを継続的に低下させるのであれば、これは最終的に、イーサリアムL1の利用を促進するはずだ。

補完財はコモディティ化する傾向がある。したがって、競合他社が市場に参入し、ムーアの法則が継続するにつれて、L2のマージンが縮小していくことが予想される。

もちろん、このプロセスはまだ始まったばかり。さらに、アプリケーションレイヤー、再ステーキングと「SECaaS(Security as a Service)」 のEigen Layer、データ可用性(Celestia)、データオラクルなど、注視すべきテクノロジーも存在する。

暗号資産テクノロジーの中で投資する場合は、各レイヤーでどのように価値が創造され、獲得されるかを理解する必要がある。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Understanding the Economics of Ethereum Layer 2s